ーーモーヌスーン・神木前
ーーモーヌスーン・神木前
ルフさん!!そこでボディーブローです!!
お、おう!!
お納めくださいいいいいい!!!!
・・・・・・なにこれ
俺が聞きたい。
アルト、解説。
いやまって俺に振られても困る!!
僕は、勝手に約束を取り付け、告白を明日に控えたルフさんに最後の手ほどきをしていた。大丈夫、これさえやれればなんとかなるって!!
・・・・アルマ?何してんの?
あ、シルフ!
あのね、ルフさん、プロレス技に詳しいんだって!だから、それにたとえたらやりやすいかなーって思って・・・
わかりにくいわ!!
ええええ嘘!?ルフさん!!
あー・・・その・・・
すまん・・・わかりづらかった・・・
ほらみろ
うええええ!?ごめんなさい!!!
完璧な指導だと思ったんだけどなぁ・・・どこで間違えたんだろう?
大体今のどんなシチュエーションだったのよ・・・「お納めください」って・・・
え、えーっと・・・
ドキッ!お父さんに直撃、娘さんを僕にください!!~お土産をそえて~
売れないテレビ番組みたいな例えだな・・・
あー・・・お土産を渡すときのね・・・
最初の「ドキッ!」っていらなかったと思うわ・・・
アルマ、そのネタもう世間では古いよ。
ひどい言われようだな・・・
あ、え、ええっと・・・でも、勢いが大事ってことは伝わった!!
無理にフォローしなくていいと思うぜ。
告白明日だもんな・・・なんて言うか・・・急すぎたかな?
いくら勢い大事って言っても・・・練習一日じゃどうにもならないと思うぞ?
いや、それだけはいい采配だったと思う
どうして?まだあんなにぐだぐだなのに・・・
告白って、「やるぞ」って決意した直後にやるのが一番いいんだ。時間をおけば置くほど、失敗しやすくなる。それに・・・
ルフさん、村長の息子ってことは、次期村長ってことですよね?それがどういう事態を招くか・・・
・・・・・・あー・・・そういうこと・・・
ああ、なるほど・・・それは急いだ方が良いかもね・・・
・・・・・・?????
・・・婚約者を決めるときが近いってことか
う・・・
婚約者!?え、どういうこと!?
そっか、妖精の森では、長は世襲制じゃなんだっけ・・・
モーヌスーンでは、村長は世襲制でな。代々「モーヌスーン」の姓を持つ第一子が村長を継ぐことになる。跡継ぎを生むために、結婚適齢期になると婚約者探しが活発になる・・・はずなんだが。そこんとこどうなんです?
・・・・・・ご察しの通りだ・・・最近は毎日お見合いを勧められるし・・・
この前は、同性愛者なんじゃないかって疑われたほどだ・・・
女っ気なさそうだもんなー、ルックスはいいからもっと自信持ちゃあ良いのに・・・
や、やめてくださいよ・・・そんな心にもないこと・・・
うーん・・・とりあえずこれを直せれば良いんだけどなぁ・・・何かいい手はないかな?
・・・・・・・・・・
ルフさん、鏡とか持ってます?
は・・・?あ、ああ・・・持ってるが・・・
よし、じゃあ次はそれです!!まずは自分を好きになりましょう!!
へあ!?
お、そりゃいいな♪
がんばれよ、ルフ?
そ、そんな・・・
シープラさんに告るんでしょう?がんばってください!
それから僕たちは、ルフさんに鏡を見せてひたすら褒めると言う特訓をしたんだけど・・・なんというか、効果は薄めだ。ルフさんがもっと自分に自信を持てるようになる日は遠いかもしれない。
そして、ついに約束の時間・・・でも、どんなに待ってもシープラさんが来ることはなかったーー。
ーーモーヌスーン・待ち合わせ場所
・・・来ないなぁ・・・
どうしたんだろう?約束破るような人には見えなかったけど・・・
忘れてる・・・とか?
アルマ、時間間違えて伝えてないよな?
そんなことしてないよ!こんな大事なこと・・・
二人の邪魔にならないようにと、僕らは近くの茂みに身を潜めていた。シープラさんが来る様子は、今のところない・・・探しに行こうかと腰を浮かせたとき・・・視界の端で、何かが動いたのを捕らえた。もしかして・・・
・・・僕、ちょっと探してくる!
ちょっ、アルマ!?
みんなはそこで待ってて!ルフさんに事情説明しておいて!!
ふえ・・・?え、ええ・・・
何かがいた方向に向かい、音と勘を頼りに森を進む・・・すると、案の定そこにはシープラさんがいた・・・でも、なんか様子がおかしい。
・・・シープラさん・・・?
ひゃわっ・・・!あ、アルマくん・・・
シープラさんは、なぜか泣いていた。何かあったのかと問いただすと、ぽつぽつと口を開いてくれた。
わ、私ぃ、聞いちゃったんですぅ・・・ルフくん、婚約者を決めたそうなんですぅ・・・
・・・・・・
それって・・・シープラさんのことじゃ・・・
私ぃ、ほんとはぁ、ルフくんのことがぁ・・・そ、そのぉ・・・す、好き、でしてぇ・・・
は、はい・・・
知ってた・・・とは言えない雰囲気だなぁ・・・
私ぃ、ルフくんに呼ばれてたんですぅ・・・でもぉ・・・なんかぁ、ルフくんの顔見たらぁ・・・悲しく、なっちゃってぇ・・・!!
本当はぁ、私の気持ちに気づいててぇ・・・もう近づくなってぇ、本気で言われちゃうんじゃないかって・・・思ってぇ・・・!!
も、ものすごい勘違いされてる・・・!!ここはなんとか・・・とりあえず、泣き止ませないと・・・!!
そ、そんなことないですよ!!きっと、いい知らせに決まってます!!!
ううううう・・・で、でもぉ・・・!!
僕の勘って良く当たるんですよ!!だから、大丈夫です!!
ほ、本当ですかぁ・・・?
本当です!!
だから、ルフさんのところに行きましょう?きっと、待っていますよ
・・・はい・・・あ、あのぉ・・・
はい、なんですか?
アルマさんもぉ、一緒に来てくれませんかぁ・・・?一人だとぉ、怖くてぇ・・・
うーん・・・当初の予定とは違っちゃうけど・・・このままだといけなさそうだし・・・
わかりました。お供しますよ!
ありがとうございますぅ・・・!
あ、そうだぁ、約束おくれちゃったのでぇ、お詫びにベリーを摘んでいきたいのですがぁ、いいですかぁ?
ええ、かまいませんよ。
それから僕らは、そこから少し離れたところにあるベリー畑に寄っていった。思ったより時間がかかってしまい、日が傾き始めていた。
うわ・・・結構時間経っちゃいましたね・・・
本当ですねぇ・・・まだ待っててくれてるかなぁ・・・
きっと大丈夫ですよ!!さ、行きましょう!
視界が悪くなった林道を先導し、歩き始めたときだった・・・
・・・・・?
・・・・?なんの音でしょうかぁ?
あんまり遅いから探しに来たのかな・・・?
全く、心配性だなぁ、シルフは・・・
探しに来たんですかね?声かけてみましょうか。
お、遅くなってごめんなさいぃ・・・!そ、そのぉ・・・き、緊張しちゃってぇ・・・!!
ルフさーん?いるんですかー?
音が聞こえた辺りに声をかける・・・しかし、反応は返ってこない。おかしく思い、近づこうとしたそのときーー
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
ッ!!!
きゃああああああっ!!!??
ケルブル・・・!?どうしてこんなところに!!
物音や気配から、多分これは群れだ・・・数にもよるけど、多分僕一人じゃ裁ききれない・・・!!
シープラさん、走ってください!!
は、はいぃぃ!!
僕はとっさにシープラさんの手を引き走り出したーー。
ーーモーヌスーン・待ち合わせ場所
・・・・・・遅いなぁ・・・
何かあったのかしら?探しに行く?
・・・・・・そうだな。俺行ってくるから、待っててくれないか?
う、うん・・・前みたいにすれ違いになると困るし・・・頼めるか?
おう、任せろ!
・・・・・・いや待て。俺も行く。
へ・・・?
あ、もしかして心配してくれてる?
大丈夫だ、俺そこそこ強いし・・・
まあ、それもあるが・・・一人で探しに行って、戻ってこなかったら困るだろ?
どういうこと?
現にアルマが一人で行って戻ってきてないだろ?
あー、なるほどね♪
でも・・・ここに何か来たら?二人とも戦えるの?
ここは浅いとこだかんな。大丈夫大丈夫♪
・・・・・・・・・・・・・・
わかった。じゃ、行こうか。
おう♪
ってことだから、留守番と、ルフのことよろしくな!
うん、わかった。気をつけてな
おうよ!
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・で?何か話があるんじゃないのか?
ああ、まあな。察しが良くて助かるぜ。
アルマのこと?
ああ。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・何も話すことはない。
ああそうかい。相当根深い何かがあるとみたんだがな?
お前・・・
ああ・・・そっか。知ってて当然なんだな、お前は。
・・・・どういう意味だ?
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・取引、しないか?
取引・・・?
簡単な取引だ。俺はお前に情報を提供する。俺の目的も、アルマの正体も、どうして俺がここにいるのかも。だから・・・
俺たちには一切手出しするな。守れないのなら・・・ここで殺す。
・・・・・・わかった。呑む。
ふうん・・・案外素直だな。俺の知ってる貴族は、もっと融通の利かないクズばかりだったんだが。
そりゃどうも。でも、俺はもう貴族じゃない。
できれば、そういう発言も控えてくれると嬉しいな?
わかった。じゃ、お互い条件を呑んだってことで・・・
これからよろしくな。ネプト・シャーウッド・・・いや・・・
ネプテューン・トワイライト