今更ながら気がついた。


鞄が軽い。



ディジーを追いかけることに夢中で
途中で中身をいくつか
落としたようだ。
















……どうりで
途中から身が軽くなったと、

いや
そんなことを言っている場合じゃない。



しかし取りに戻ろうにも
どこで落としたかもわからない。







下手に戻ったら
最悪、軍人に捕まって

ふふふふふ、悪い子にはおしおきだ~

とか言われちゃって





R-18指定みたいな責め苦

(※これはイメージです)






に、
あうことになるかもしれない。













もしくは王族に捕まって

あたなは私の身代わりになって隣国の70歳の爺さんに嫁ぐのよ~




(※これはイメージです)














なんて展開になるかもしれない。





そう言うのは
第3者として見る分には楽しいけれど
自分でやるのは御免だ。












また、もしかしてもしかしたら
マッドサイエンティストに捕まって

お前はバッタ人間に改造されるのだ~

とか言われちゃって

(※これはバッタです)

首の赤いマフラーがチャームポイントな
バッタ怪人に
改造されてしまうかもしれない。


その場合、
逃げ出してその悪の組織と戦うという
面倒な展開が待っているから遠慮したい。
























だったら
落としたものは諦めよう。

きっとあれは
ここで失くす運命だったのよ!




世の中には

なんて理由で
皿洗い中に皿を割っても
許される国があるって言うし


それに比べればずっとましだわ。






ああ、いい人に拾われて
第二の人生……もとい物生を生きてね!

と、祈っていると










足音が聞こえた。

























とっさに隠れたその脇を
クロがすり抜けて飛び出していく。

あ、クロ!

……アリス?

ジーニー!!












探していた人がいた。






































なにしてるの?
かくれんぼ?

普通すぎる対応が嫌になる。


いや、別に

感動的な再会を
期待していたわけじゃ
ないけれど。






うん、そりゃあ
さっきは無駄に薔薇散ったけど。










それどころか照れ隠しに



あんたが無言で
いなくなったりするから

心配のあまり
こんなところまで
足を運ぶ羽目になったんじゃない!


と、わめきたくなったけど
それはぐっとこらえて。




だって、こういう展開って、
あたしのこと忘れちゃってて

なんてことになるのが
鉄板というか定石と言うか
少女漫画のセオリー。


そうじゃなかっただけましだと
思わなくちゃ。



……ああ

お前は誰だ!

空気読まなくていいから!!

……思わなくちゃ!!
(心の声)




















で、ホントになにしてるの?

あ、ええと

心配して追いかけてきたとは
口が裂けても言えない。



こういうとき、
駆け引きの天才だったりすると









心配して来ちゃった、って言ったら……嬉しい?










なんて、受け答えついでに
今後の進展まで期待できそうなことを
さらっと言っちゃったり
するんだろうけど。


あたしには無理。







と言うか
少しくらい察しなさいよ!
あんたが無言でいなくなるから
(以下略)



と、地団駄を踏みそうに
なった頃




ちらり、とクロが視界に入った。

そ、そう! クロよ!!
クロを返してもらいにきたの!!

クロ……ああ、

でっ、でもきっとひとりじゃ帰らないだろうからあなたも帰ってくるといいわ

ナイス受け答え!

我ながら
ツッコミどころも見当たらない
完璧な理由だわ!


(これもサラの入れ知恵だけど)








そう自画自賛しかけた時、

……それはできない



――別の誰かの声がした。













はち。

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