キスをした直後、
私の頭の中には翔くんが経験したという
ループされた日々の記憶が
流れ込んできた。



そっか、翔くんは失敗するたびに
次の5月9日にはその対策をして、
色々と動いてくれていたんだね……。
 
 

間部 翔

……やった、
ミコと……キスし――

間部 翔

…………。

 
 
フッと翔くんの手から力が抜けた。

言葉は途中で途切れ、
目を瞑ったまま瞬きもしない。
 
 

落合 美琴

翔……くん?

間部 翔

…………。

 
 
穏やかで満足げな翔くんの顔。
でも呼吸は止まり、
反応が全く返ってこない。



まさか……死んじゃった……の……?
嘘……だよね……?



私の心臓は破裂しそうなくらいに速まった。

そして締め付けられるような感覚と
大きな不安感に包まれる。
 
 
 
 
 

落合 美琴

翔くん!
返事をしてよっ!
翔く~~~んっ!!!

 
 
 
 
 
何度も翔くんの体を揺さぶった。
でも依然として沈黙したまま――。

もう二度と笑いかけてくれない。
話もできない。


それを再認識させられた私は、
体に覆い被さるようにして泣き崩れた。
涙が止まらなかった。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
そうか……私はこれと同じような想いを
翔くんやお父さん、お母さんに
させようとしていたんだ……。

特に翔くんに対しては何度も……。


 
それなのに翔くんはそれを乗り越えて、
自分の命を賭けてまで
私を救おうとしてくれた。




――謝らないといけないのは、私の方だ!
 
 

 
 
 

落合 美琴

ねぇ、謝らせてよっ、翔くん!
起きて『嘘だよ、バカ』って
小突いてよ!

間部 翔

…………。

落合 美琴

こんなの、嫌だよっ!
翔くんっ! 翔くんっ!!

 
 
どれだけ呼びかけても
翔くんが目を開けてくれることはなかった。



私は今まで生きてきた中で最大の後悔をした。

ううん、これ以上の後悔は
これからも経験しないかもしれない。




くっ……神様はどうして私にばかり、
こんな試練を与え――
 
 

落合 美琴

っ!? そうだ!

 
 
私は『あること』を思いつき、
それに最後の望みをかけることにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私は翔くんの神社へやってきた。
ここの景色は昔からずっと変わっていない。


小学校に入る前は毎日のように
境内で翔くんと遊び回っていたなぁ。

あの日々がすごく懐かしい……。
 
 

落合 美琴

って、懐かしんでいる
場合じゃなかった。

 
 

 
 
 
私はお社の前に移動し、
そこで目を閉じて想いを強く念じる。



――神様、どうか私の願いを聞いてください。



翔くんを救うため、
私にもループさせてください。

今まで私は神様たちの試練に耐えてきました。
だから1回くらい、
私の願いを聞き届けてください。



私の大好きな人を助けるためなら、
この命を削っても構いません。

そして翔くんと一緒に一生、
神様たちを崇めることをお約束します。
その後の試練も耐えてみせます。




だから……だからどうか奇跡を……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

5回目(4) 翔の命は尽きて……

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