少女が新たな天才少年をゲットしていたその頃、金髪の少年と、黒髪の少年の母親は家で穏やかな時を過ごしていた。
少女が新たな天才少年をゲットしていたその頃、金髪の少年と、黒髪の少年の母親は家で穏やかな時を過ごしていた。
さ、お菓子でも食べて頂戴
有難う御座います
ショートケーキを摘まみながら、何の気なしにテレビへと視線を向ける少年(以降、金髪少年とする)。日曜日特有の朝の再放送番組を見つつ、金髪少年は女性の息子について尋ねる。
俺と交換ってことは、やっぱ賢い人なんですか、息子さん
ええ、それだけが自慢の息子なのよ
いや、顔もなかなか自慢できると思うが。金髪少年は思ったが、女性がそれだけだと言うので、きっと顔に関しては何も感じていないのだろう。敢えてそこには触れずにおく。
私、昔東大を受けようと思って、失敗しちゃってね。それで、会社もあまり良いところに就職出来なくて、すぐに結婚退職したの。だから、彼には絶対にそんな思いさせたくないのよ
ふぅん。すごいですね。俺の家なんて、みんな馬鹿ばっかりですよ。父親なんてフリーターだし
あら、じゃあお母さんが働いてるの?
うん。あと、俺より上の兄ちゃんが二人。今を生きてくのでみんな精一杯です
そう……でも
女性は数秒考え込んだ。その脳裏には、きっと息子が浮かんだことだろう。その顔から眼を逸らし、視線を金髪少年へと戻すと、女性は言った。
君、とても楽しそうね
まぁね。みんな、根っからの馬鹿ですから
少年の言葉は、女性の胸を深く抉った。
話は少女と幼い少年へと戻る。
少女は幼い少年に合わせ、体を屈めて話しかけた。
はじめまして、こんにちは! ボク、賢いの?
はい。今、中学校のお勉強を頑張っている真っ最中です!
わぁすごい! こりゃ本当の天才だ!!
お馬鹿な少女の、本気で感じていた思いであったが、これに、「いえいえ」と謙遜する少年。そんな姿も知的さに溢れていて、少女はおったまげる。
それじゃあ、3×3は?
9ですね!
この機敏な答え、きっと本物だ。少女は思わず拍手する。少年は嬉しそうに笑っていた。
すっごいねぇ。やっぱり、こう言うのって親が違うんだろうなぁ
少女が何気なく言うと、少年はその言葉に少しだけ怪訝そうな顔をした。そしてすぐに、首を横に振る。
ううん。ママは、全然頭悪いよ。あんな綺麗な恰好してるから賢そうに見えるけど、僕がいないと何も出来ないんだから
そ、そうなの?
僕のことだって、馬鹿みたいに甘やかしてばかりだし、家事や買い物でさえ失敗してて、パパにも呆れられてるんだよ。パパならまだしも、ママは全く。ダメダメだね
……そう
何だか自分のことを言われているようで、胸が痛む。しかし、それを自分だけでなく、自分の母親と置き換えたとしても胸は痛かった。手塩をかけて、愛情を与えて育ててきた子供に馬鹿にされる。これ程辛いことがあって良いものなのだろうかと。
少女は母親の悪口を憂さ晴らしの如く話す少年を見て、行き交う人々へと手を上げる。
すみません、この賢いけどお母さんを馬鹿にする少年より、更に賢い男の人を交換して頂けませんか!!
え、え!? 何で、何で!!
今日一日だけ預かってほしいんです、出来れば、ゴリラのように厳しい人のところで!!
ご、ごりら……!? や、やだよ……
少年の思いとは裏腹に、少年を気になり近づいてくる女の子が一人やって来た。
あ、あのぅ……かしこい男の人ですか?
うん! この子、この若さで中学校の勉強が出来るんだよ。だから、少なくとも高校以上の賢さは欲しいかな!!
斯く言う少女の知力は、既に小学生で止まっている。
うん、私知ってるよ。待ってて!
え……ちょっと待って……ごりらは嫌だよ……
少女は近くの公園の方へと走って行き、その人物を連れてきた。今までの少年達とは違って、スマートで背の高いその人物だが、少女は視界に入った瞬間に首を横に振る。
やぁ、こんにちは。自分で言うのもなんだが、俳句の天才と呼ばれるおじ
チェンジで!!
少女は素早く答えた。