ドッペルゲンガー編

上の句





O君

橋本さん、もしかして今日は伝法院通りから自転車で出勤しました?






と後輩アルバイトのO君に
聞かれました。




橋本ピッツァ

いや、今日もいつものすしや通りから自転車で出勤してきたよ

O君

ああ、そうでしたか。いや、実は橋本さんにすごく似た男の人が誰かと自転車でニケツして走ってたんですよ。余りに橋本さんに似てたんでつい





Oくんは苦笑いし、

特にその後は何もなく
普通に仕事をしていました。









そしてその翌週もまた
Oくんはこんな事を
聞いてきました。




O君

橋本さん。
もしかして先週Fさんのライブに遊びに来てませんでしたか?





Fさんは自分とOくんの
共通の知り合いのバンドマンで、


たしかによく彼のライブには
行っていたのですが





橋本ピッツァ

いや、行ってないよ。
最近、あの人態度悪いから嫌いだし。
恩を仇で返すから関わらないようにしてる。

O君

そうですか。ちょっと距離は遠かったんですけど、また橋本さんにそっくりな人を会場で見かけたのでもしかしてって思ったんでつい…また人違いでしたか







そう言ってOくんは苦笑いをしましたが、


今回は確信があったのか
少し腑に落ちなさそうな
顔をしていました。








さらにその翌週の仕事中、


今度O君が言ってきたのは




O君

先週、ボクは橋本さん❝らしき❞人と話したんですけど覚えありますか?






前回前々回より話の入り方が
奇妙で唐突だったので、


少し面を食らって
返す言葉に詰まっていると

Oくんはそれを察して
詳細にその日のことを
語り始めました。



O君

大学OBの飲み会帰りに突然後ろから声をかけられたんですよ。
それが橋本さんで。そこで何となく世間話をしているうちに段々話がかみ合わなくなってきたから聞いてみたんです


















『本当にあなたはHさんですか?』



そうしたらその瞬間ニヤッと笑って
『さあ、どうだろうね。そろそろ時間だから帰るね』
と言って去っていったんですよ。





















そんな会話をした記憶は
自分には一切なかったので
否定しました。


Oくんは少し
不思議な所はあるけれど、

無暗に他人を怖がらせたり、

不快にさせたりする
性格の人間ではありません。




橋本ピッツァ

とりあえずその場はO君が酒で酔って変な夢でもみたんじゃない?

O君

やっぱりそうかもしれませんね。
きっとそうだと思います。また変な事を言ってしまってすいませんでした






O君は同意というより、


これ以上自分を
怖がらせないように
納得したふりくれたようでした。









しかし実はこの3~4週間
この仕事先以外でも

いくつか自分の身の回りで
不可解な現象が起きていました。








当時、

自分は副業で
出張専門の整体業を
自営していて、


いきつけの個人店に
ビラを置かせてもらっていました。



そこのご主人から



ご主人

ウチの常連さんがHさんの出張整体に興味があるから近々電話予約するって言ってたよ





と聞いていたのですが、


一向にそれらしき
連絡が無かったので、


もう一度マスターに
確認してみたら




ご主人

もう電話はしたけど『今予約がいっぱいなので無理です』って断られたって言ってたんだけど?





という返事をもらいました。



自分はそんな電話対応をした
記憶は無かったですし、


着信履歴もなかったので
不思議に思ってはいました。








高校時代からの友人たちと
ラグビー観戦に行った際に
記念写真をみんなで撮ったのですが、


友人が自分にだけ中々写メで
送って来ないので聞いてみたら




友人

何かH君だけ映り方が怖いっていうか。異様にクワって皺が寄った顔してて不気味だったからつい






といつの間にか
自分の映っている写真だけ
勝手に削除してしまっていた
ようなのです。



自分は楽しく笑顔で
ポーズを取っていたはずなので、


友人への怒りより
写真への違和感の方が
強く残る出来事でした。



副業が上手くいかず、


そのストレスで本業でも
ミスを多発するなど、


負の連鎖や脱力感が
日に日に強くなっていく一方でした。





橋本ピッツァ

まるでもう一人の自分がいて、自分の邪魔をしているようだ





そんな事を思い始めると
もう身の回りの全部が
不気味に思えて、


明日また理屈で説明できない
何かが起きたらどうしよう、


と精神的に極限まで
追い詰められてきたので

都内で評判のO神社に
お祓いに行くことを決意しました。





下の句に続く

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