親父と母さんが打ち出そうとしていた「打開策」は、2人の遺品整理で難なく見つけ出せた。

「新規事業並びに新法人設立計画書」と銘打たれた書類に目を通すと…

・現在の病院敷地内に介護老人保健施設を増設

・看護師の養成を行う「学校法人」を設立

することが謳われていた。

 俺は、それを拓海に見せ、意見を仰ぐことにした。

二宮 拓海

…これは、素晴らしい案ではありますが、麗明様の現状でできるものがあるとすれば…「学校法人を新たに設置すること」位でしょうか…

早乙女 麗明

俺もそう思うんだ…

早乙女 麗明

新たに病院施設内に「介護老人保健施設」を増設するったって、「先立つ物」を俺の力で用意できるとは思えない。

早乙女 麗明

親父や母さんが融資をお願いする予定だったからこそ、その計画は成立するんだと、俺は思うんだ…

二宮 拓海

麗明様には申し訳ありませんが、その通りかと思います。

二宮 拓海

現在空き病棟になっている西棟を改築すれば、教室にすることもできるでしょう。

二宮 拓海

本院で看護教員の資格を有する看護師を、新たに設置する学校の教員として迎えれば、教員の問題は解決できます。

二宮 拓海

看護実習や就職先も、本院での採用や、新たに病院や診療所を開設すること、付き合いのある総合病院や国立の病院に根回しして求人をもらうことで解決できるでしょう!!

早乙女 麗明

俺はそこまで考えてもいなかったが…
確かに、それならうちの病院の余剰看護師も減らせるし、その学校の評判が良ければ、患者様も増えるかも知れない…

早乙女 麗明

患者様が増えれば、病院の収入も増え、先進医療の利用者も増えるはず!
よし!その線で、親父と母さんが作った計画を元に、俺独自の計画案を作成してみるよ!

二宮 拓海

それが宜しいかと思います!

早乙女 麗明

そこで、拓海に相談なんだが…
これから新たな学校法人の設置やさまざまな改革を行うにあたり、拓海と同じくする時間を長くしたい。
そこで、拓海に副院長を退いてもらい、俺の専属秘書として働いてもらえないだろうか?

二宮 拓海

早乙女 麗明

…やはり、ダメか?

二宮 拓海

私は、麗明様の口から、そのお言葉が出るのを心待ちにしておりました。

二宮 拓海

前院長と理事長が築かれたこの病院、そして麗明様のためなら、私はこの白衣、喜んで脱ぎましょう!

早乙女 麗明

ありがとう!拓海!!

 翌日、俺は両親の残した事業計画書をベースに、新たな「新法人設立計画書」を策定。

 拓海に一通り見てもらった後、加筆・修正を加えたものを、契約司法書士と顧問弁護士にも確認してもらい、問題ない旨の一筆をもらった。

二宮 拓海

いよいよですね、麗明様!

早乙女 麗明

ああ。
遊び呆けていた俺がここまで来れたのも、全部拓海のお蔭だ。

二宮 拓海

礼を言われるのは、まだ早いです。
麗明様が無事理事長に就任し、本院が赤字経営から脱却したその時、もう一度そのお言葉を私目に下さい!

早乙女 麗明

そうだな!
それじゃ、行こうか!

二宮 拓海

はい!

 俺と拓海の姿を見て、長老理事を始めとした、その場にいる全理事が一斉に立ち上がる。

二宮 拓海

これより、早乙女総合病院 緊急理事会を始めます!!

 そして会議は開かれた…

episode4 に続く…

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