吉良はどこだ?
吉良はどこだ?
なんかココ来るとさ
嫌なことしか思い出さない
んだよね……。
お前の感傷に
付き合っている暇はない
誰のせいだと思ってんだよ……。
はぁ?
悠真!
はいはい。
悠真は「開」と書いてある赤いボタンを押した。
扉の真ん中の斜めの線から上下に離れて行く。
ここは
さっきの部屋か?
そうよ。
なんで、ボクが乗ってきた
タイムマシンがなくなって
この巨大ロボットがあるんだ?
なんでかしらね。
この状況から
考えられることは……。
さんちゃん、
吉良はいまどこにいる?
ぴぴっ(はいっ)
ぴっぴぴっぴ~
ぴぴ(この世界にはいません)
ホントか?
ぴっぴ~ぴぴ~(ボクの柳之助くんセンサーに反応しているのは、柳之助くんだけです)
少し前には
もう一人いたみたいだな。
ぴぴ(はい)
ぴぴぴーぴぴ(もう一つの反応がなくなったので、吉良さんが異世界に行ったと判断しました)
ぴぴぴ~(おおお~)
ぴぴっぴっぴぴぴぴ~
(我らが生まれた意味が
いま、明かされようとしている……。)
ピーシリーズが
生まれた意味って何だ?
ぴっぴぴぴぴーぴ(それは、柳之助くんを2002年に送ることだよ)
なんでボクがそんな時代に
送られるんだよ。
ぴっぴーぴ(栄井さん、後はお願いします)
その姿を見るのは
懐かしいな……。
ロボットの後ろから、おっさんが現れた。
誰だ?
私は栄井武史。キミの
古くからの友人だよ。
友人なんていない。
私はキミのことを知っているが
キミは私のことを知らないだろう。
?
キミが私にそう言ったんだよ。
言った覚えはない。
これから言うことだから。
顔は変わってないから
すぐにわかると思うよ。
そう言って栄井は、ボクにマニュアル本をどっさりと渡した。
なんだ?
これは。
タイムマシンの使い方と作り方。
いらない。
それを床に置いた。
こんな時代の奴らが作った
タイムマシンなんて、怖くて使えない。
そう言うと思ったけど
一応作ってみたんだ。
時間がないからざっと説明するけど
これがタイムマシン。
栄井はさっきの巨大ロボットを指さした。
流線形とか球形がいいんじゃないのか?
これじゃあ無駄が多いだろう?
キミがキミらしくて
安心したよ。
これは実用と趣味を
兼ねているんだ。
解らなくもないな。
だろ?
光速移動でタイムリープするのではなくて時空のひずみを生みだして通るタイプなんだ。
空間を手繰り寄せて、目指す時間軸が来たら穴を開けて通って、その後、空間移動をする。
そのためのパワーとスピードを
兼ね備えたスーパーロボットなんだ。
ただ、残念なことに
戦うことには適していない。
残念だとは思わないが。
期待はしてなかったけどね……。
もし万が一、敵に遭遇しても
逃げ足は速いから大丈夫だよ。
敵がいるのか?
いないんだよ……。
残念がる必要はないだろ?
計算では、まもなく23年前、
2002年に戻るのに適した時間になる。
その時代に、
何か意味があるのか?
というか、吉良というヤツは
どこにいったんだ?
ボクのタイムマシンを勝手に使って、戻ってこない気か?
吉良は戻ってくるよ。
それなら、ボクは戻ってきたタイムマシンを使って、ボクの世界に戻る。
キミはあの世界に戻りたいの?
当然だ。
ボクが生まれた世界だし……。
いま、吉良はキミの世界を
救おうとしている。
どうして?
彼は23年の時をかけて
その技術を開発した。
吉良がボクなのか?
そうだよ。
今のキミが戻っても
何もできない。
ボクのタイムマシンを奪ったのは
あの機械じゃないと、異世界には行けないってことか……。
似たようなものはできるんだけど、確実にキミの世界に戻るには、キミのタイムマシンが必要だったんだ。トレース機能があるって吉良は言っていた。
その通りだ。
ボクもそれがないと戻れないと思った。
別に、23年なんて必要ないだろ?
そんなに戻る必要はない。
あるのよ
なんでだ?
私はガキが嫌いなの。
はぁ?
年上としか
付き合うつもりないから。
…………。
知的でかっこよくて
年上な人が、私の好みのタイプなの。
まさかと思うけど……
それでボクに23年前に行けと?
そんなこと言ってないでしょ。
それに、戻ったからといって
私と付き合えるとも限らないんだからね。
え?
あなたがこれから歩む道が
未来になる。
その行動によって未来が変化することは、十分に考えられる。
あなたが私を選ばない未来だって、あるかもしれない……。
そう言って、悠衣は左手の薬指のリングをキュッと握った。
その指輪は、吉良が……。
ボクが送ったってこと?
…………。
悠衣はうなずかなかった。
ボクが送ったんだろう。
栄井。
23年前に戻る。
ぴよっ(ボクの出番だね)
あとはキミが乗るだけに
なってるよ。
わかった。
さんちゃん、行くぞ。
ぴよ~(はい~)
ぴぴぴ~(さんちゃ~ん。達者でなぁ~)
ぴぴ~(がんばってこい!)
ぴぴぴ~(そうだぞ~)
ぴーぴっぴっぴ~(さんちゃんの活躍を期待しているよ~)
ぴっぴ~(ボクたちは何もできなくても、気持ちはいつでも一緒だよ~)
壊れても、ボクが全力で直すからね!
どうやって直すつもりなんだ?
ロボット型のタイムマシンに乗ろうとして、手を止めた。
悠衣
え?
ボクは……、
……。
…………。
悪い、吉良。
急いでくれ……。
わかった……。
ボクは急いでタイムマシンを動かした。
あと、数秒遅れたら、手遅れになるところだった。
ボクは23年さかのぼり
2002年に行った。