……眉間の皺が取れなくなるわよ?

親友のサラにそう言われた。

あれはただ単に分解してみたいだけよ

動機は問題じゃないわ
















そう言えばね。
ジーニーみたいに腕のいい機械技師さんは王都でも少ないんですって

サラは思い出したかのように
そんなことを言った。

……なに、急に

昨日、パパのところに王都のお役人が来てね。
お話しているのを聞いたの










彼女の父は
この町のまとめ役をしている。

だから、偉いお客様も
よく来るんだけど


田舎ということもあって
王都から遥々訪ねてくる客人は
数えるほどしかいない。





だから彼女も
盗み聞いてしまったらしい。










パパがすっごく自慢げに言ってるから笑ってしまったわ

以前は壊れたら買い替えるしかなかったのに、ジーニーのおかげで町のみんながものを大事にするようになったんですよー、って。

ジーニーは物を大事にする天才ね

貧乏性って言うのよ
























































王都は
その名のとおり
王様が住んでいる街だ。


もちろんあたしたちは
王様になんて会ったこともないし
いてもいなくても
生活に支障はないけれど。



王都には
頭のいい学者さんや
技師さんも大勢住んでいて、

「王都に住んでいる」ということが
一流の証みたいに
なっている部分もある。













ジーニーはいずれここを出て行く人なんだから





ジーニーは
こんな田舎町にいていい人じゃない。
王都でも十分通用する腕を持っている。




それは認めるし
いつか出ていくことだって
納得していたはずだったのに




































そのお役人さんも、そんな腕がいいならぜひ会ってみたい、って言ってたわ。
今頃、アリスの家に来てるんじゃないかしら

……ジーニーは王都なんか行かないわよ!


それなのに、
思わず声を上げていた。

……


唖然としているサラに
ふと、我に返る。

あ、ええと




……なに言ってるんだろ、あたし。























王都に迎えてもらえるのなら、それはジーニーにとってもチャンスなのよ?
あなたが止めるものではないわ

わかってる。けど、


サラの言うことはわかる。



そうでなくても
ジーニーがやりたいのは
発明だ。

おもちゃだの目覚まし時計だのの
修理じゃない。

でもジーニーはママの料理が好きだし、王都に行っちゃったら困る人だってここにはいっぱいいるでしょ!?


じゃない。

けど。

そうかしら











美味しい料理なんて
王都にはいくらでもあるし










依頼してくる人も
依頼内容も

こことは比べようもない









発明の材料だって
王都なら調達しやすい


こんなところで
才能を腐らせるより……




……

それはわかる。
わかるんだけど。













































またねー

























……失礼。
こちらにジーニーさんと言う方は

あ、はい。なにか









































































その日。











あたしが学校から帰ると




ジーニーの姿は
もう、どこにもなかった。








よん。

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