タツキと一緒に住み始めるまで、私はずっと実家暮らしだった。
別に、仕事場である小学校から電車を使って数駅でそこまで遠いというわけではなかったけれど、タツキが同棲しようと言ってくれたのをきっかけに、家を出たのだった。
タツキと一緒に住み始めるまで、私はずっと実家暮らしだった。
別に、仕事場である小学校から電車を使って数駅でそこまで遠いというわけではなかったけれど、タツキが同棲しようと言ってくれたのをきっかけに、家を出たのだった。
ただいま
久しぶりの実家だった。
別に、帰れない距離ではない。いつでも帰ってこられる、そう思うと、なかなか帰らなくなるのはなぜだろうか。
おかえり
持っていた合い鍵を使って入ろうと思ったら、連絡しておいたからか鍵はかかっておらず、そのままドアを開けた。するとパタパタとスリッパの音がして、母がリビングから出てきた。
母は、タツキが死んでしまったことを聞いて、父と一緒にタツキと住んでいた家へ一度訪ねてきて夕ご飯を作ってくれた。その時、ご飯を食べる気は全く起きなかった。けれど、母が心配して作ってくれたのだからと、無理やり胃に押し込んで食べたのだった。
ミユ
私を見ながら母はポツリとつぶやいて、今にも泣きそうな顔をした。
……なんで、みんなそんなに簡単にタツキの死を受け入れられるのだろう。
私はまだタツキがいなくなってしまったことを信じることなんてできないのに。
全部の手紙を読み切ったあと、タツキが「全部ドッキリでしたー!」っていつものように目じりを下げ、私の大好きないたずらな笑みを浮かべて出てきてくれることを、未だに期待しているのに。
とりあえず、夕ご飯の準備できてるから。一緒に食べましょう
いつものピンク色のスリッパに履き替えると、母は私の背中を押して、リビングへと誘った。
あー。緊張する
うちにご飯食べに来たこと、あるじゃない
それとこれとは別!
スーツをびしっと身にまとったタツキと駅前で待ち合わせをして、私たちはとある場所へと向かっていた。
だってあの時はお父さんもいらっしゃらなかったし……
いらっしゃるとか……そんなに尊敬語を使わなくても
タツキの言葉から、タツキが本当に緊張していることが分かって、少しだけ笑ってしまった。
そう、今から私たちは、私の実家へ行くのだ。同棲の許可をもらうために。