第十二駅 魂の重さ
























うこばっくん

ようやく幼子の魂が手に入りましたね。

うこばっくん

常人の魂だと、図体ばかり大きくて
価値が少なく、手間ばかりかかります。

うこばっくん

えーっと、先程は幼子1人、常人2人だから12魂ですね……。















うこばっくん

んんー?








































うこばっくん

1、2、3……10、11。
11魂分しか駅に配られてないぞ……
どうしてだ……?





















家臣の低級な使い魔に喰われる
帝王などおらぬ。
そういうことだ。






うこばっくん

あ……貴方様は……。








遊びが過ぎるぞ、ウコバクよ。






うこばっくん

も、申し訳ありません!

もう面倒だ。
一気に決めてしまえ。

うこばっくん

いかようにして決めましょうか?

そうだな。

『天国と地獄』
これにしろ。

うこばっくん

か、かしこまりました!



































大毅

クソっ!
俺のせいだ!

大毅

外に出ること自体が
ダメだったのに……。
なぜ気づかなかったんだ……。

香織

……大毅さん……。

美香

いいえ。有力情報に
固執していたのは私よ……。
あなた1人で背負うことは無いわ。

柚葉

ねぇ、大毅……。

大毅

……。

柚葉

速度が上がってきたら
ドアが開いているここは危ないわ。
みんなを連れて前の車両に行きましょう。

大毅

……そう……だな……。

ユウジ

……。















生き残った生け贄らは



5両目から4両目へ移る。







俺は他の生け贄の後ろを



力なく歩き5両目を出ようとした。

大毅

ん?

大毅

アンタは行かないのか?

ん?

あぁ……。

大毅

さっきみたいに
猛スピードで急ブレーキされると
開いているそこのドアから
はじき出されるかもしれないぞ。

そうだなぁ……。
だけど……。

俺はもう
何も頑張りたくないだけだ。

こうやって、目を閉じ寝たまま
いつの間にかに生涯を終える。

悪くない話だろ?

大毅

いや、俺には分からん話だ。
だが、アンタが残りたいと言うなら
それは仕方ないことだ。

お、兄ちゃん、物分りいいねぇ。

まぁ、せいぜい頑張ってくれよ。

さっきのことは忘れてさ。

大毅

あぁ、ありがとう。
激励と受け取っておくよ。

大毅

アンタ、名前を教えてくれないか?

俺の名前なんて知ってどうするんだ?

大毅

なんというか……。
この列車であった人を
忘れたくないだけだ。

変なやつだなぁ……。

鮎川 夏生

鮎川。
鮎川 夏生
《あゆかわ なつお》だよ

大毅

鮎川か……。
俺は佐山 大毅だ。

鮎川 夏生

じゃあな。











4両目に戻ると各々の生け贄は



落胆し座席に座っていた。




美香

……。

香織

……。

……。




力ない表情。



言葉を発する気力もない。



まるで既に魂を抜かれたかのようだ。









ユウジ

もう……ダメだッ!




ユウジが怒りを露わにして



ドアを足蹴にする。




大毅

落ち着けよ、ユウジ。
お前らしくないぞ。

大毅

俺達はまだ死んだわけじゃないんだ。

大毅

俺達は……な……。

ユウジ

ハン!
これだから理解力のない奴は
イヤなんだよ。

大毅

悪いな、そればかりは認めるわ。

ユウジ

認めるとか認めないとか
どうでもいい!!
お前は全車両を見て
何も思わなかったのか?

大毅

なにって……?

ユウジ

必要な生け贄は何人だ?
車内にいる人間は何人だ?

大毅

え?

ユウジ

俺達はもう全員死ぬしか無いんだ!








器川を通過します。

紙面情報が変わります。








大毅

また変わったのか?

美香

でも……。

美香

また、からかわれるだけなら
やるだけ無駄よね……。

柚葉

……。

……。













\ピンポンパンポーン/

うこばっくん

Hey!生け贄共!
ハッピーかい!

大毅

んなわけねーだろ……。

うこばっくん

暗い、暗いよ君達。
そんなんじゃ幸運の女神は
逃げてく一方だぜ!

香織

ここに女神なんて元々いないでしょ?

うこばっくん

さて、芳しくない状況に
気づいた方もいるかもしれません。

うこばっくん

そこで、運営側からサービス!

逆転チャンスありの特別イベントを島京駅にて行います。

うこばっくん

なんと、このイベントをクリア出来た人は全員魂を捧げずにゲームを終えることができます!

美香

今さらそんな話を信じろっていうの?

うこばっくん

別に信じなくてもいいですよ。
このままでも我々に損はありませんし。

美香

……確かに……そうね。

うこばっくん

特別イベントのヒントは先程出しました。頑張って探して下さいね!

うこばっくん

それでは、島京駅まで
しばしのお別れです。
アディオス・アミーゴ!

間もなく海亀町〜
海亀町〜







大毅

マズイぞ、早くヒントを探さないと。

三つのゆりかごが作る蜂は
海亀にて闇を見る。

闇の深淵は一縷の快楽。

川魚は闇の中、海へと帰る。

改めて数えなおせ。
今いるのはどこだ?






美香
柚葉

……私は闇なんてイヤ……。

大毅

これまでの傾向だと『ゆりかご』はおそらく車両を表している。
おそらく、3つのゆりかごは3両の車両だ。

香織

大毅さん、スゴイ!

柚葉

ムスッ

大毅

だが蜂を作るってなんだ?

柚葉

養蜂よ、養蜂!
蜂蜜取るのよ!

大毅

おいおい、どうした柚葉?

柚葉

なんでもないの!








ふくれっ面の少女とのやり取りの最中




列車は次第に速度を落とす。





そして……。


海亀町〜
海亀町〜

大毅

いかん、着いちまった!




























5両目で起こる叫び声。




















4両目の生け贄らの視線が









貫通扉に集まる。














それは異常に暗い5両目の車内。





大毅

おい、なんで5両目はあんなに真っ暗なんだ?

柚葉

闇……だわ……。

鮎川 夏生

うぅ、目が目が……。




黒いモヤが充満した5両目の中




目を抑えた男がふらふらと



動きまわる。


大毅

鮎川ァ!!




俺は鮎川を助けようとする。



しかし……

大毅

うっ!扉が開かねぇ!

鮎川 夏生

あぁあぁ……



目を抑えた男は



ポッカリと空いた悪魔の口へと



次第に吸い込まれていく


大毅

ダメだ!鮎川ァ!
そっちはドアだ!!!









鮎川 夏生

……う。

鮎川 夏生

ワァァァ!!!































降車拒否








つづく

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