鳳利幸

さて…どうしたものか

利幸は自室のデスクで、一人悶々と考えていた

「奢ることによって自分の威厳を保ちたいのではないか」
「そんなことしなくても、鳳先輩はかっこいいですよ」
違う違う。そうではない
ふいに過るペンコの言葉を振り払う

鳳利幸

…奢ることでしかコミュニケーションを取れなかったんだな

言葉に出して実感する
自分の情けなさというものを

確かに、与えることのよって自分をよく見せようとしていた。相手の為になるのではないか、そう思っていたが実際は自分のエゴであって、しかもループする旅の記憶は自分以外残っていない

ん?
自分以外残っていない?

鳳利幸

もしかして…いやでもそんなことは有り得るのだろうか?



8月22日 朝
いつもと同じ利幸の部屋

鳳利幸

なあ、衣

うわ、初めて名前を呼ばれたような気がします
それで、決心はついたのですか?
とびっきりキュートな衣ちゃんからの監視生活に終止符を付ける決心はつきましたか?

鳳利幸

よく平然とそんなこと言えるな
…ほら、これ

そういうと、利幸は自分のデスクの上に置いてあった箱を衣に渡す

なんですかこれ?

鳳利幸

まぁ…プレゼントってやつだよ
いつも世話になってる訳だし

あのー
お気持ちは嬉しいのですが、組織の規定的にもまずいんですよね
ってことで料金を支払わせていただきます!

慌て気味で財布を出し
「いくらですか」と利幸に尋ねる

ーこの時を待っていた

鳳利幸

気にしないでくれ、俺の奢りだから

え?

有り得ない発言をされたように大きな目を見開く衣
その両手から財布が滑り落ち、床に散らばるのであろう

初めて目の前でループしていく状況を目の当たりにする利幸
彼女の表情が、利幸の疑問の答えなのであろう
「奢られた方の記憶は残らない」

その法則に、彼女も例に漏れること無く含まれているということだ

鳳利幸

なんだ…案外ちょろいもんだな

なーんてうまくいくと思いました?
おじさんって着眼点はいいんですけど、詰めが甘いですよね

鳳利幸

…ループするんじゃないのか?

してもいいですけど、このループ無駄でしかないので割愛させていただきます
それに、あと一回ループしちゃうとおじさんの体がもたないんですけどいいですか?

鳳利幸

それはどういうことだ?

ホントは最後のループをしようとしたときに言おうと思ってたんですけど…悪いのはおじさんだからね?

「衣を怒らせたんだから」
耳元でささやかれる声には殺気というものが溢れていいるのであった

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