この記憶は、波汰の大事な記憶なの?

そう。
俺の記憶。まあ、想像通りだとは思うけどね

波汰、ほんとうに私の事、大好きだったんだね

その発言はちょっと傷付くな

波汰

なに?

波汰の、この記憶を食べちゃったら波汰は、

あはは。
流石に、馬鹿じゃないか。

これは、いらない

好き嫌いは、良くないよ

だって、こんなの食べたら、

波汰が勝手にわたしのこと、忘れる

そうしたら、海はずっと俺のことを思い出す

き、き、きっ、きっと忘れれる。

無理だよ。
俺が海を忘れても、海が俺を忘れないようにさせる策は立ててあるから。

波汰。結構やばい子なんだね

ロリコンだからね

それちょっとちがう。

ねえ、うみちゃん。

何、波汰

今、かなしんでくれてる?

ひどい子だね。

よかった。

俺は海を忘れる。だから、しあわせにはできない。

でも、海にずっと続く哀しみを俺があげられるならば、海はずっと生きて居られるよね

もう、泣かなくて良いんだ。

波汰は、本当にばかな子だね

うん。
俺は、自己満足で、海ちゃんを傷付けたかも知れない。

実際、どうかな?

それが、波汰の悲しみなら、わたしは受け入れる。それだけ。

哀しみを、忘れさせること。
それが、生きている意味だから。

ああ、これは完全に振られちゃったかー。

ねえ、海ちゃん。

どうして、君はかなしみを食べて生きようとするの?

わたしが役に立ってるって思えるから

じゃあ、波汰はどうして生きてるの?

――そっか。
うみちゃんのしあわせは、そういう形なのか

そうだよ。

でもね、やっぱりかなしいのを食べるのはかなしい。

だから、波汰には傍にいて欲しい。
捌け口になって欲しいの。

ああ、完敗してる。仕方ない。

うみちゃんのしあわせが、それならば、従うしかないじゃないか。

うん。ちょっと変かもしれないけど
わたしのしあわせはこれで合ってるよ

あー。
師団長に何食わぬ顔で、また挨拶に行かないといけないの凄く面倒。

大丈夫。
波汰がこどもなの、みんな知ってるから

うみちゃんが、大人で自己犠牲が過ぎるんだよ

役に立つことは、自己犠牲と類義語だよ?

俺は、他人を犠牲にすることが大好きなこどもだから分からない。

けど、うみちゃんが、そうなら。
そのしあわせは、そっとしておくよ

波汰らしいね。

いつもありがとう。

はろー。Hallo。波浪。

聞こえていますか、うみです。
うん、かなしみのうみです。


わたしの、かなしみについて、
波汰くんはあれこれ考えちゃったみたいだけど、



わたしのかなしみは
だれかが、かなしみを忘れたってことだから。


わたしのかなしみは
だれかの役に立ってるってことだから。



わたしのかなしみは、
しあわせなんだと思うの。


海ちゃんにとって、かなしみは――

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