一度だけ、彼と大喧嘩したあことがあった。
きっかけは、ささいなものだったが、お互いに一歩も譲らず、最後には殴り合いにまでなった。

正直このまま彼とお別れするのかと思うと、とても寂しかった。
だが、プライドが邪魔をして、なかなか謝ることができなかった。

その日の夜、私の部屋に、手紙が届けられた。
手紙には見覚えのある字で「ごめん」と書かれていた。
私はそれを見て、泣きながら笑ったものだ。

セヘル

………

榊 風音

では、先ほどの通り、ディスナティへは主軍、別動隊による2面から侵攻します

榊 風音

ディスナティは海に面した国。こちらが海上から攻めることは予想済みでしょう。そのため、別動隊に別方向から奇襲を仕掛けてもらいます

榊 風音

……本来、戦力を2個に分けることは下策と言われています。しかし、それは妖術を除いた場合の話

榊 風音

海上で隙をつければ我々の圧倒的有利です。別動隊の横やりが入れば、たとえ魔法大国のディスナティでも魔法を使わせる前に負かすことができます

榊 風音

いかがですか、榊将軍?

榊 十四郎

……うむ、異論はない

榊 十四郎

出発は明後日、それまでに船を含めた最終準備を急げ!!

はいっ!!

セヘル

皆のもの、大儀である。この神も皆のことを誇りに思おう

セヘル

此度の戦、この神も参陣しよう。皆に神の加護があらんことを

セヘル様ーー!!

神様万歳!!

セヘル

後のことは頼むぞ、十四郎

榊 十四郎

……承知しました

榊 十四郎

………ふぅ

榊 十四郎

やはり、元来俺に将軍など向いていないのかもしれないな……

榊 十四郎

風音や皆の助けがなければ、まともに会議もできない。何年経ってもままならぬものだな……

待っていたぞ

榊 十四郎

誰だ?

ソール・グルナディエ

私だ

榊 十四郎

………ソール

マジー・プリエール

……………

ソール・グルナディエ

弟子からあらかた事情は聞いた。十国とディスナティが戦争をしようとしているとな

榊 十四郎

……ああ

ソール・グルナディエ

ディスナティの代表として頼む。今からでも遅くはない。戦争を止めてくれないか

マジー・プリエール

先生………

ソール・グルナディエ

ディスナティには私が責任をもって止めて見せる。だから、頼む、十四郎

榊 十四郎

ソール……すまない

ソール・グルナディエ

…………っ

マジー・プリエール

先生、もう……

ソール・グルナディエ

………何故だ

榊 十四郎

ん?

ソール・グルナディエ

何故十国はディスナティとの戦争に踏み切った!この戦争は十国に何のメリットもないだろう!!

ソール・グルナディエ

ここで戦争をしては、何のために君が………!!

榊 十四郎

盟を破ったのは、そちらではないのか?

マジー・プリエール

……どういうことっすか

榊 十四郎

こちらにも報告が来ている。我が国の大使が2名、ディスナティで殺された。しかも拷問にかけられた上でな

ソール・グルナディエ

それは………!!

マジー・プリエール

十国の人間がスパイ疑惑で捕まった話だ……。捕まった2人は妙なことを口走って自殺したんだっけ………

榊 十四郎

その2名は俺の直属の部下だった!彼らに密偵など頼んだ覚えはないし、そんな事実はどこにもなかった!

榊 十四郎

何故ディスナティは2人を拘束した!!答えてみろソール!!

ソール・グルナディエ

………っ!!

榊 十四郎

……あの時点で、盟は崩れてしまっていたんだ

榊 十四郎

分かっただろう。十国は、ディスナティと戦をする動機があるのだ。偽りの事実で、民を殺された恨みがな

ソール・グルナディエ

……良いだろう

榊 十四郎

何!?

マジー・プリエール

先生止めてください!なんで跪いているんですか!!

ソール・グルナディエ

ディスナティ代表・ソール・グルナディエとして頼んでも無理なら……

水男

この国の民である、「水男」として改めて頼む

水男

どうか戦などお止めください……榊将軍

榊 十四郎

……どういうつもりだ

水男

この十国内において、もっともディスナティに近く、海に面しているのは……

水男

漂着した私を助けてくれた村なのです

榊 十四郎

……なんだと?

マジー・プリエール

てか、マジで溺れてたんだ先生……

水男

私は、十国が好きです。自然が豊かで美しく、なにより人々が皆優しい

水男

そのかけがえのない村が戦禍に巻き込まれるというのは、万が一にも避けたいのです

水男

どうかお願いです榊将軍!今一度戦争を止めるようお考えに――――

榊 十四郎

ならば、水男殿にこの国からの追放命令を出そう

水男

…………なに?

榊 十四郎

これは命令だ。水男よ、疾くこの十国から去るが良い

水男

…………

ソール・グルナディエ

……それがお前の答えか

榊 十四郎

………そうだ

ソール・グルナディエ

……いいだろう

マジー・プリエール

先生……

ソール・グルナディエ

……行くぞ、マジー

榊 十四郎

…………

榊 十四郎

すまない、ソール

榊 十四郎

これが、「神」の意志なのだ………

マジー・プリエール

………先生

ソール・グルナディエ

すまない、マジー

マジー・プリエール

何かを言う前に謝らないで下さいよ

マジー・プリエール

カシェさんから、転送アイテム預かってますよ

マジー・プリエール

2つ

ソール・グルナディエ

それがあれば1個で2人転送できる……上等だ

ソール・グルナディエ

シャルム達と合流するぞ、マジー

マジー・プリエール

………はい

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