時計のかわいらしいメロディーを聞いて、ハッと我に返る。
待ち合わせの時によく流れていたこの優しい柔らかな音。
時計のかわいらしいメロディーを聞いて、ハッと我に返る。
待ち合わせの時によく流れていたこの優しい柔らかな音。
この時計の音、好きなんだよな
タツキの言葉が、頭の中にぱっと甦った。
もしかして……
私は立ち上がり、柱時計の方へと向かう。
ガラス越しに内部の構造が見えるようになっているその時計を、そのガラスの小窓から注意深く覗いてみる。
すると、中に見覚えのある、おそらく空色の封筒の一部であろうものが見えた。
取っ手を持ってその小窓をそっと開けると、やはりタツキの手紙だった。
ミユへ
3通目は、マミのカフェでした。
マミとミユ、仲よかったよな。
高校の時からケンカしたらよく助けてもらってさ。マミがいなかったら俺らが今一緒にいることはなかったかもしれないなって思うくらい、お世話になったよね。
ミユもマミになにかあったら、俺のことなんか放ってマミのところに行っちゃったりしてさ。ちょっとうらやましいと思うときもあったなあ。
でも、そんなミユの友達を大切にできるところも、俺は好きだよ。
あと、甘いものを食べてるミユの幸せそうな顔も大好き。笑
じゃあ、また次のところでね。
タツキ
タツキの手紙を読み終わって鞄にしまい、マミの作ったケーキを一口食べた。
もう、苺を奪ってきた私の大好きないたずらっこはいない。
だからクリームの部分から食べると、ふわっと甘さが口の中に広がった。でもなんだかさみしくなって真っ赤な苺を食べたら、思いのほか酸っぱかった。
ミユ
マミが来て、私の向かいに座った。
あ、マミ。ケーキ、今日もおいしいね
ありがとう
マミのケーキはおいしい。だけど、タツキと分け合って食べたときはもっとおいしかった。確かに、もっともっとおいしかった。
そんなことを考えながらケーキを見つめていたら、マミが私に声を掛けた。
ミユ……バカなこと考えないでよ?
なに?バカなことって?
……なんでもない
私がそう言うと、マミは悲しそうなさびしそうな表情をしてかすかに微笑む。
……伝言。“ミユの親思いなところが好きだ。俺が一番勇気を出した場所で会おう”だって
また、タツキが残してくれた言葉を人伝いに聞く。
私は、タツキの言葉を反芻して、それがどこなのか思いを巡らせていた。