私は何回か転移魔法を失敗しつつも、
なんとかご主人様のいる洞窟へ辿り着いた。
中へ入る前に、まずは小屋に寄って
ウェンディさんにご挨拶をしないと。
――と、思っていたら小屋のドアが開いて
ウェンディさんが出てくる。
私は何回か転移魔法を失敗しつつも、
なんとかご主人様のいる洞窟へ辿り着いた。
中へ入る前に、まずは小屋に寄って
ウェンディさんにご挨拶をしないと。
――と、思っていたら小屋のドアが開いて
ウェンディさんが出てくる。
おや? サララかい。
ウェンディさん、こんにちは。
その顔は何か良いことでも
あったようだね?
はいっ!
では、私はご主人様に
会ってきます。
私はお辞儀をしてから洞窟の中に入った。
記憶を頼りに洞窟を進み、
無事にご主人様のいるフロアへ到着!
早くご報告しないと!
ご主人様~っ!
サララか……。
ご報告があるんです~っ!
私は今までのことをご主人様に話した。
エルくんに妨害されたけど、
ナリアさんの仲介で
シャイン様に話を伝えてもらえたこととか
あったことの全てを。
これでご主人様は
この結界から解放されますっ!
…………。
それまでここで
ご主人様のお世話を
させていただきます。
このバカがっ!
ヒッ!
ご主人様はなぜが激怒していた。
なんでこんなに怒鳴るのだろう?
私はご主人様の言いつけ通り
シャイン様へ繋ぎをつけたのに。
もうすぐ結界から出られるのに。
俺がなぜシャインに
話を繋げと言ったのか、
意味を理解していなかったのか?
えっ?
ナリアに話をしたということは
シャノンを通じて魔王様に
この顛末が伝わるということだ。
そ、それが何か……?
魔王様のお手を
煩わせることになるだろう。
それにこの話が広まって
俺は赤っ恥だ!
で、でも……。
シャインに直接、
話を繋いでいれば
問題はなかったのだ。
エルとかいう使い魔程度、
策略を使ってひれ伏せさせろ。
それが逆に罠にはまるとは
開いた口が塞がらん。
う……。
ご主人様はいつになく厳しい言葉を
私に突きつけた。
どれも胸に突き刺さって痛い……。
私が力不足なのは自覚している。
でも私だって一生懸命、
ご主人様のために動いてきた。
優しい言葉のひとつくらいはかけてほしい。
……サララ、お前は破門だ。
えっ?
私の心臓は大きく脈動した。
自分の耳がおかしくなったんじゃないか、
聞き間違いなんじゃないかって思った。
全身が震える。ちょっと息苦しい。
ご主人様の顔を見ると、
冷たい瞳で私を睨み付けている。
二度と俺の前に顔を見せるな。
もし現れた時は、
俺が直々にお前を殺す。
ま、待ってください!
それだけは……。
消えろ、役立たずが!
う……ぁ……。
頭の中が真っ白になった。
そのあと、
私はどうしたのかよく覚えていない。
気が付いた時には
洞窟の入口に戻ってきていた。
お日様の光がすごく眩しい。
草木の香りのする涼しい風が
私の頬や髪を撫でていく。
あ……あぁ……。
私は魂が抜け出たかのように
がくりと両膝をつき、その場で大泣きした
ご主人様に捨てられた。
使い魔にとっては
死刑宣告を受けたようなもの。
私に自由なんていらない。
ご主人様にお仕えできることこそが
なによりの幸せであり、生きがい。
私はこれからどうすれば……。
サララ……。
気が付くと、
横にはウェンディさんの姿があった。
私の泣き顔を見て驚いていたけど、
すぐに私に歩み寄って
優しく抱きしめてくれる。
すごく温かい……。
何があったのか知らないけど、
決して希望を捨てちゃいけない。
えっ?
希望は自分の努力次第で
いくらでも輝かせることが
できるんだからね。
諦めたらおしまいなんだよ。
実はこの洞窟はね、
勇者様の『諦めない心』を
試すためのものなんだ。
サララも諦めない心を持って
ここから旅立つんだ。
ウェンディさん……。
そうだ、これくらいで
私のご主人様に対する想いは揺らがない。
きっとご主人様にはお考えがあって
あんなことをおっしゃったに違いない。
冷静に考えれば、あの態度はおかしいもん。
今までにも大きな失敗をしてきた。
確かに叱られたけど、
あんなにも冷たく突き放すことはなかった。
ちょっと態度が露骨すぎる。
きっとあの言葉の裏には
別の真意があるに違いない。
だとすればご主人様は
いつかきっと私を迎えに来てくれる。
うん、それなら私の進むべき道はひとつ――
次回へ続く!