『あのババァは
死んでも嫌がらせをしてくる。
それに比べりゃ私は可愛いモノさ』
と彼女は言う。
~その1~
『あのババァは
死んでも嫌がらせをしてくる。
それに比べりゃ私は可愛いモノさ』
と彼女は言う。
~その1~
栗藻羽町
~ルチアの家~
☆香鳴ルチア(かなくるちあ)☆
【通称】ロリ魔
【職業】作家/マギカライター
【年齢】89歳
【外見】本人曰く14歳前後
(もっと幼い)
【服装】軽めのロリータファッション
【性格】面倒くさがりだが、
良く面倒事に首を突っ込む
【嗜好】甘いものが好き
【弱点】苦いもの。苦い出来事
……ぐぬぬぬ
あ……あんっ!
……っぐ!! 嫌なところに
……っちょ!! ダ、ダメ!!
そ、そこだけはダメ!!
ぐうううううううう!!
邪魔するぜー、センセ
があああああああああああああああ!!
だめだ!!
……何やってるんで? センセ
パチンコで有り金摩ったような声出して。
ん、何だイデグチ、着てたのか?
……あら、イデグチさんこんにちは
おう。エリセンセも居たのか
暇つぶしにね
……で、二人して首を並べて、タブレット覗き込んで何やってるんだ?
いやね、お互い執筆も無い時期だったし、ちょっと遊ぼうと思ったのよ
それで、このタブレットに入ってる将棋ソフトを起動してみたんだ
ふぅん。……どれどれ
あ、馬鹿!! 勝手に見るな!!
…………………………………いや、まて
……飛車角二枚、相手側にあるんだが
まあ、それだけじゃないけどね
金と銀合わせて七枚に包囲された上に、
残りの金も”と”に囲まれてるじゃねえか
下剋上でも起きてるのか?
この盤上は
うっさい!!
……妙に強いんだよ、このCPU
本当か?
実はセンセが、ただ単に大したことないんじゃないか?
ぁあ?
ひっくり返して赤く染めるぞこらぁ?
嘗めんじゃないよ、これでも有段並みだ
有段者ねえ……。
この暴君がむしり取りまくった後の戦場みたいな感じでねぇ。
……まあイデグチさん。
この子庇うわけじゃないけど、嘘は無いわよ?
そもそもあたし達、それなりに長く生きてるから、
この手のゲームは人並み以上に経験と心得があるのよ。
ふぅん。……その将棋アプリって、対人できるのか?
できるぞ?
やってみるか?
暴君が走り去った後みたいにしてやるよ
本当にそんな実力のセンセにお相手して貰えるのなら、やらない訳がないさ。
だがそんな盤上みたいに飛車とか大盤振る舞いしてくれるのなら、俺は初めから駒無くても良いかな?
いっそこっちは6枚くらい落とそうか?
てめぇ……舐めるのはアイスキャンディくらいにしとかないと痛い目見るぞ?
そこまで言うのなら、一瞬で玉を蒸発させてやるさ
☆エリファシア・アルマデス ☆
☆(えりふぁしあ・あるまです)☆
【通称】エロ魔
【職業】魔女/マギカライター
【年齢】84歳
【外見】20代後半
【服装】すごく魔女っぽく
色っぽい服装
【性格】しっかり者。エロい。
最終的に手を貸してくれる
【嗜好】男好き。新しいもの好き。
【弱点】方向音痴。
いやぁ、将棋も久しぶりだったなぁ。
………。
なにせ、学生時代に研究室の奴らと遊んだくらいだったし。
20年ぶりくらいか?
………。
あいつら無駄に頭良かったからなぁ。将棋と囲碁とチェスの駒で戦いを成立させるくらいの無駄さだったがな。
まあ、馬鹿に研究職は務まらないけど。
………。
しかし、流石に二人がかりで来られた時には難しいと思ったな。
主に、完封するのが。
おいおい、物にあたるなよ。
テーブルの泣き声が聞こえるぜ。
可憐な乙女の拳に対しても気を配れよ
泣くどころか、殺しにかかりそうな眼光を散らせる乙女など心配できん
で? 何かいう事は。
ぐぐぐぐぐぐぐぐ!!
……はぁ、もう
あ、エロ魔!!
馬鹿!!
頭を掴むな!!
心配しなくても、そのカツラは取れないわ
せめてウィッグって言え!!
じゃなくてヅラなんか使ってない!!
はいはい。私ともども、参りました。
ば、ばか!!
まだ負けは認めてない!!
詰みまで打たせて何言ってるのよ。これを負けと諦めなかったら、日本はあと何発も大型爆弾落とされていたわよ。
この上無い負けよ、私たちの。
ほいほい、ありがとうございましたっと。
ぐぅぅ……屈辱だ。
昨日近所の小学生にババァって言われたくらい屈辱だ。
そのガキ、察しが良いな
でも感心したわよ。イデグチさん、下手なプロより上手いんじゃない?
そこまでじゃねえよ。
それに、センセ達も相当打てるな。
正直、さっきの焼野原みたいな盤上からは想像できなかったさ
……そう、なのよね。
……私もロリ魔も、そこそこ自信がある方なのよ
一応、町内会の将棋大会では、私もエロ魔も上位に食い込むんだ。
いや、……それは強いのか?
井の中の蛙にしか思えんぞ
悪いけど栗藻羽町の将棋偏差値は半端ないぞ?
プロでもない限り太刀打ちできない猛者ばかりさ
特に、成り金のマサ爺のゴールドラッシュとか……
去年の覇者、取られ龍のシンジなんて、ここぞとばかりのカウンターが……
それこそ、お師匠様が生きてた頃なんか、この街だけで世界一決定戦が実現できたでしょうね
……また微妙に将棋っぽくない話を……
まあ、センセ達が『一位になる』と言わない当たり、本当にレベル高いんだろうけど
…………。
なあ、センセ。俺もこのCPU戦やってみて良いか?
なんだイデグチ。研究と原稿と酒と女以外に興味持つなんて珍しいじゃないか。
マジカ。そんな最低な男が居るのか。今度紹介してくれ
なんせ、センセがコテンパンにやられたって言うからな。
………いやま、確かにやってみた感じ、イデグチなら結果出せそうだが
それでも、なんていうかこのCPUの方が圧倒的に強かった気がするわ。
大丈夫だ。そこは心配しなくていいぞ?
どうせ俺は本気出してなかったから
……ほう、それはそれは予想以上に随分と舐めた真似をしてくれたな。
次の仕事は、私が舐めまくった原稿がお前の元に舞い降りることは覚悟しろよ?
なんだその無駄に汚そうなの。やめてくれよ。
まあそう言うなって。敵は取ってやるからさ
……いいぞ? やってみればいい
☆イデグチ☆
【通称】おっさん、イデグチさん
【職業】第三電子魔術実験都市職員
【年齢】42歳
【服装】一般的なジャケット
スウェット
【性格】ずる賢い、タヌキおやじ、
悪びれない
【嗜好】ウィスキー、コーヒー、電子タバコ
【弱点】職場では苦労人
いや、買い物付き合ってくれてありがとうございました
お、お安い御用よ!!
デッシーに付き合うくらい、大したことないんだからね!!
お蔭でお師匠が探していた怪しげな薬の材料、全部そろえることが出来ましたよ
ふ、ふん!!
この手間賃は高くつくわよ!?
ああ、そうですね。何か今度ごちそうしますよ
え!?
ちょ、それってどこかに食べに行くって……ええ!?
で、デー……。
何でも好きなの言ってください。
師匠からもお礼させるし、三人で食事もたまには楽しいですよ。
え……あ。
……そうね、タノシミダワー。
マジデタノシミダワー
……で、大の大人が三人そろってタブレットを覗き込んで、何をしているんですか?
テレビ電話で同窓会でもしてるんですか?
おい、おかしいぞこれ。
小学生がレスラーに腕相撲挑んだくらいに、勝てる気配が全くない。
メアリーの婚活並みだ
むしろ、さっき私たちがやった時よりも遥かに早く決着がついたわね。 野菜の国の王子ですら、もう少し戦いを楽しむと思うわ。
何が『敵は取ってやる』だ。ここ一番の醜態をさらしてるじゃないか
いやいや待て待て。良く思い出せよ。
なんかこう……終始上手く行かな過ぎじゃねえか?
…………むぅ。
随分と熱中してるみたいだよ?
そうですね。
まあ、普段から執筆以上に変なことに集中できるお師匠ですが、エロ魔さんやイデグチさんも巻き込んでは珍しいものです
こら!!
ルッチー!!
薬の材料探してきたよ!!
お、おう!!
なんだお前ら、帰ってたのか
お、お弟子君にヘレナセンセ。
お邪魔してるぞ?
あらぁ、弟子君お帰りなさぁい。
エリ、寂しかったぞ♪
それ以上近づくな、この色情狂!!
何だお師匠、お茶も出してないじゃないですか。
ちょっと待ってくださいね、今お茶を入れてきますから
相変わらずお弟子君は女子力高いな、おい
おい、女子魔。お前、将棋打てるか?
あ、そうだな。この登場パターンは打てる可能性大だな
は?登場パターン?
……何の事だかさっぱりだけど、あいにく解らないよ?
興味持ったことないし
……意外ね。歴史趣味だし、そう言うのも触っているかと思った。
おば様方と違って、まだまだ短く若い人生しか歩めていないから、そんな幅広い興味は消化できないわ
だから弟子君一人落とせないのよね? 初々しいわぁ
だ、だだだだ誰が何を、如何落とすのかな!!
解りやすい子だなぁ……
まあ、だとしたら今のお前は新人バイト並みに役立たずだ、大人しく座っていてくれ
な、なんだってのよ!!
何かと思えば、将棋でも指しているんですか?
何だ、速かったな
もう麦茶で良いかなって皆さんどうぞ
お、すまない
あらぁ、気が利くわぁ
だからデッシーに寄るなぁ!!
そう言えば弟子君は将棋させるのか?
ん、まあ嗜み程度には
一局打ちます?
興味はあるが、今それどころじゃない。
なあ、ルチアセンセ、お弟子君は強いのかい?
……ま、まあなかなかの実力だが私ほどじゃ
何言ってるんですか。去年と一昨年とその前の将棋大会で僕が勝ってるじゃないですか
挙句、今年は恥をかきたくないから出場するなとか……
バッ!! それは口に出すなと!!
……うわセコイ
でも、イデグチさんほどじゃないと思うわ。
私も何度か打ったけど、お弟子君にはたまに勝てるし
だけど、相性ってのもあるからなぁ。一度打ってもらうのも……
いったい何の話なんですか?
いや、この将棋ソフトのCPUがやけに強くてな
ん?
お師匠のタブレットのアプリですか?
そんなものいつの間に入れたんですか?
初めから入っていたぞ?
そうでしたっけ?
僕が以前中身を確認した時は余計なゲームは入ってなかったはずなんですけど……
……………って、これは
ん?
どうした弟子よ
………
……そう言えば、なんか一時期『チェスよりも将棋が面白いのよー』とか言っていた気が
ん?
私は大体のボードゲームは好きだが?
……いえ、お師匠ではなくて……ええと、製作者は……ここかな?
何だ、オプション画面なんか開いて。……なに?バージョン情報?
製作者は……なんだこのヘビが指相撲しているような捻った文字は?
って、あああああああああああああああああああああああ!!
なにを騒いっでえええええええええええええええええええ!?
なんだ? どうした二人とも
いや、このミミズがタイキックしているようなサインって、お師匠様のおばあ様……つまり、二人のお師匠様のサインなんですよ
ちょっとロリ魔、もしかして魔術計測できない!?
あ、あり得る。この程度のお遊びなら、残りカスみたいなMANAでも利用して……。
ちょとまて。
そのなんだ? つまりこの将棋ソフトって……
あ、魔術反応有りますね。MANAも微量ながら動いているようです
間違いないわね
あんのクソババァの魔術書だ。
~続く~