佐糖 カカオ

………

樹 クルミ

貴方は、サトウカカオ?
確か失踪中じゃ……

佐糖 カカオ

良かったね。
ボクはこの世にいない、君の上に立つボクは何処にもいない。

樹 クルミ

………貴方がいなければ、って何度も思った。だけど、目標だった。目標がなくなった私はどうすればいいの?

佐糖 カカオ

心配しなくても、今の君は僕を越えられない。ただし、君は君を越えられる

樹 クルミ

…………そうかもしれませんね

三木 キミ

お前たち、何をしているんだ

榊 ミント

先生! 人の骨があります

三木 キミ

は? ただの玩具だろ。
きっと、ここを訪れた誰かが肝試しの為に用意したんだろうな

橘 ハヤト

………

三木 キミ

それより、お前たち。こんなところで遊んでいるなんて余裕だな

梓 アンズ

え? 先生が許可したんじゃないですか

三木 キミ

そうだな。
だけど危機感が全くない。
お前たちの誰も合格なんて不可能だ

橘 ハヤト

三木 キミ

橘、お前の父親では受験のお金も払えないだろうな。
叔父が生活費を払ってくれているそうだが、それで良いと思っているのか?

橘 ハヤト

………

三木 キミ

お前がいなくなれば、父親も叔父も救われるだろう

橘 ハヤト

………

三木 キミ

梓、お前の成績では両親の希望通りの学校になど進学できない

梓 アンズ

三木 キミ

どうすれば良いか? 
簡単だね。両親を絶望させればいい。
梓アンズがどうしようもない屑な子供だということを両親に示せば良い。
そうすれば、S女に行けなんて無茶なことは言わないだろう。

梓 アンズ

そんな……

橘 ハヤト

ちゃんと話せば、梓の両親はわかってくれるよ。きっと、梓が話してくれるのを待っているんだと思う

梓 アンズ

橘くん?

橘 ハヤト

そうやって、皆を狂わせていたんだね。先生が

三木 キミ

何を言って……

橘 ハヤト

そうやって、一年前も……殺し合わせたんだね

三木 キミ

だから、何を言ってるんだ

橘 ハヤト

ここにある骨は本物。
僕の姉、桜リンコだ。

笹 ササミ

私の弟の笹カケルもいるね

樹 クルミ

私の憧れだった写真家の佐糖カカオさんもいます

三木 キミ

バカバカしいな。
何を根拠に……

橘 ハヤト

本人たちが言ってますから

三木 キミ

お前たち、狂ったか?

橘 ハヤト

狂っているのは、先生だ

三木 キミ

骨はもう一つあるよね。
あれは誰だと言うんだ?

島野 メイ

私だよ

橘 ハヤト

………メイさん

神田 カナト

そう、島野メイのものだ。
彼女は事件を目撃した。
だから三木に殺された。覚えていないだろうね、従業員なんて、みんな同じような格好をしていたのだから。

三木 キミ

神田?

神田 カナト

三木の目には見えないだろうけど、ここに4人ともいるんだよ。
メイは俺の恋人だった。彼女の命を奪ったのが、まさか三木だったとはね

三木 キミ

何を言っている? 
狂ったのか? 
警察を呼ばなければならないね

神田 カナト

警察は呼んだよ。

三木 キミ

神田 カナト

一年前の失踪者らしき遺体を見つけた。
俺たち失踪者の親族や関係者たちが捜していたら見つけたってね。

俺の名前で通報したよ。
この場所と君たち全員の名前も告げてある。きっと家族にも伝わってるだろうね。
あと、去年の宿泊者リストも添えてね。
前のオーナーは誰かに脅されていて警察に提出していなかったらしいから、追加で俺がメールで送ったよ。

橘 ハヤト

その宿泊者リストに先生の名前もあるんだ。今となっては唯一の生存者。

三木 キミ

………っ

神田 カナト

もしも、俺や彼らが死んだとしても………君が俺を犯人に仕立て上げたとしても、君が容疑者リストから外れることはない。
誰かが解決してくれるだろう。
少なくとも、去年の生き残りは君だけだからね。

三木 キミ

……………ハハハハハハ。
バレちゃったなぁ。
だけど、私は先生としての役割を全うしただけだ

神田 カナト

自分が何をしたか分かっているのか?

三木 キミ

私が何をしたか?
何を言ってるの?

三木 キミ

親御さんたちは嘆いている。
落ちこぼれなアナタたちを。
だから。
殺したの!

梓 アンズ

え?

三木 キミ

感謝されるべきことじゃないの? 
不安の種を排除したのだから

橘 ハヤト

………

三木 キミ

最初に殺したのは三年前かな。
地元でも屈指の不良少年。
母親は毎日、毎日、嘆いていた。
息子の暴力に耐えなければならない日々に疲れていた

三木 キミ

だから、私は彼に近づいた。
彼と彼の親友に近づいた。
彼の親友も疲れていた。
だから、その親友も終わらせてあげようっ、て私は思ったの。
優しいと思わない?
親友の手で彼は呆気なく死んでしまった。親友も一緒に死んでしまった。
………彼の親は喜んだの。
誰かはわからないけど、ありがとうって

神田 カナト

…………

三木 キミ

私は塾講師になって『ありがとう』なんて言って貰ったことがなかった。
だから嬉しかった。
落ちこぼれを消せば、親に感謝されるのだと、私は理解したの

三木 キミ

だから、アナタたちも死ねばいい。そうすれば、少なくともアナタたちの親に感謝されるのだからっ

三木 キミ

さよなら

梓 アンズ

……っ

橘 ハヤト

pagetop