話がかみ合わない

柳之助

ここには、人間が
たくさんいるのか?

悠衣

え?

柳之助

またバグ?

悠衣

たくさんって、
何人ぐらい?

柳之助

え?

どうしよう、

言っている意味が

わからない。

柳之助

確か2025年ごろなら
人口は億単位だったかも……。

想像もつかない……。

柳之助

もしかして、
質問間違えた?

相手はボクが未来から来たとか
思ってるわけじゃないし……。

柳之助

人口が何億もいるような時代に「人間いる?」って聞くの、変なのかもしれない?

そんな気がしてきた。

柳之助

いや待て、ここは、
本当に過去なのか?

柳之助

このわけのわからない状態で、
まだ何も確認していない……。

悠衣

…………。

そもそもこの女、
本当に人間なのか?

柳之助

過去の映像(映画やドラマ)とかで見る人間は、もっとおしゃべりで明るいだろ?

やだ、卓也ったら

こういうのがボクの中の人間のイメージ。
………………なのか?

柳之助

そうでない映像もたくさん観たし……。

わりとヒマだったし……。
息抜き的に昔の映画は観ていた。

そもそも、あれは本当に
人間だったのか?

途中でアンドロイドに
代わってたとか
あったんじゃないのか?

取れないだけですよ。

こいつは確実にアンドロイドだったはず。それとも、ボクが気づいていないだけで本当はこいつが人間だったとか?

柳之助

だから、娯楽番組が放送できていたのかもしれない。

あははははは~

でも、こいつに機器のメンテナンスとか、できるのか? 放送施設の維持とかも……。

でも、あの番組、めちゃめちゃだったし……。

柳之助

だらだらと、アンドロイド2体が
くっちゃべっているだけって……。

まったく、あなたときたら、どうしてそんなに楽天的なんですか?

こっちの方が、メンテナンスとかはできそう。
でも、これって人間なのか?

柳之助

違う………
ような気がする。

でも、確信は持てない……。

柳之助

ダメだ、ボクにはわからない。
そもそも、人間って、何なんだ?

思考するのを投げた……。

柳之助

ねえ……

悠衣

何?

柳之助

空って
青いの?

悠衣

え?

悠衣

……。

柳之助

バグった?

カナンでも、もう少し早い対応をする。

悠衣

今日は晴れてたはずだから
青いと思うわ。

どういう意味だ?

柳之助

AIよりひどい
受け答えをするな……。

柳之助

数世紀前のアンドロイドより
悪いんじゃないか?

そうか!

柳之助

2025年にできたばかりの
アンドロイドなのかもしれない。

悠衣

見に行く?

柳之助

え?
見れるの?

この女は、青空が大したことではないように言った……。

柳之助

見たい。

もしも、見れると言うのなら……。

悠衣

柳之助

何の意味だかわかっていないでいると、その女はボクの手を握った。

柳之助

はい?

そして、何も言わずに歩き出して、ボクも一緒に歩いた。

柳之助

手は……
温かい……。

カナンやマギーの手は、こんなに温度が高くなかった気がする。

柳之助

そんなに触れたことも
なかったし……。

柳之助

う……。
過去なんじゃないのか?

2025年のはずなのに、周囲はさび付いていてボロボロだった……。

柳之助

2816年の方が、
綺麗だった気がする……。

この通路にも見覚えはあった。

悠衣

…………。

その人間は、何も言わずに歩いた。

柳之助

人間って、こんなに無口なのか?

その人間を見ながらそう思った。

けたましい音を立てて階段を上り、

柳之助

何?
これ……。

階段……、きついかも……。

薄暗い廊下を通って

柳之助

どこに行くつもりだ?

エレベーターに乗った。

柳之助

…………。

乗っただけで疲れた……。

悠衣

なんか
顔色悪いわね。

柳之助

こんな長距離
歩いたことない……。

ボクが育ったシェルターは広くなかった。

悠衣

え?

柳之助

そんなに驚くようなことを
言ったつもりはないんだが……。

そう言って、その場にしゃがみ込む。

柳之助

長距離を移動する時は、
カナンが運んでたのに……。

悠衣

…………。

その人間は、携帯を取り出した。

悠衣

悠真、私。
エレベーターにすぐに来なさい。

柳之助

悠真?

さっきから何度も聞く名前……。

悠衣

今、どこにいるの?

悠衣

じゃあ1Fに行くわ。

そう言っているのが聞こえた。

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