ソールさんがみんなに集まれって言ってたけど、何かあったのか……?
わしも何も聞いておらんぞい
若奈達は何か聞いてるんだろ?
…………
…………
ど、どうしたんだよ、2人とも……?
待たせてすまない
ソールさん……
話に移る前に、これから起きることを端的に言おう
近いうちに、十国とディスナティが戦争を起こす
戦争じゃと……?
ディスナティって、確か魔法大国で、そしてソールさんの故郷じゃ……
はっきり言っておきたいのは、私はこの戦争に関しては一切関与していない。つい先ほど知ったばかりだ
十国軍はこのすぐ近くの港から海に出て、ディスナティと対峙するつもりらしい
んで、俺が聞いた話だと、ディスナティはとっくに気づいてるらしいっす。既に船団を作ってこっちに向かう準備をしていると
3日後には港に着くそうっすよ
なら話は早い!俺達も国軍に合流し、ディスナティと戦うんだ!!
俺達は十国の民!国のために身を捧げられるなら本望だ!!
……………
先生………
……何も言うな、シャルム
確かに、今マジで一番辛いのは先生だ。けど、この道を選んだのも先生なんだぜ
俺たちが、どうこう言えるレベルの話じゃねえや
でも……
………皆、聞いてくれ
私は、十国にもディスナティにも味方するつもりはない
えっ………
私はこの村の人に救われた。皆がいてくれなければ、私は海でおぼれ死んでいたことだろう
それに関しては断言できます
右に同じく
…………ディスナティの船団と十国の軍が戦えば、少なからず被害を受けるはずだ。私は、この村の人達に傷ついてほしくない
なら、どうすりゃいいってんだ!!
何もせずに死ぬくらいなら、せめて一矢報いたいじゃねえか!!
私が、この戦争を止める
止めるって、ソールさん一人で!?
正確には私、マジー、シャルムの3人だ
この戦争を止めるには、十国軍の本体と別動隊、そして向かってきているディスナティの船団を同時に、そして確実に倒さねばならない
それに、これは我々ディスナティの落ち度でもある。だからこそ、我々でこの争いを防がねばならない
皆に戦線に出てほしくはないし、戦ってほしいわけでもない。だが、どうか私達を信じてほしい。敵国の人間でしかない私達のことを………
それは違うぞ、水男殿
古森……?
マジー殿から聞いたぞ。「ディスナティのソール」としてだけでなく、「十国の水男」としても戦争を止めようとしていたと
………結局追放されてしまったが
大事なのは、貴方が十国の人間として将軍に説得したことだ
それだけで、貴方は立派な十国の民だと思うぞ
………ああ、そうだぜ
風ノ助……
ソールさんの強さも知ってる。不器用に優しいことも知ってる
何より、ソールさんは俺達を守るために土人形を倒してくれた!それだけで俺はソールさんを信じられる!!
そうだ!水男殿がいなけりゃ、俺達は今頃死んでたんだ!ディスナティの密偵なら俺達を助ける必要がねえからな!
ちげえねえ!俺達はアンタを信じるぜ、水男殿!!
皆…………
良かったね、ソールさん
ありがとう………
ほら!村長も何か言えよ!
こ、ここでわしに振るのか………
景気よく頼むぜ、村長!!
まったく……こういう時だけ村長扱いしおって
村長……
……水男殿、わしは先代の将軍様の時代に兵として軍に従じていたことがある
軍にいたのか?
あの時の様子は酷いものじゃった。たくさんの血が流され、響くのは叫び声と泣き声のみ。勝っても負けても、誰一人として笑っておらなんだ
そんな悪夢を、若い者に見せたくはない!
…………
村長……
それになにより……
わしは童貞のまま死にとうない!!!!
おいマジか
おいマジか
おいマジか
水男殿、若者の未来とわしの童貞のためじゃ。戦を止めるためなら、わしも全力で手を貸そう!
どうやら満場一致のようだな
皆、改めて感謝する
気概は受け取った。私も全力でその想いに応えよう!