失われた命を取り戻すことは
神様にもできない。
命はそれだけ重いものなんだ……。
失われた命を取り戻すことは
神様にもできない。
命はそれだけ重いものなんだ……。
そっか……。
神様にもできないことが
あったんだね。
でもその声は続けて
こう言ったんだ。
生き返らせることはできないが、
やり直す機会は
与えてやれるぞって。
えっ?
ただし、その対価として
俺の寿命を差し出せるか?
――そう問いかけられたよ。
翔くんの寿命をっ?
俺は即答したさ。
それで構わない、
ミコを助けられるならって。
っ!?
翔くんは満面に笑みを浮かべた。
なんで私のためにそこまで……。
自分の命が削られちゃうんだよ?
私は涙を堪えきれなくて、
手で口元を押さえながら
激しくしゃくり上げてしまった。
気が付いたら、
俺は自分の部屋で眠っていた。
日付を確認したら、
5月9日の朝だった。
そのあとはミコを助けるために
行動をしたんだけど、
なかなかうまくいかなくて……。
何度も5月9日を繰り返した。
っ!? 待ってっ!
つまりそれって繰り返すたびに
翔くんの寿命は
減っていったってこと?
らしいな……。
もう俺はループできない。
それだけの体力が残ってないんだ。
ここに来られたのも
奇跡みたいなものだしさ……。
だからこそ、最後の手段として
ミコに全てを伝えようって
決心したんだ。
翔くんは真顔で私を真っ直ぐに見つめた。
そして握り合わせている手には
わずかに力が入る。
ミコ、死んだら終わりなんだよ。
俺の最期のお願いだ。
どうか生きてくれ。
だったら、もっと早く
話してくれれば!
ループしている話をしたら、
二度とループできないって
条件があったんだ。
それに話をしても
信じてもらえる保証がない。
だからこれは
本当に『最期』の手段なんだよ。
バカっ!
私が翔くんの話を
信じないわけないよ!
幼馴染なんだから分かるでしょ?
私は頬を膨らませつつ号泣した。
そして両手で翔くんの右手を包み込むように
握りしめる。
すると翔くんは苦笑し、わずかに頷いた。
へへ、適わないな、ミコには。
カッコつけたかったのかもな。
自分の力でミコを助けたぞって。
笑ってる場合じゃ……
ないでしょ……っ?
俺がここまでミコを
助けたいって思ったのは、
ミコのことが好きだからだ。
っ!?
好きな女の子のためだから。
そうじゃなきゃ、
ここまでしねぇよ。
この状況でそんなことを
言われても困るよっ!
私、どうしたらいいのっ?
私だって翔くんのことが
好きだよっ!
ずっとずっと昔から!
……じゃ、
キス……してくれるか?
んっ……。
私は翔くんとキスをした。
涙のせいか少ししょっぱいけど、
でもすごく胸が熱い。
鼓動もどんどん速くなる。
すると次の瞬間、不思議なことが起きた。
次回へ続く!