これからどうするのか、決心が付いた。

私はウェンディさんをジッと見つめ、
決意を伝えることにする。
 
 

サララ

ウェンディさん、
しばらくここで
ご厄介になってもいいですか?

ウェンディ

なんだって?

サララ

ご主人様が結界から出るのを
見届けたいんです。
その時までいさせてください。

サララ

もちろん、
ウェンディさんのお世話は
させていただきます。

ウェンディ

…………。

ウェンディ

好きにするといい。
私としてもサララがいると
何かと助かるしね。

サララ

ありがとうございますっ!

 

やったぁっ♪
ウェンディさんは快諾してくれた!


こうして私はウェンディさんの
お世話をしながら、
この地に留まることになった。




そしてそれから1か月弱の時が流れたあと、
ついにその瞬間が訪れる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ウェンディ

サララ、洞窟内に強い力を持った
何者かが現れたようだ。
おそらくアンタの知り合いじゃ
ないのかねぇ?

サララ

そうなんですか?

ウェンディ

あぁ、サララのご主人よりも
強い魔力を持った魔族が2人。
アンタよりやや大きい
魔力の持ち主が1人。

サララ

3人ですか……。

 
 
思い当たるのはやっぱりシャイン様。
あとは誰だろう?
可能性が高いのはクロイス様だろうなぁ。



まさか魔王様じゃないよね?

だって魔王様なら魔力が桁違いに強いから
こんなに近い距離にいたとしたら
私にだって分かるはずだもん。
 
 

あと、私よりもやや強い魔力という相手は
たぶんエルくんかな……。
 
 

サララ

私、様子を見届けてきますっ!

ウェンディ

そうかい……。

サララ

そのあと、この地を去ります。
ウェンディさん、
今までお世話になりましたっ!
ありがとうございましたっ!

ウェンディ

サララ……泣いてるのかい?

サララ

えっ?

 
ウェンディさんに言われて、初めて気が付いた。



私……いつの間にか泣いてる……!?

それを意識したら、
一気に涙が溢れて止まらなくなった。



ウェンディさんと過ごしたのは1か月弱。
でも楽しいことや嬉しいことがたくさんあった。

こんなに温かい暮らしをしたのは
いつ以来だろう?


その思い出が頭の中に強く焼き付いて、
胸が熱くなってくる。
 
 

サララ

あのっ! またいつか、
ここへ会いにきてもいいですか?

ウェンディ

……そんな日が来たら
私も嬉しいけどねぇ。
まぁ、好きにしなよ。

サララ

はいっ!

ウェンディ

じゃ、餞別代わりに
これを持ってお行き。

 
 
そう言ってウェンディさんは
私に小さな指輪を差し出した。


魔力を感じるけど、これはいったい?
 
 

 
 

ウェンディ

それを持っていれば、
魔界にいる私の一族が
きっと助けてくれるだろう。

ウェンディ

困った時はその指輪の光の
導きに従ってみるといい。

サララ

ありがとうございますっ!

 
 
ウェンディさんには感謝してもしきれない。

私は深々と頭を下げ、指輪を受け取った。
そしてそれを指にはめると、
気配を消しつつ忍び足で洞窟へ向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ご主人様のいるフロアの手前まで来た私は
通路の影に隠れて中の様子をうかがった。


すると結界の横に佇んでいたのは、
予想通りシャイン様。
さらに残りの2人は
クロイス様とエルくんだった。
 
 

シャイン

――と、作戦はこんな感じよ。
分かったわね?
その条件が飲めるなら
結界を破ってあげる。

デリン

無論だ。
勇者は俺が仕留めてみせる。

クロイス

いいお返事です、デリン。
期待していますよ。

デリン

ふんっ。

シャイン

では、お姉様。始めましょう。

クロイス

えぇ。

 
 
シャイン様とクロイス様は魔力を高め始めた。

そして何かのスペルを唱えると、
黒い霧のようなものが結界を覆っていく。
 
 

 
 
 

 
 
 
結界は小さなスパークを上げつつ
悲鳴のような軋みを上げた。
それでもなかなか結界は破れない。

これにはシャイン様とクロイス様の表情も
次第に苦々しいものへと変わる。



四天王が2人がかりでも破れないなんて……。

いくら勇者様の仲間だとしても
あんなに強固な結界が張れるなんて、
普通の人間とは思えない。


――本当に何者なんだろう?
 
 

シャイン

チッ! ダメね……。

クロイス

まさかこれほどとは
思いませんでした。

 
 
しばらく経って、
シャイン様たちは結界破りを中断した。

依然として結界はご主人様を封じたまま。
 
 

サララ

ご主人様……。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
その時、私は足下に落ちていた小石を
つい蹴飛ばしてしまった。


静かな洞窟内にはハッキリとその音が響き、
シャイン様たちの視線が
一斉にこちらへ向く。

私は慌てて身を隠したけど……。
 
 

シャイン

そこに誰かいるわね?
出てきなさい。
大人しく出てくるなら
楽に死なせてあげるわよ?

クロイス

あら、シャインったら。
もし騒いだらどうなるの?

シャイン

苦しませながら
時間をかけて殺してあげる。

エル

どっちにしても
死ぬんじゃないですか。

シャイン

当然でしょ。
私たちの話を聞いていたかも
しれないのに、
生かしておくわけがないわ。

エル

なるほどね。
死亡フラグってことですか。

シャイン

出てこないなら、
私から出向いてあげましょうか?
ただし、私の出張費は高いわよ?

 
 

 
 
シャイン様の声とゆっくりとした足音が
こちらへ近付いてくる。

今さらもう逃げることはできないし、
例え今を逃げ切ったとしても
すぐに捕まって殺されてしまう。
 
 

サララ

もう……ダメだ……。

 
 
私は全身に力を入れ、
恐怖に震えながら死の覚悟をした。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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