タツキ

ミユ……一緒に住まない?

 ちょっと背伸びをして、記念日を祝うために夜景の見えるレストランでフルコースを食べた後、テーブルに座ったまま綺麗な夜景を眺めていたら突然、タツキが私の目を見てそう言った。



 付き合い始めて何年経ったかすぐに思い出せないくらい、私たち二人はたくさんの時間を共にしてきた。



 結婚という言葉を、意識していないと言えばウソになる。周りの友達だって、結婚第一波とかいうのが来ているのかぽつぽつと結婚し始めたし、早熟な中学の友達にはもう子どもだっている。友達と集まった時だって、いつも話題に上るのは仕事、そして結婚の話。





 いつかは私もタツキと――、そう願っていたことは、確かな事実だった。



 だからと言って、結婚ではなくて同棲だけれど、なんの前触れもなくこんな風に切り出されるとは思っていなかったので、思わずぽかんとした顔でタツキを見てしまった。

タツキ

ハトが豆鉄砲くらったような顔、してる

ミユ

いや、だ、だって……!いきなりすぎて……!これが、青天の霹靂ってやつ?



 私がそんな風に狼狽えていたら、タツキは目じりを下げてククっと笑った。

タツキ

ねえ、俺今結構勇気だして言ったんだけど……答えは?

ミユ

も、もちろん!



 びっくりしすぎて、返事をするのを忘れていたけれど、私の答えは一つしかなかった。

 驚きのあとから、嬉しさがじわじわとこみ上げてきて、目いっぱい口角を上げてしまった。

タツキ

よかった


 タツキは息を大きく吐きながらそう言って、テーブルに突っ伏した。

タツキ

断られたらどうしようって思ってた

ミユ

断るわけ、ないじゃん



 大好きなタツキとご飯を一緒に食べて、おいしい瞬間を分け合える。一日の最初に目を合わせることができて、一日の最後に言葉を交わせる。

 そんなに幸せなことを、なんで断るなんて考えるのだろう。そんなこと、するわけがないのに。

タツキ

いや、わかんないよ?絶対なんて、この世に存在しないんだから

ミユ

私がタツキを好きなことは、きっと、一生変わらないよ

タツキ

……それ、反則。こんなテーブルが邪魔してなかったら今すぐ抱きしめるのに


 タツキの言葉に私が顔を赤くしていたら、タツキも嬉しそうにはにかんでいた。

5通目 実家の卒業アルバムの間(2)

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