ピーシリーズ

エレベーターが1Fに着くと、その女に促されてボクはエレベーターから降りた。

悠真

お姉ちゃん、
どうしたの?

頭からフードをかぶったのが走って来た。

さんちゃん

ぴっ(悠真くん)

肩に乗っていたさんちゃんが言う。

柳之助

こいつが悠真?

柳之助

え?

ぴよ ぴよ ぴよ

ぴよ ぴよ ぴよ

ぴよ ぴよ ぴよ

という鳴き声と共に、さんちゃんと同じような鳥が、悠真という人間らしき者の後をついてきた。

ナナちゃん

ぴーぴーぴー(悠真くん~、待って~)

ファイブ

ぴ~ぴ~(悠真くぅ~ん)

にーちゃん

ぴっぴぴぴ(悠真くん。早いよぉ。)

柳之助

何?

ぴーちゃん

ぴー、ぴっぴっ(ピーシリーズ、整列。)

悠真とかいうヤツの肩に乗っていたロボットが言うと、さんちゃん以外の鳥が一列に並んだ。

ぴーちゃん

ぴっ(いち)

にーちゃん

ぴっ(に)

さんちゃん

ぴぃ(さん)

ボクの肩でさんちゃんが返事をした……。

ふぉーちゃん

ぴっ(よん)

ファイブ

ぴー(ご)

ロクちゃん

ぴっぴ(ろく)

ナナちゃん

ぴ~(なな)

はっつあん

ぴぴ(はち)

くぅちゃん

ぴぃ……(くぅ……)

ぴーちゃん

ぴよっ(うむ)

ぴーちゃん

ぴっぴぴぴっ(てんちゃん以外、居ます~)

悠真

ぴーちゃん、ありがとう。

ぴーちゃん

ぴっ(へへっ)

悠真

さんちゃんもお姉ちゃんのところにいたんだね。急にいなくなるから心配したんだよ。

さんちゃん

ぴー、ぴぴぴ(は~い。悠真くん)

柳之助

なんだ……?

悠衣

私の弟よ。
これでもロボット工学では最高峰なの……。

柳之助

弟?

そういえば、昔は兄弟というものがあったらしい。
一組のカップルから複数の子供が生まれることがあったそうだ。

柳之助

ということは、
こいつも人間?

でも、まだこの人間が人間であると確かめたわけではないが……。

悠真

急いできたから、迷子が出たらどうしようって思ってたんだ。

柳之助

…………。

変な奴じゃね?

にーちゃん

ぴっぴぴぴ~?(さんちゃんだけ、どうしてその子供の肩にいるのぉ~?)

柳之助

子供?

ボクのことか?

ファイブ

ぴー(そうだそうだ)

にーちゃん

ぴっぴぴぴっぴぴぴ(ぴーちゃんが整列って言ったら、整列しないといけないのに。)

柳之助

ぴーちゃんっていう悠真の肩に乗っているのが、このピーシリーズのリーダーってところか?

全部で10体あって、10番目のテンというのはいないらしい。
ここにはさんちゃんも含め、9体のピーシリーズがいた。

さんちゃん

ぴぴぴっ(へへへっ)

すると、さんちゃんがボクの肩で笑い出した。

さんちゃん

ぴーっぴぴっぴー(この子は柳之助くんだよ。)

そう言って、ボクに向かって羽(手?)をヒラヒラさせる。

はっつあん

ぴっ!(えっ!)

ナナちゃん

ぴぴっ!(うそっ!)

ふぉーちゃん

ぴぴぴぴ?(ホントに?)

柳之助

なぜ驚く?

さんちゃん

ぴっぴっぴ(本当だよ。)

さんちゃん

ぴぴっぴぴぴー(ボクの体内に埋め込まれた、柳之助くん反応センサーが、ちゃんと「柳之助くんだ」って言ってるんだ。)

「柳之助くん反応センサー」?

柳之助

ちょっと待て、
それはなんだ?

にーちゃん

ぴっぴ(どれどれ)

違う一匹が、ボクの肩に乗り、さんちゃんに触れる。

にーちゃん

ぴっぴっぴっぴ(おお!本当だ。この子は、「柳之助くん」だ。)

さんちゃん

ぴぴ(でしょ?)

さんちゃん

ぴっぴぴぴいいぴぴいっぴ(だから、ボクは現在、任務の遂行中なのである。)

さんちゃん

ぴっぴぴぴ~(頭が高~い!)

柳之助

頭が高いって……?

はっつあん

ぴぴー(ほぉ~)

さんちゃんが偉そうに言うと、乗ってきた鳥はボクの肩から降り、ぴ-ちゃん以外のひよこは揃って頭を下げた。

地べたに頭を付けているが、卵の殻があるからツルツル滑ってクルクル回っている……。

柳之助

…………。

悠衣

ねえ、この鳥が言ってること、
わかる?

柳之助

わかるが……。

悠衣

そう……。

変な顔をされた……。

柳之助

わからないのか?

悠衣

特殊な脳波の人間
だけわかるらしいわ

柳之助

特殊?

悠衣

原案を考えた人が
かなりの変人だから

原案?

柳之助

悠真が考えたん
じゃないのか?

悠衣

悠真は途中参加。
でもAIを研究して、
ほぼ完成させたわ

柳之助

原案を考えたのは
誰なんだ?

悠衣

…………。

女は答えなかった。

悠衣

悠真。この子に青空を見せてあげたいんだけど、体力がないみたいで、地下からここに来るだけでへばったみたいなの。

柳之助

何?

柳之助

そんな理由で悠真をここに呼んだのか?

悠真

青空?
屋上行けばよかったんじゃない?

悠衣

あんたが中庭に居るって言うから、わざわざ1Fで降りたんでしょうが。

悠衣

それに……、緑の大地も、
見たいんじゃないかなって……。

悠真

じゃあ、中庭でいいかな?

悠衣

お願い

悠真

お姉ちゃんも行く?

悠衣

えっと……
私は……。

柳之助

お前、ついてこない気か?

悠真

お前?

悠真

ボクのお姉ちゃんに
「お前」なんて言うな!

悠衣

悠真、子供相手に
ムキになるんじゃないわよ。

悠真

だって……。

柳之助

ボクはその女の名前を知らない。
だから……。

悠衣

ごめんなさい。
私は悠衣よ。

悠衣

この子は
弟の悠真。

悠真

…………。

悠真はちょっとだけ頭を下げた。

悠衣

キミは……
柳之助……、くんかな?

柳之助

どうしてボクの名前を
知っているんだ?

名乗っていないのに、ここにいる連中は、ボクが柳之助だと知っていた。

悠衣

あなたが来ることを
予言していた人がいるの。

柳之助

誰だ?
そいつは。

悠衣

この施設内にいると思う。

悠真

さんちゃん、
吉良先輩はどこ?

悠衣

悠真!

悠衣が急に声を荒げた。

悠真

大丈夫だよ。
わかってるし……。

柳之助

そいつ、
吉良っていうのか?

悠真

ああ……。

さんちゃん

ぴっぴっぴ(地下研究室にいます)

柳之助

地下?

さんちゃん

ぴぴぴっぴ(さっき柳之助くんがいたところだよ)

柳之助

ふーん

悠衣

じゃあ、中庭に行きましょう。
私も行くから。

そう言って、悠衣はボクの背中を押した。

柳之助

キラって、どこかで
聞いたことがあるような?

でも、どこだか思い出せなかった。

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