第十一駅 兆候













ユウジ

いそげ、こっちだ!

美香

頑張って、香織!

香織

……うん。

なんで、この歳で走らないといけないのかしら……

柚葉

大毅、大丈夫?

大毅

あぁ、体力だけなら任せろ。

拓海

はぁはぁ

タッくん、もう少しだからね













ユウジ
ユウジ

どうもおかしい……。
アイツ、絶対に悪運やカンだけじゃない……。

ユウジ

アイツがいなければ……、今頃俺は……。





ユウジは開いたドアを目指し、



先頭を走りながら



考えを巡らせる。





ユウジ

!!!

ユウジ

ニヤリ。





真っ先に旧9号車に到達したユウジ。




ユウジ

ここだ。

なんだなんだ?ゾロゾロ来たなぁ。

美香

え……これって……。

香織

む、無理よ、こんなの。








大毅

どうした?まだ外に出ないのか?

ユウジ

いや、ちょっとこれを見てみろ。

俺は開いたドアから下を見る。

大毅

結構高いな。
まず一番にあの親子を降ろさなきゃならないが……無理か?




ヌエ42は一般の車両より車高が高いようだ。


ボク、手伝います。このくらいの高さなら簡単に飛び降りれます。



その時、1人の身軽そうな少年が



斥候を名乗りでた。




大毅

そうか、助かる。

ユウジ

なっ!?

大毅

どうした、ユウジ。

ユウジ

い、いや……



身軽そうな少年は




ドアから線路脇へと飛び降りる。






……が、想像より衝撃が大きかったのか




しばらく蹲る。







ててて……。
ジーンときた。

いいですよ!

大毅

よし、じゃあまず母親に先に降りてもらおう。
下からも支えてやってくれ。

はい。





出口際に立つ母親。



……ひっ……。た、高い……。

でも、
わ、私が降りないと拓海の命が……。

拓海

はぁはぁはぁ

行きます!

大毅

おし、じゃあこのまま
俺の手につかまりながら
降りてくれ。




俺につかまりながら、線路脇へと降りる母親。



しばらく降りると、下の少年が支えられたのか



負担が軽くなる。





ふぅ、なんとか降りれた。

大毅

おーい、子供を下ろすぞ。




続けて俺は腹ばいになりながら



子供を腕力でドアの外へ下ろす。







俺1人では落ちてしまうが、



脚をユウジたちが支えてくれるので



多少無理な体制でも耐えられる。







子供、降りれました!









大毅

次は俺達だな……。

ユウジ

大毅、お前も下で降りるヤツの補助してくれ。

大毅

わかった。

ユウジ

ニヤリ




俺は、ドア脇の鉄棒につかまりながら



体を列車の外に出そうとした。








……ところが。






柚葉

ダメ!大毅!降りないで!!




柚葉が俺の体にしがみついて止めた。



ユウジ

!!

大毅

どうした、柚葉。

柚葉

ダメ……、ダメなの……。
お願い。





無我夢中の柚葉の静止に戸惑う俺。





大毅

!!!

ユウジ

!!!

美香

!!!

香織

!!!



悲鳴に気づき俺が振り返った時、




先に降りた3人は




既にバケモノの口の中にいた。


助け……










\ピンポンパンポーン/




車内アナウンスのチャイムが鳴る。



うこばっくん

度々失礼します。
運転手兼車用の
うこばっくんです。

うこばっくん

再度繰り返します。
ゲーム中に車外に出ると
生け贄になります。
気をつけて下さい。


大毅

最後尾の情報は……。




酷く憤った俺は声を荒げる。


大毅

最後尾にある情報は有力情報じゃなかったのか……?

うこばっくん

最後尾の情報は『全部有力情報』ってどこかに書いてありましたか?

うこばっくん

それに有力情報が有用とも限りませんよ!ケケケッ!









言葉を失う生け贄ら。







うこばっくん

さて、線路上のネコの安全が
確認されましたので発車します。













再び車体を揺らし前へと進む山脚線。














希望から絶望へ


転げ落ちた生け贄らの表情は


もはや力ない。









このまま順に魂を奪われるのを待つばかりか。












ユウジ

あの女……。

ユウジ

間違いない……見ていたな……。



























降車拒否







つづく

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