結果報告
被検体 鳳利幸
願い 永遠に奢り続けたい

被検体鳳は初回のループを自己の置かれている状況確認の為に行う。奢る対象 チュータ。ただし泥酔状態。二回目、奢る対象 ペンコ。ただしループの内容を理解していなかった模様。失敗のループ一回目。三回目、二回目のループ分岐においてループを行わず乗り切る。しかし、一回目のループ対象者に公園で出会い飲料を奢る。失敗のループ二回目。四回目、報告権監督の私にループ機能をしよう。そのため規約3条に抵触のため特別措置を発令。これより、鳳衣の裁量により制裁を行う。

こんな感じでいいですかね


衣はカタカタとキーボードを弾きながら、デスクトップとにらめっこをしていた
一人残された利幸は、怯えた表情を浮かべていた。先ほどの、殺気100パーセントお前絶対に殺すからなと言わんばかりの衣の発言

おじさんが悪いんですよ?


に全てが凝縮されていたに違いない

鳳利幸

それで…俺は今から何をされるんだ?

何されたいです?あんなことやこんなこと…はたまた死を伴う痛みを快感として受け取る。なんてのもアリですけど
その程度で私の怒りは収まると思いますか?

鳳利幸

い、や


圧倒された。
だからこそ言葉が詰まる。ここで衣の気に障るような圧減をした場合、間違いなくこの世とバイバイするであろう。
それくらいの恐怖を、今の衣は醸し出しているのだ。

大体、貴方は奢ることもループのことも両方軽く見すぎです。恥を知りやがってください

鳳利幸

それは…どういう?

振り返ってみてください。貴方は無意識のうちに二回奢っているのですよ?バカなのですか?いやバカです
自己財産の管理もロクにできないくせに奢りたい?ああ?呑みニケーション?そんな造語してる暇があったら呑み以外でコミュニケーションをとる方法の一つ二つ三つ考えやがってください!!!

鳳利幸

あ…

大体同じ日を何回も繰り返してまでコミュニケーションを取りたいのですか?…あなたの求めていた威厳というものはその程度で満たされるほどのちっぽけなのですか?

鳳利幸

違う!!こんな…奢らない俺でもかっこいいって言ってくれる人がいて、一緒に働いてくれる仲間がいて。威厳なんてものじゃない。優越を感じたいものでもない…俺は、俺は

なら、もう一度聞きます。鳳利幸
貴方はこのプロジェクト おごるーぷを終了しますか?

鳳利幸
チュータ

お疲れさまです

ペンコ

これ、みんなからの贈り物です


席に並べられた数々の料理。利幸を囲むように座る社員

チュータ

どんどん。飲んでください利幸さん

ペンコ

そーですよ、あなた

鳳利幸

辞めてくれよ、一応職場なんだからその呼び方は

チュータ

全然かまわないですよ。むしろお二人ともお似合いで羨ましいです


あの日以来、奢ることを辞めた。しかし、それでも付いてきてくれる仲間がいた。それだけ周りに信頼されていたということも、自分は彼女に言われるまで分かっていなかったのだ。
戻らなくたっていい。あの頃みたい薄給でもなければ、無理して奢って威厳を保とうとすることも無くなった。
不甲斐ないと思う。自分より年下な彼女に自分というすべてを見透かされていたことも、抹消面から自分の一番弱いところを突かれたのも…

チュータ

今日はとことん呑みますよー

ペンコ

チュータくん、ほどほどにしないと奥さんが困りますよ

チュータ

へーきですって、それよりお宅の旦那さんの相手をしないと拗ねちゅー

鳳利幸

なんだよ拗ねちゅーって


わっはっはと笑いの絶えない空間。小さく開かれた窓からは済んだ夜風が入り込むのであった。

…さよなら、大好きな人


悠久の時を得代償に独り身という制限を受けた女ため息が零れ落ちる。

貴方には関係のない話


嘘はついていない。貴方にとっては、関係のない話。
輪廻転生という人類のループから外れた。孤独を背負う。慣れたと言えば耳心地いいかもしれないが、そう自分を騙さなければ前に踏み出すことができない。…現実を受け入れることができないのであった。もう、鳳という性を名乗ることすらできない…

駅のホームに終電を逃した影が溢れかえっている。その陰の合間を認識されない衣は縫っていく。悠久の暇つぶしを求めて。

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