そんな今日も

おう!
こいつの虫の居所が悪くなっちまってさ


町の人がジーニーの元に
壊れた機械を持ち込んでくる。


それを直して小銭を貰うのが
ジーニーの仕事。





本人は発明の片手間のつもり
なんだろうけど

爆発するだけの変な機械を作るより
ずっと実用的で
ずっとひとのためになる。




むしろこっちを
本職にしてもらいたい。

気難しい女だが悪い奴じゃないんだ。よろしく頼むぜ




今日の依頼は
屑鉄屋のベンおじさんの愛車。











もう10年以上
荷台に屑鉄を山のように積んで
この町と王都を
行き来しているこの車は


ガタはきているけれど
車体そのものは小綺麗で

おじさんが大事にしているのが
よくわかる。











女?
車でしょ?

昔っから男にとっちゃ乗り物は女性みたいなものなんだよ


エンジンルームを覗き込んで
ベルトを押したり
タンクの水量を確認したりしながら
ジーニーが教えてくれる。

今は鉄製の馬になっちまったが、心は変わんねーよな

そういうもの?








こんな機械の塊の
どこがどうおかしいのか、なんて

それこそ
男の人の馬に対する想いと
同じくらいわからない。





そんな彼女みたいな車の不調が
長年連れ添ってるベンおじさんより
わかるっていうのも


彼が
ジーニーだからなのだろうか。



ま、ロザンナもイケメンに直してもらえるなら機嫌もいいだろうよ

ロザンナ……
名前つけてるんだ……

いい……だろうけど、なぁ……


……車というのは浮気もするのか。
(小並感)





















明日には直ってますから迎えに来てあげて下さいね

おう!
頼むぜジーニー!!

……




この閉塞的な町で
よそ者のはずのジーニーは
確実に居場所を作りつつある。





















10年食べ続けたら、

10年後も
もしかしたらいるのかもしれない。

あたしの家の2階に。























ジーニーを拾った日、
ママは

この人はいつかこの町を出て行く人だから、情を寄せてはだめよ

と言った。











小さな町はよそ者に厳しい。

ジーニーは頭がいいから
こんなところにいるよりも
王都なんかのほうがずっと出世できるし
必要とする人も多いだろう。

そう、ずっと思っていたのに



いつの間にか

町の人たちは
ジーニーがいる生活に慣れてしまって

壁を作っているのは
あたしひとりになってる。




























ママでさえ。







またダイエットでもするつもり?
成長期にダイエットすると育たないよ?

違うわよ


ねぇ、ジーニー。


本当に天才なんだったら

あたしの中のモヤモヤも
ロザンナみたいに直してよ。


背も胸も

……あんたね


なんて


そんなことは、言えない。










さん。

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