私は高層マンションに住んでいる。

社会人一年目の私には、払えない額の家賃だが
会社の手当てで、タダ同然で住める。

会社がこのマンションを提供するにはワケが有る。

それは以前会社が提供していたマンションは、
お世辞にもセキュリティが厳しいとは言えない
マンションだった。

そこで事件が起きてしまい、
会社側としては、再発防止策として
セキュリティが強固なマンションを
提供するようになった。

私はその一期生という事になり、
誰もが羨むマンションに住める事になった。

憧れの会社に入れて、
こんなに良いマンションにも入居できて
ちょっとラッキー!

とりあえず、
近所を見て回ろうかな~

近くには、
ショッピングモールもあって
不自由なく過ごせそうだな~。

初めて上京したから、
心配だったけど
これなら、やっていけそう!

憧れの社会人生活を明日に備えている為、
今日は早く寝る事にした!

これが噂の通勤ラッシュなんだ!
流石に毎日は堪えるわ。

とりあえず、会社に着くまでは
SNSでもやろうかな。

社会人始めました!
これから出勤です。

『投稿』ボタンをポチッ

スマホ片手に、慣れた感じで投稿をし続けると
背中から視線を感じる。

私は勇気を出して、
車両のドアの窓から視線を追った。

それは、私の背後に立つサラリーマンから
おくられていた。

その視線は、
私を見ているのか?
私のスマホを見ているのか?
それとも、勘違いなのか?

サラリーマンは、次の駅で降りてしまったので
結局わからなかった。

~10分後~

誰だろう?

この人知らないんだけど、
友達申請がきてるわ。

ファンも増えるから、
とりあえず承認しておこう。

私は、ファンが一人増えた事に喜びを感じて
休憩中にも色々と写真やメッセージを投稿した。

今朝ファンになってくれた人からも、
「凄いね!」というコメントをもらえたので
投稿に勢いがついていた。

時間は過ぎて、終業時間となった!

私は家に帰る為、電車に乗車した!

今朝の出勤ラッシュは何だったのかというくらい
席が空いていた。

入社式や新人挨拶や雑務などで、
身体が疲れてヘトヘトだった。

乗車時間が朝と夕方で違ってるのではないか?
そう思うくらい早く最寄り駅についた。

疲れちゃった。
もう寝よう!

ヘトヘトになっていた私は、
家についた安心感でベットに倒れこんだ。

そして、時間は経過して深夜0時
スマホが突如鳴った!

こんな夜中に誰!?

スマホには、
「SNSに写真が投稿されました!」
と表示されていた。

気になった私は、SNSを開いてみた。

そこに写っていたのは、
まさにベットに倒れ込んだ私だった!

そして、投稿者は・・・。

今朝、友達申請を承認した人からの投稿だった。

私は慌ててあたりを見渡したが、
カメラらしきものは無かった。

撮影の角度から、
その付近も重点的に調べたのだが
一切存在しなかった。

そもそも、このマンションは
セキュリティが厳しい事で有名で
私の部屋は7階にあるのだから
容易に侵入出来る筈も無かった。

それに、引越してきたばかりの私と
私のSNSを結びつけるのは統計学的に難しい筈
それなのに、簡単に特定されてしまってる。

気になった私は、SNSで別人になりきり
その投稿者に接触を試みた。
所謂(いわゆる)別アカだ!

私は写真を習っているものです。
良かったら教えて下さい。

ポチッ

良いですよ!
教えてあげますよ!

ポチッ

これは室内の撮影だと思うんですけど
どうやってこの構図を作ったのですか?
スタジオですか?

ポチッ

スタジオじゃないですよ。
普通のマンションです。

ポチッ

マンションですか。
女性は寝てますよね?
カメラを構えて撮影したら、
影とか写り込みませんか?

ポチッ

ドローンって知ってますか?
それで、撮影したんですよ(笑)

ポチッ

ドローンですか!
どおりで影が映ってないのですね!
モヤモヤが解消されました。
ありがとうございます。

ポチッ

失礼します。

ポチッ

撮影技法がドローンであると聞き
隠しカメラの類は仕掛けられていない事に
一安心をした。

けれどもそれは、また別の疑問を抱く結果となった。
どうやってこの部屋に入ったのか?
この部屋をどうやって特定したか?

答えは意外にも簡単だった!
この部屋が7階にある為、窓を開けで寝ていた事。
ドローンの高度は最高500m、150mまでなら
日本でも申請無しで飛ばせる。

知らなかった。
7階なんて余裕だった。

そして、私とSNSと部屋をつないだもの
それは紛れもない私自身だった。

私が調子にのって、色々と投稿していた為
私の住居を特定するには十分すぎる程の情報を
与えていた。

うかつだった。
きっと、友達申請してきたのは
あのサラリーマンだ!

私というターゲットを車内で見つけて
実際にSNSのアカウントを見る事で
結びつけをおこなったんだ!

私の気のゆるみが、このような事態を招いたのだ!

幸いネットに掲載された写真は、
寝ている姿だけだった。

ネットで拡散された写真は、
もう消すことは出来ない。

これが目を憚(はばか)るような、
あられもない姿を拡散されていたらと思うと
背筋が凍ってしまう程、恐ろしい。

私はアカウントを凍結して
寝る時や外出時にも
窓を閉めて出かけるようにした。

当然だが、今では出勤時間を変えている。

その投稿『凄いね』
もっと、写真を載せてよ。
色々と見てみたいなぁ~

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