2025年
2025年
くっ!
何かにぶつかって
停まった?
すぐに外の大気を確かめた。
窒素80%、酸素20%……。
有害な物質も検知されない。
このまま出ても大丈夫そうだ。
タイムマシンの外に出た。
あれ?
ボクは周囲を見回した。
変わってない?
戻ってきたのか?
いままで居た倉庫と変わらないように思えた。
チャシャ。
いるんだろ?
呼んでみたが、出てこない……。
まさかタイムマシンで
つぶしたとか……。
ん?
タイムマシンは、壁にあったクッション素材に当たったようで、どこも壊れていないように見えた。
こんなの
置いてあったか?
よく見ると、ここも微妙に違う気もする……。
堅そうに見えて、触ってみると柔らかかった。
これにタイムマシンがぶつかったから、倉庫の方も大丈夫だったようだ。
亜光速でぶつかって、
大丈夫って……。
衝撃をかなり吸収する素材で、倉庫にもけっこう置いてあったヤツだ。
どうして
一枚だけ?
ピンポイントで置いてある。
ここに出るのが
わかってたみたいだ。
チャシャが用意したのかも?
あいつ、意外とそういうこと気づくし……。
まさか、
それでつぶされた?
準備をしたところで、タイムマシンが突っ込んできたという可能性がある。
ボクは慌ててタイムマシンと壁の間を見た。
チャシャ!
そこにはいなかった。
チャシャ。
ふざけてないで、出て来い。
あいつ、たまにふざけるし……。
念のため、タイムマシンの下も覗き込んだ。
でも、チャシャをつぶしたような残骸は出てこなかった。
あいつが
潰されるわけないか。
アンドロイドの中でもかなり機敏だし。
カナン!
カナン!
カナンはボクが二回呼べば、どこにいようと来るのに……。
ぴっ
え?鳥?
カナンじゃなくて、鳥が飛んできた。
見たことがないロボットだ。
でも、ひよこだからなのか、なんか、よろよろしてて危なっかしい。
飛ぶのを諦めた?
ぴー。
その鳥は、ピョンピョンと歩いてボクの前に来ると、肩に乗った。
精工にできているが、
ずい分旧式だな……。
愛嬌重視みたいな?
マスコット的ロボットか?
ぴーぴーぴー
何を言っているのか
わからない……。
ん?
チューニングするような音がした。
ぴーぴー(柳之助くん、柳之助くん)
え?
急に、鳥が言っていることがわかるようになった。
なんでボクの名前を
知っているんだ?
ぴぴぴ(ボクの言うこと、わかりますね。)
ああ……。
ぴぴぴ(ボクはPeeThree。悠真くんはさんちゃんって呼びます。)
誰? 悠真……。
ぴっぴっぴ(悠真くんは、ボクたちを作ってくれた人です。)
人?
悠真って、人間なのか?
ぴっぴっぴ~(はい。とっても素敵な人間です。)
…………。
まさか?
今年は何年だ?
ぴっ(2025年です。)
過去に戻れたのか?
よくあれで戻れたな……。
あんな、1時間たらずで作ったタイムマシンなんかで……。
まだ不十分で、理論もちゃんと考えてなかったんだが……。
動きそうだから「いいや」で
来ちゃったし……。
ちょっと、不用意だった
かもしれない……。
と、今更思った。
まあ、タイムマシンは壊れてないようだから、これで戻れば問題はないだろう。
ドアの開く音がして、そっちを見た。
悠真、今の音、何?
また悠真?
誰なんだ?
悠真って……。
でも、そう言っていた相手を見て驚いた。
え?誰?
あ…………。
そっちも驚いていた。
誰?
どこから来たの?
ボクも同じことを思っていた……。
お姉さん、
アンドロイドなの?
はぁ?
…………。
……違うけど。
じゃあ、人間?
……そうよ。
ホントに?
嘘じゃなくて?
……嘘じゃないわ。
私は人間よ。
……触ってもいい?
え?
人間らしき女の人は、ちょっとの間、固まっていた。
アンドロイドでも、
バグるし……。
いいわよ……。
そう言って、手を出した。
ボクは近寄って、その手に触れてみた。
温かい……。
ボクは初めて人間に触れた。
ぴっぴっぴ(よかったね、柳之助くん)
どうしてこの鳥、
ボクの名前を知っているんだ?
過去に戻ったのに、
過去の存在が
ボクを知っている理由が
わからなかった。