あたしはロザンナに乗せてもらって
王都への道を進んでいる。


ロザンナはこれが最後の仕事。
ベンおじさんも感慨深げに
ハンドルを握っている。






この山を越えたら王都だぞー






ベンおじさんは

あの山はなんていう山だとか
この川には鮭が上ってくるんだとか



観光ガイドよろしく
説明してくれるけれど、





なんとなく

……

ロザンナに向かって
喋っているようにも聞こえる。


































きっと
おじさんは今
思い出の中を走っているのだろう。







































あたしがどうして
ロザンナに乗っているのかと言うと










……思い返せば2日前















……などとサラに言われたのが
きっかけだった。












ジーニーがいなくなって

なんでもないふりを
していたけれど

それがかえって
目に余ったのかもしれない。

簡単に言うわね


来るな、と言われたわけじゃない。


でも
なにも言わずに出て行かれたのは
「来るな」って言われたのと
同じことじゃない?




しかも
下宿先の娘ってだけの間柄。

ずうずうしく押しかけて行くには
弱すぎる。

口実が必要なら、
「クロを返してもらいに来た」
とでも言えばいいでしょ?

そりゃあクロはジーニーと一緒にいなくなったけど……でも本当に連れて行ったかどうかも定かじゃないし








もし
遥々王都まで出向いて行って













……なにか用?

とか言われたら。






黙って出て行ったのだ。
歓迎してくれるとは限らない。
















ジーニーがそんなことを言う人じゃないことぐらい、アリスが1番わかってることでしょう?

簡単に言うけどね。
王都は立ち入り制限されてるのよ? 技術者でもないただの子供が行ったからって、

王都に出入りできる人、いるわよ?

へ?






















……と言うわけで。


王都に出入りできる人→

あたしはロザンナの助手席で
揺られている。

















しっかし猫返してもらうためだけに王都まで行くとか、アリスは取り立ての天才になれるな

……そんな天才はいません

王都は広いぞ。
闇雲に歩いて見つかるってもんじゃ、

王都は機械の街だから猫が少ないって聞いたわ。
黒猫を探せば見つかるわよ

頼りねぇ情報だなぁ……カツオん中でサメ探すようなもんじゃねぇか

意味がわかりません

それより……酔いそう……

吐くなよ!
下取りの値段が下がるからっっ!!














我慢できたら車酔いの天才って呼んでやるから――!!

そんな天才、
呼んでくれなくて結構よ!!









正直、
行ったところで
どうなるかもわからないし

自分でもうまくいくとは
思っていない。
















































そうして車酔いに耐えること
数時間。

ほら、王都が見えたぜ


ロザンナを止めて

おじさんが眼下を指さした。







































あれが……王都






初めて見る王都は想像していたより
ずっと大きかった。
























あそこに、

ジーニーがいる――。













ろく。

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