——イマガイ・モーヌスーン
——イマガイ・モーヌスーン
つ、着いたぁ…
ミッドナイトを出て早5日…長かったなぁ…
ワープのありがたみが良くわかるわね…
トミーの記憶データの損傷を防ぐために、徒歩でモーヌスーンを目指していた俺達は、五日かけてようやく現地へと到着した。でも、途中でモンスターなんかにも遭遇して狩り尽くしたため、当分はお金に困りそうにない。
それにしても…緑だな
うん…緑だ…
自然が多い村とは聞いてたけど…まさかこれ程とは思ってなかったわ…
いや、これは多いというよりも…自然そのもの…?
モーヌスーンは、共存の村とも呼ばれている、とはネプトが教えてくれたことだ。動物と人間の特徴を持ち合わせた種族…獣人族が暮らしているらしい。要するに…ケモ耳っ子とかがいるってことなのか?よくわからないが…
この様子じゃ、ミッドナイトん時みたいなことにはなりそうもないな。あー、平和だ…
それじゃ、さっさとノーツモニュメントを見つけて、今度こそゆっくり観光しましょ!
そうだね…次ははぐれないように、ね
2度目はないわ…!
そういうわけで、村を散策しつつひとまわりした…はずなのだが…
…ここ、ノーツモニュメントあんのか?
影も形も、見当たらないね…
うー、おかしいわね…長は確かに…
あのぅ…なにかぁ、お困りですかぁ?
間の抜けた声に振り向くと、羊の角を生やした女性が立っていた。すごい…ほんとうに角とか生えてるんだ…!
わぁ、もしかしてぇ、旅人さんですかぁ?こんな辺鄙な村にぃ、お立ち寄りいただきぃ、ありがとうございますぅ!
辺鄙だなんて…すごく綺麗なところじゃないですか!
そうね…気分もリフレッシュできそうだし、立ち寄ってよかったわ!
そう言ってもらえるとぉ、村の者としてぇ、とても嬉しいですぅ!
私はぁ、シープラっていいますぅ。よろしくお願いしますぅ!
アルトです、よろしくお願いします。
はいぃ!ところでぇ、何かお探しですかぁ?よろしければぁ、手伝いますよぉ?
俺達がノーツモニュメントを探していることを伝えると、女性は少し首をかしげた。
むぅ〜、すみませぇん…私にはぁ、わからないですぅ…
あー、そっか、悪かったな。もーちょっと探してみるわ。ありがとな!
はいぃ〜…あ、そうだぁ!
この先にぃ、私の師匠でぇ、占い師の女性がいるんですぅ。彼女ならぁ、何か知ってるかもしれないですぅ!
ほんと!?だって、みんな!聞いてみましょうよ!
モーヌスーンの占い師…っつーと…ああ、あのよく当たるって評判の?
はいぃ!私はまだまだですけどぉ、師匠の占いはぁ、百発百中なんですよぉ!
へー!面白そう!!行ってみようよ!
そうだな。せっかく紹介してもらったんだし、行ってみようか
はぁい!それじゃあ、案内しますよぉ♪
そのまま俺達は、シープラさんに連れられて村の少し奥の方まで歩いていった。奥に行くごとに緑が深くなっていき、濃厚な草の匂いがあたりを包んだ。なんか落ち着くなぁ…
ここですぅ!師匠ぉー、お客様ですぅ〜!
それっぽいテントの中に入ると、中は薄暗く、怪しいものがたくさん陳列されている…ほんとうに占い館みたいだ。そうなんだけど。小さな机の向こうには、猫の耳を生やした女の人が座っていた。
おや、なかなか大所帯だね。あたしはこの占い館のオーナー、ニャルラ・キャティーだ。よろしくね。さあ、何を占ってほしいんだい?
んにゃ、占いっていうか…探し物があってな
探し物?ああ、そうかい。見てあげよう…ん?
ニャルラさんはなにかに目を止め思案すると、俺達の方に歩み寄り、アルマの前で立ち止まった。
…?
赤い頭巾…白い髪に、頭に翼……間違いないね
あ、あの…
…アンタ、アルマ・カミエルだろう?
へ!?な、なんで知って…?
すごい!占い師って、見ただけでそこまでわかっちゃうのね!
ああ、期待させて悪いが…残念ながら違う
師匠、アルマさんって…
ああ…実はね。一週間くらい前、アンタを探してるっていう魔族が来てね
魔族…?
心当たりでもあるのか?
魔族で僕を探してるっていうと…でも…
相手は友達だって言ってたけど…近いうちに、ここに来るって結果が出たから、ここで待たせてやってるんだけど…今ちょうど買い物にーー
ニャルラさんが言いかけた、その時。
ニャルラさん、ただ今戻りましたー!鮎が安かったので、三尾買ってきましたよ。後で塩焼きにして食べましょう!
あー、シルフくんー、ちょうど良かったぁ!
おかえりシルフ。ちょうど、アンタの探し人が来たところだよ。シープラ、荷物奥に持ってってやんな
え、それって…
はぁい!
シルフ…?
少し逆光になって見えにくかったが…すごく綺麗な子だと思った。深い紫の目は、どこか潤んでいるようにも見えて…
アルマ…!本当に、君なんだな…!
初めまして!シルフ・タナイストっていいます!俺のアルマがいつもお世話になってます!!
俺のって・・・!!
寧ろお世話になってるのは俺たちの方だな・・・よろしくな、シルフ!
まさかこんなところで再会するとは・・・シルフは、僕の騎士であり友達の魔族。見たとおりすごい綺麗な容姿をしているし、頭もすっごく良い!多分普通に戦ったら勝てないくらいに強いし・・・非の打ち所なんて見当たらない、スーパー魔族なんだ!
にしても・・・綺麗な見た目してんな・・・女かと思ったぜ。
アルマの前例があるからなんとも言えない・・・
アルマの前例があるからなんとも言えない・・・
んー、よく言われるんだけど・・・俺かなりがさつだよ?
そうだね!すぐ殴るし!
いだい!!
ちょっと黙ろっか、アルマくん。
久しぶりの再会なのに何か冷たい!!
800年も音信不通だったのが悪ぃんだばーか
うう・・・それは・・・
まーそれは建前で、久しぶりに見たら殴りたくなったからなんだけどな!
もっとひどい!!
全くいつもこうなんだから!!
800年も音信不通ってのはさすがにやり過ぎたけど・・・って、もう僕らそんなに会ってなかったの!?
800年音信不通・・・人間じゃ考えられない年数だな・・・
魔族は天族の突然変異で生まれた種族だかんな。
無駄に頑丈で寿命もないに等しい・・・
まあ・・・そのおかげで出会いは豊富だよね!
んだな!こんなに生きてなきゃ、アルマにも会えてないかもしれないし!
シルフがふわりと僕に抱きついてくる。変なところで甘えてくるのも変わってないなぁ・・・
二人ともほんとに仲良いんだな。さっきからくっつきっぱなしだし・・・。
ああ、俺はアルマの騎士だからな!
さっきからきくんだけど・・・その騎士ってなんなの?
あ、それ俺も気になってた!
騎士ってなんか、響きがかっこいいよな!!
んうう・・・騎士っていうのは・・・
言葉通りさ。俺がアルマを守るってだけの。
だから・・・いくらスコアホルダーでも、
アルマのこと傷つけたら殺すから。
・・・?
!!!???
ッ!!??
こらシルフ!!脅かさない!!
ははは、冗談だって!!人間は面白いなー♪
全くもう・・・
からかい癖もそのまんま・・・と言うか、いつまで抱きついてる気なんだろう。地味に力強いしちょっと苦しいんだけど・・・。
おやまあ、盛り上がってるねー
あ、ニャルラさん!
結果、出ましたか!?
そういえば、ノーツモニュメントの場所を調べてもらってたんだっけ・・・すっかり忘れてた・・・。
アルトが聞くと、ニャルラさんは口許の弧を深めて言った。
ああ。あたしに見えないものはないさ・・・でもね・・・ちょーっとお願い事を聞いてくれないかい?
お願い事・・・?
・・・もしかして・・・
ああ、そのもしかして、さ。
まだ諦めてなかったんですか・・・
諦める?シルフがそんなこと言うの珍しい・・・あれ以来すっかり前向きになったと思ってたのに・・・
ああ、諦めないさ・・・アレを見てるとイライラするんだよ・・・
な、何かあったんですか・・・?
・・・・・・・・
アルマ。アンタ、恋人がいたんだってね?
え!?
は!?
なんですかそれ!?
そんなの初耳だよ!?
ありゃ?おかしいね・・・シルフ情報だからあってると思ったんだが・・・
シルフ!!
へあ!?いやいただろ!?
まさか忘れたのか?あんなに大事大事してたのに!?
え・・・ええ・・・?
・・・・・・・・シューだよ。覚えて、無いのか・・・?
しゅー・・・?
・・・・・・ぜ、ぜんぜん・・・
・・・・・・そっか・・・
・・・記憶が飛んでる期間があるって言ってたよな、前に。
じゃ、じゃあ・・・その間にって、こと・・・?
記憶が飛んでる・・・!?
なんだそれ・・・聞いてない・・・
記憶が無い・・・か。そりゃ大変だね・・・
・・・・・・はい
そんな大事なことも忘れちゃうなんて・・・一体何があったって言うんだ・・・
でも・・・覚えてないだけで、経験はあるのか・・・よし、ならそれでいい。
へ・・・?
アルマ、アンタ、恋のキューピッドになってみないかい?
・・・・・・・・・・・・は?
きょとんとする僕の視界の端に、頭に手を当ててため息をつくシルフの姿が目に入った。説明を求めて視線をやると、実に良い笑顔で親指を立てられてしまった・・・・・・。
え・・・僕、これから一体何を任されるの・・・?