吉良はどこだ?

悠真

なんかココ来るとさ
嫌なことしか思い出さない
んだよね……。

柳之助

お前の感傷に
付き合っている暇はない

悠真

誰のせいだと思ってんだよ……。

柳之助

はぁ?

悠衣

悠真!

悠真

はいはい。

悠真は「開」と書いてある赤いボタンを押した。

扉の真ん中の斜めの線から上下に離れて行く。

柳之助

ここは
さっきの部屋か?

悠衣

そうよ。

柳之助

なんで、ボクが乗ってきた
タイムマシンがなくなって
この巨大ロボットがあるんだ?

悠衣

なんでかしらね。

柳之助

この状況から
考えられることは……。

柳之助

さんちゃん、
吉良はいまどこにいる?

さんちゃん

ぴぴっ(はいっ)

さんちゃん

ぴっぴぴっぴ~

さんちゃん

ぴぴ(この世界にはいません)

柳之助

ホントか?

さんちゃん

ぴっぴ~ぴぴ~(ボクの柳之助くんセンサーに反応しているのは、柳之助くんだけです)

柳之助

少し前には
もう一人いたみたいだな。

さんちゃん

ぴぴ(はい)

さんちゃん

ぴぴぴーぴぴ(もう一つの反応がなくなったので、吉良さんが異世界に行ったと判断しました)

ナナちゃん

ぴぴぴ~(おおお~)

ふぉーちゃん

ぴぴっぴっぴぴぴぴ~
(我らが生まれた意味が
いま、明かされようとしている……。)

柳之助

ピーシリーズが
生まれた意味って何だ?

ぴーちゃん

ぴっぴぴぴぴーぴ(それは、柳之助くんを2002年に送ることだよ)

柳之助

なんでボクがそんな時代に
送られるんだよ。

ぴーちゃん

ぴっぴーぴ(栄井さん、後はお願いします)

栄井

その姿を見るのは
懐かしいな……。

ロボットの後ろから、おっさんが現れた。

柳之助

誰だ?

栄井

私は栄井武史。キミの
古くからの友人だよ。

柳之助

友人なんていない。

栄井

私はキミのことを知っているが
キミは私のことを知らないだろう。

柳之助

栄井

キミが私にそう言ったんだよ。

柳之助

言った覚えはない。

栄井

これから言うことだから。

栄井

顔は変わってないから
すぐにわかると思うよ。

そう言って栄井は、ボクにマニュアル本をどっさりと渡した。

柳之助

なんだ?
これは。

栄井

タイムマシンの使い方と作り方。

柳之助

いらない。

それを床に置いた。

柳之助

こんな時代の奴らが作った
タイムマシンなんて、怖くて使えない。

栄井

そう言うと思ったけど
一応作ってみたんだ。

栄井

時間がないからざっと説明するけど
これがタイムマシン。

栄井はさっきの巨大ロボットを指さした。

柳之助

流線形とか球形がいいんじゃないのか?
これじゃあ無駄が多いだろう?

栄井

キミがキミらしくて
安心したよ。

栄井

これは実用と趣味を
兼ねているんだ。

柳之助

解らなくもないな。

栄井

だろ?

栄井

光速移動でタイムリープするのではなくて時空のひずみを生みだして通るタイプなんだ。

栄井

空間を手繰り寄せて、目指す時間軸が来たら穴を開けて通って、その後、空間移動をする。

栄井

そのためのパワーとスピードを
兼ね備えたスーパーロボットなんだ。

栄井

ただ、残念なことに
戦うことには適していない。

柳之助

残念だとは思わないが。

栄井

期待はしてなかったけどね……。

栄井

もし万が一、敵に遭遇しても
逃げ足は速いから大丈夫だよ。

柳之助

敵がいるのか?

栄井

いないんだよ……。

柳之助

残念がる必要はないだろ?

栄井

計算では、まもなく23年前、
2002年に戻るのに適した時間になる。

柳之助

その時代に、
何か意味があるのか?

柳之助

というか、吉良というヤツは
どこにいったんだ?

柳之助

ボクのタイムマシンを勝手に使って、戻ってこない気か?

栄井

吉良は戻ってくるよ。

柳之助

それなら、ボクは戻ってきたタイムマシンを使って、ボクの世界に戻る。

栄井

キミはあの世界に戻りたいの?

柳之助

当然だ。
ボクが生まれた世界だし……。

栄井

いま、吉良はキミの世界を
救おうとしている。

柳之助

どうして?

栄井

彼は23年の時をかけて
その技術を開発した。

柳之助

吉良がボクなのか?

栄井

そうだよ。

栄井

今のキミが戻っても
何もできない。

柳之助

ボクのタイムマシンを奪ったのは
あの機械じゃないと、異世界には行けないってことか……。

栄井

似たようなものはできるんだけど、確実にキミの世界に戻るには、キミのタイムマシンが必要だったんだ。トレース機能があるって吉良は言っていた。

柳之助

その通りだ。

ボクもそれがないと戻れないと思った。

柳之助

別に、23年なんて必要ないだろ?
そんなに戻る必要はない。

悠衣

あるのよ

柳之助

なんでだ?

悠衣

私はガキが嫌いなの。

柳之助

はぁ?

悠衣

年上としか
付き合うつもりないから。

柳之助

…………。

悠衣

知的でかっこよくて
年上な人が、私の好みのタイプなの。

柳之助

まさかと思うけど……
それでボクに23年前に行けと?

悠衣

そんなこと言ってないでしょ。

悠衣

それに、戻ったからといって
私と付き合えるとも限らないんだからね。

柳之助

え?

悠衣

あなたがこれから歩む道が
未来になる。

悠衣

その行動によって未来が変化することは、十分に考えられる。

悠衣

あなたが私を選ばない未来だって、あるかもしれない……。

そう言って、悠衣は左手の薬指のリングをキュッと握った。

柳之助

その指輪は、吉良が……。
ボクが送ったってこと?

悠衣

…………。

悠衣はうなずかなかった。

柳之助

ボクが送ったんだろう。

柳之助

栄井。
23年前に戻る。

さんちゃん

ぴよっ(ボクの出番だね)

栄井

あとはキミが乗るだけに
なってるよ。

柳之助

わかった。
さんちゃん、行くぞ。

さんちゃん

ぴよ~(はい~)

ぴーちゃん

ぴぴぴ~(さんちゃ~ん。達者でなぁ~)

にーちゃん

ぴぴ~(がんばってこい!)

ファイブ

ぴぴぴ~(そうだぞ~)

ふぉーちゃん

ぴーぴっぴっぴ~(さんちゃんの活躍を期待しているよ~)

くぅちゃん

ぴっぴ~(ボクたちは何もできなくても、気持ちはいつでも一緒だよ~)

悠真

壊れても、ボクが全力で直すからね!

柳之助

どうやって直すつもりなんだ?

ロボット型のタイムマシンに乗ろうとして、手を止めた。

柳之助

悠衣

悠衣

え?

柳之助

ボクは……、

悠衣

……。

柳之助

…………。

栄井

悪い、吉良。
急いでくれ……。

柳之助

わかった……。

ボクは急いでタイムマシンを動かした。
あと、数秒遅れたら、手遅れになるところだった。

ボクは23年さかのぼり

2002年に行った。

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