失われた命を取り戻すことは
神様にもできない。

命はそれだけ重いものなんだ……。
 
 

落合 美琴

そっか……。
神様にもできないことが
あったんだね。

間部 翔

でもその声は続けて
こう言ったんだ。
生き返らせることはできないが、
やり直す機会は
与えてやれるぞって。

落合 美琴

えっ?

間部 翔

ただし、その対価として
俺の寿命を差し出せるか?
――そう問いかけられたよ。

落合 美琴

翔くんの寿命をっ?

間部 翔

俺は即答したさ。
それで構わない、
ミコを助けられるならって。

落合 美琴

っ!?

 
 
翔くんは満面に笑みを浮かべた。


なんで私のためにそこまで……。
自分の命が削られちゃうんだよ?



私は涙を堪えきれなくて、
手で口元を押さえながら
激しくしゃくり上げてしまった。
 
 

間部 翔

気が付いたら、
俺は自分の部屋で眠っていた。
日付を確認したら、
5月9日の朝だった。

間部 翔

そのあとはミコを助けるために
行動をしたんだけど、
なかなかうまくいかなくて……。
何度も5月9日を繰り返した。

落合 美琴

っ!? 待ってっ!
つまりそれって繰り返すたびに
翔くんの寿命は
減っていったってこと?

間部 翔

らしいな……。
もう俺はループできない。
それだけの体力が残ってないんだ。
ここに来られたのも
奇跡みたいなものだしさ……。

間部 翔

だからこそ、最後の手段として
ミコに全てを伝えようって
決心したんだ。

 
 
翔くんは真顔で私を真っ直ぐに見つめた。

そして握り合わせている手には
わずかに力が入る。
 
 

間部 翔

ミコ、死んだら終わりなんだよ。
俺の最期のお願いだ。
どうか生きてくれ。

落合 美琴

だったら、もっと早く
話してくれれば!

間部 翔

ループしている話をしたら、
二度とループできないって
条件があったんだ。

間部 翔

それに話をしても
信じてもらえる保証がない。
だからこれは
本当に『最期』の手段なんだよ。

落合 美琴

バカっ!
私が翔くんの話を
信じないわけないよ!
幼馴染なんだから分かるでしょ?

 
 
私は頬を膨らませつつ号泣した。
そして両手で翔くんの右手を包み込むように
握りしめる。


すると翔くんは苦笑し、わずかに頷いた。
 
 

間部 翔

へへ、適わないな、ミコには。
カッコつけたかったのかもな。
自分の力でミコを助けたぞって。

落合 美琴

笑ってる場合じゃ……
ないでしょ……っ?

間部 翔

俺がここまでミコを
助けたいって思ったのは、
ミコのことが好きだからだ。

 
 
 
 
 

落合 美琴

っ!?

 
 
 
 
 

間部 翔

好きな女の子のためだから。
そうじゃなきゃ、
ここまでしねぇよ。

落合 美琴

この状況でそんなことを
言われても困るよっ!
私、どうしたらいいのっ?

落合 美琴

私だって翔くんのことが
好きだよっ!
ずっとずっと昔から!

間部 翔

……じゃ、
キス……してくれるか?

 
 
 

落合 美琴

んっ……。

 
 
私は翔くんとキスをした。


涙のせいか少ししょっぱいけど、
でもすごく胸が熱い。
鼓動もどんどん速くなる。



すると次の瞬間、不思議なことが起きた。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

5回目(3) 気持ちが通じ合う瞬間

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