住吉

さて、お盆ですが

梓川

お盆?

小絹

ああ、早盆の時期だな

梓川

早盆って事は、この時期に迎え火焚いたってこと?

住吉

はい。私の家は昨夜焚きました

湯島

あ、うちも焚いた

根津

うちも

梓川

なんか気が早い気はするけど、お盆がどうかした?

住吉

そろそろ暑い時期なので、怖い話でもして涼もうかと

根津

えっ?怖い話?

湯島

あれ?根津先輩怖い話苦手?

根津

えっと、実は、おばけとかそう言うの苦手で

湯島

あら意外

梓川

それじゃあ、おばけ以外の怖い話して涼む?

根津

それなら良いけどハードル上がった感じするね

小絹

おばけ以外の怖い話なら持ちネタがありますが

湯島

あるんだ

梓川

どんな話かな?

小絹

僕が通っていた学校で、カルト的な新興宗教を起こした人が居ると言う話です

湯島

あ、もうこわい

住吉

詳しく聞かせて貰えますか?

小絹

ああ、僕も聞いた話になるんだが……

小絹

僕が通っていた高校には運動部以外にも幾つか文化部があったんですが、特に授業に使うわけでも無い、専用の部室を持っている文化部が1つだけ有ったんです

小絹

その部活というのが演劇部で、演劇部は日々部室で集まってから他の教室で練習をするというスタイルを取っていたようです

小絹

専用の部室が有ると言うせいか、部員の中で特有の繋がりが出来て、次第におかしな物を祭り上げるようになったと言うんです

小絹

何を祀っているのか、ご神体が部室にあったのか。それは定かでは無いのですが、演劇部の部員は口々にこう言うそうです

小絹

『幸福は義務です。市民、あなたは幸福ですか?』

小絹

もし仮に不幸せそうな顔をしていると『反逆者』として処理をされる。そういうものだったそうです

根津

えええ、それはそれでこわいなぁ

梓川

え?その実体を見たことあるの?

小絹

いえ、僕は演劇部には近寄っていないので、実情がどうなのかはいかんとも……

住吉

でも、その手の話って結構有るんでしょうかね。
私もお兄ちゃんから近い話を聞いたことが有ります

湯島

え?住吉も持ちネタあり?

住吉

はい

梓川

どんな話か聞かせてくれる?

住吉

はい。お兄ちゃんの後輩の話なんですけど……

住吉

私のお兄ちゃんは天文部だったんですけど、天文部と同じように部員が少ない生物部の後輩とも仲が良かったらしいんです

住吉

なんですけど、その生物部の後輩というのが、錬金術師なんだそうです

住吉

錬金術にはガラスの器に溜めた雨水が必要と言う事で、お兄ちゃんは天文部の備品を使って、雨水を溜めていたんです

住吉

お兄ちゃんは、錬金術がなんなのかよくわからないみたいなんですけど、でも、その後輩さんが錬金術をやっている理由というのが

住吉

『難病のお兄さんを治すため』なんだそうです

住吉

その後輩さんがまだ錬金術をやっているのか居ないのか、それはわからないのですが、きっと今でも、お兄さんの病気を治すために頑張ってるんだろうって、お兄ちゃんは言ってました

梓川

錬金術かぁ。それだけ聞くとこわい感じはするけど、理由がなんかもの悲しさを感じさせる

小絹

ううむ、錬金術はいくら過去に科学として研究されていたとは言え、今の科学からは大きく逸脱している物なのだが……

湯島

錬金術を研究出来るくらい優秀なら、医大に入って研究した方がいいと思うんだけどなー

根津

まぁ、やり方は人それぞれだね

住吉

で、こわい話をしましたけど、涼しくなりませんね

根津

冷房の温度下げようか

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