私が当惑していると、
翔くんは追い打ちをかけるように
言葉を続ける。
私が当惑していると、
翔くんは追い打ちをかけるように
言葉を続ける。
学校へ行く途中の歩道橋、
あそこから飛び降りようって
ミコは考えてただろ?
……や、やだなぁ、翔くん!
そんなこと、思うワケないよ!
ゴメンな……。
ミコが上野たちからのイジメで
そこまで追い詰められてたって
気付いてやれなくて……。
っ……。
私は何も言えなくなってしまった。
そしてきっと翔くんが
今日を繰り返しているというのは
本当のことだ。
それなら私の考えを
知っていてもおかしくないし、
翔くんは嘘を言っているようには見えない。
後ろめたいことや嘘があると
頬がヒクヒクするけど、それがないもん。
つまり『別の今日』で私は
あの決意を実行に移したんだね……。
ミコは周りに
心配かけたくないとか思って
我慢し続けてきたんだよな?
でもな、死んじゃったら
もう取り返しが付かないんだよ。
ツライなら親とか俺とか、
周りを巻き込んでいいんだ。
だけど……。
ミコを大切に思ってるのに
迷惑なんて思うわけがないだろ?
助けたい、守りたいって思うのが
普通なんだよ!
っ!
自然に涙が溢れてくる。
すると翔くんは必死に手を伸ばして、
私の頬に残った涙を指で拭ってくれた。
ちょっと照れくさいけど、
すごく胸に温かさを感じる。
最初の5月9日、
ミコは絶望して命を絶った。
それを知った瞬間、
俺は自分のふがいなさに後悔した。
なんでもっとミコのこと、
気に掛けてやらなかったのかって。
あ……。
お通夜でさ、
ミコの冷たくなった顔に
触れた瞬間、悔しくて悲しくて
発狂寸前にまでなっちまったよ。
我を失って上野たちに
殴りかかろうとして、
みんなに止められちまったし。
翔くん……。
私は無意識のうちに翔くんの手を
握りしめていた。
そこまで悲しんでくれて嬉しい反面、
心を傷付けてしまったという申し訳なさで
胸が苦しくなる。
ミコを気に掛けてやれなかった
俺自身にも腹が立ってさ。
血が出るまで自分の頭を
壁に打ち付けた。
…………。
飛び降りとか車に轢かれたりとか
そういう場合は普通、
もっと損傷が激しいらしい。
でもミコはきれいな顔だった。
今にも起き上がってきそうな、
それくらいに奇跡的にきれいでさ。
冗談だよって起きてくれたら
いいのになって思ったよ。
翔くんは唇が震え、
瞳から一筋の涙が流れ落ちた。
その気持ちがこうして横にいる私にも
すごく伝わってくる。
私まで貰い泣きしてしまいそうになって、
何度も鼻を啜る。
お通夜のあと家に帰って
俺はお社のご神体に
願ったんだ。
私を生き返らせてくれって?
最初はな。
このままだと俺の代に
祀るのをやめてやるぞって
脅しまでかけてやった。
そうしたら
誰かの声が聞こえたんだ。
死んだ者を生き返らせることは
できないって。
っ……。
きっとその声の主は
神様だったんじゃないかって
俺は思う。
そっか、やっぱり死んじゃったら
終わりなんだ……。
神様の力でもそれは無理なんだね……。
次回へ続く!