僕は梓が苦手だった。

彼女と僕は育った環境が違いすぎる。

裕福な彼女とそうでない僕。

そんな僕たちの家が隣同士だなんて、






神様は意地悪だ。

梓の両親は仲が良い。

いつも一緒に微笑み合っている。

僕の両親は仲が悪かった。

小学校の卒業式に離婚。

なんで、

わざわざ、

そんな日に? 

僕と姉ちゃんは理解できなかった。

大人の都合でそれぞれ引き取られることとなった

???

わたし、アイドルになって一杯稼ぐから。そうしたら、また一緒に暮らせるよ

橘 ハヤト

そう言っていた姉ちゃんは、何処にもいない。1年前に失踪してしまった

嫉妬なんて抱きたくないのに、

自然と僕は彼女に嫉妬する。

当然のように綺麗な服を着て、

母親に微笑まれながら現れる彼女のことを

梓 アンズ

いってきまーす

気を付けてね

ZZZZZ

橘 ハヤト

……………

橘 ハヤト

おじさん、おかえりなさい。
行ってきます。
それと、父さんのことお願いします。

ああ

僕の朝。

酔いつぶれて寝ている父親の横を素通り。

同居している叔父に挨拶をする。

生活費を工面してくれるのは叔父だった。

そんな叔父に罪悪感を抱きながら僕は足早に家を出る。

存在感を消しながら僕は歩き出した。

梓 アンズ

? たちばなくーーーーーん

母親に見送られて家を出る梓は僕に気付くと、
駆け寄ってくる。

やめてくれ、

そんな笑顔を向けられると苦しくなる。

僕はどうにか笑顔で返す。

ここで暴力に出ればあの父親と同じになってしまう。

僕はあんな奴とは違うんだ

橘 ハヤト

僕は自分が不幸であることしか考えていなかった。お金持ちだから幸せなんだと思っていた。だけど、違っていたんだね……梓……

橘 ハヤト

周囲の期待に押しつぶされそうになりながら、いつも僕に笑顔を向けてくれた。他のクラスメイトが僕を遠巻きに見ても、梓は僕の手を引っ張ってクラスメイトの輪の中にいれてくれた

橘 ハヤト

僕は君にこんなにも嫉妬していたのに、君はそんな僕の側にいてくれてたんだね。

橘 ハヤト

梓が僕と一緒に死のうとしたのも、僕以外の皆を殺そうとしたことも、僕を一人にしないように、梓も一人にならないように。そうだね、二人一緒なら一人ぼっちじゃない。でも、それは駄目なんだよ………

302号室

橘 ハヤト

この部屋だけ窓が開いている……僕が確認したいことはコレじゃないんだ

橘 ハヤト

……ベランダは繋がっている。仕切りはあるけれど、簡単に外せる

???

落ちないようにな

橘 ハヤト

君は?

???

地縛霊ってところ。とりあえず時間がないから、早く見て。今なら、その部屋には誰もいないからさ

橘 ハヤト

あ、ああ

橘 ハヤト

………窓はテープで固定されている。
思っていた以上に頼りないな。
だけど、これだったら誰にでも固定できる

橘 ハヤト

そして、崖の下。
あの時は落ちたら死ぬだろうなって思っただけだった。
明るい所で見ると、そうでもないようだ。
少し危険だけれど、行けない場所ではない

???

………

橘 ハヤト

それで。君は?

???

地縛霊だって言っても驚かないんだね

橘 ハヤト

今更、驚かないよ

???

それじゃ、名乗ろうかな。俺の名前はカケル

橘 ハヤト

……

カケル

昨日はゲームに付き合ってありがとう

橘 ハヤト

……ちょっと待って。昨日のゲームって

カケル

あの時に話したこと、忘れてない?

橘 ハヤト

……覚えているよ

橘 ハヤト

君が幽霊だとしたら、僕は幽霊とゲームをしていたってこと?

カケル

そういうことになるね

カケル

そうだ、ハヤト。もう二つ、お願いしても良いかな

橘 ハヤト

カケル

君の部屋と、隣のカカオの部屋を交換してほしい

橘 ハヤト

え?

カケル

そうすれば、君たちの知りたいことがわかると思うよ

カケル

もう一つは、あの人。えっと……神田さん? あの人に宿泊者リストを見るようにメッセージを残して欲しい。今年と、一年前のね

橘 ハヤト

どうせ、鍵の確認にここに来るんだよ。その時に話せば?

カケル

俺の存在が薄すぎて彼には見えないらしいんだよ

橘 ハヤト

どうして、僕には見えるの?

カケル

ハヤトは俺と同類。存在感の薄い人間だからかな。薄い者同士、惹かれ合うみたいだよ。

橘 ハヤト

それ、貶してないか?

橘 ハヤト

彼と部屋を交換するタイミングは夜で良いよね。それと、神田さんへのメッセージはここに書いておこう

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