いいたいことは、それか?
いいたいことは、それか?
ん?
クッションが置いてあった。
何個もあったから、物置は何も壊すことはなく戻れた。
置いて出かけた
覚えがないが……。
私にとって23年前のことだし……。
チャシャが置いたのかな?
帰る時も使うから、壊れなくてよかった。
タイムマシンというか、UFO型の異世界転送機から出た。
懐かしいな……。
研究所はここに似せて作ったが、やっぱりこっちがオリジナルだ。
あ!
ただいま、チャシャ
そう言って、倉庫に降りた。
すると、チャシャが寄ってきて私の匂いを嗅いだ。
匂いはリュウだけど、
加齢臭がする。
……。
加齢臭かもしれないが、
歳を取っただけだ。
なんだ
そうだったのか。
驚かないのか?
リュウが戻ってきた。
それ以上でも以下でもない。
そうか……。
こちらの時間は、数時間過ぎた程度だろう。
なんでネコ型になってるんだ?
行く前は人型だっただろ。
リュウを匂いで探そうと思ったんだ。身長、伸びたか?
60cmくらい伸びたよ。
どうりで。
カナンたちが探してたぞ。
リュウの気配が消えたって。
そうか。
カナンたちは、どんな顔をするだろう……。
少しだけ、不安だった。
それに、これから言うことを考えると……。
気が重い。
人型になったチャシャとリビングに行くと、カナンとマギーが居た。
坊ちゃん、心配してたんですよ。
気配が急に消えちゃうから。
カナン、ただいま。
ただいま?
カナンはしばらく私を見ていた。
坊ちゃん、身長と体重が急に増えました?
急にっていうか、23年かけて増えた。
え?
異世界に行って、時間を戻して
今は31歳だ。
カナンは固まってしまった。
そういうことだったんですね。
マギーは理解したようだ。
私は向こうの世界に
行こうと思っている。
え?
そこはまだ人間が住める環境が残っていて、人間もたくさんいるんだ。
ここはもう、人間が住める環境に
戻すことは無理だろう……。
今すぐは無理でも
時間をかければ……。
きっと、気が遠くなるほどの時間が必要だろう。私はそこまで生きられない。
私がいなくなれば……、
もう、人間はいないだろう。
…………。
私は、坊ちゃんと
いつまでも一緒にいたいです。
カナンには、
やってもらいたいことがある。
なんですか?
この世界を、
アンドロイドの世界にしたいんだ。
言っている意味がわかりません。
アンドロイドが自分たちの意思で
生きていける世界。
人間の手を入れることなく
自分でメンテナンスして、
自分で増えていく。
そして、自分で自分の生きる意味を見つけるんだ。
え?
マギーとチャシャは
わかるか?
…………。
俺は持ち主の死を
体験してるからな。
そうしないと俺らに未来はないって気づいてた……。
俺らの体、変えるのか?
人間のようではないが
子孫を残せるようにする。
そして、AIを少しいじる。
性格矯正ってヤツ?
その逆だ。自分で考えて、自分で行動できるようにする。
もう、人間の言うことなど、
聞かなくてもいいんだ。
そういうのが上手い人間を見つけたんだ。
同時刻の悠真。
風邪か?
急に鼻がムズムズした。
悠真はAIを人間のようにする天才だ。
今すぐではなく
もう少し時間をかけてやる。
それまでは
ここに来るから。
私は、坊ちゃんと一緒にいたいです。
私は生きられたとしても
あと50年くらいだ。
どうして23年も時間の無駄遣いしたんですか?
無駄遣いはしていないつもりだ……。
無駄遣いですよ……。
カナンは泣きそうな顔をした……。
もし、23年、ここにいたとしても、いずれ私はいなくなる。その後、お前たちはどうするんだ?
坊ちゃんがいないのなら
止まってもいいんです。
一分でも一秒でも
坊ちゃんと一緒にいたいんです。
私は向こうの世界で、
一緒に生きていきたい人を見つけたんだ。
旦那様と奥様みたいな?
そうだよ。
じゃ、やっぱり私も
行きます。
あ、俺も行きたい。
私も……。
定員オーバーだ。
この世界の命を
終わらせたくないんだ。
キミたちにそれを
頼みたい……。
坊ちゃん……。
きっと彼らは
それを受け入れてくれると思う。
時間はかかるかもしれないけれど
あの世界の仲間もいる
きっと大丈夫だ。