橘 ハヤト

先生

三木 キミ

お、橘か。お前はいつも早いな

橘 ハヤト

荷物が少ないからね

神田 カナト

橘くんだっけ?
俺はオーナーの神田だ。
三木の元同僚ってところだな。
おっと、初めましてだね。

橘 ハヤト

橘 ハヤト

あ、は、初めまして

橘 ハヤト

………

神田 カナト

三木、橘くんと話がしたいのだが

三木 キミ

お前に男を襲う趣味があったとはな

神田 カナト

男同士の話がしたくてな

橘 ハヤト

あの

神田 カナト

俺から聞いてもいいかな?

橘 ハヤト

え?

神田 カナト

意味がわからないなら、聞き流してくれ。忘れてくれ

橘 ハヤト

神田 カナト

君にとっては何度目かね? 今年の八月三十日が訪れたのは

橘 ハヤト

………

神田 カナト

……すまない。寝言だ

橘 ハヤト

……2回目です

神田 カナト

橘 ハヤト

オーナーさん、何か知っているのですか?

神田 カナト

何も知らないさ。ただ、俺にとっては十回目だ。
毎回状況は変わるけど、最後にはこのホテルは崩壊する。そして、俺も死ぬんだ。
意識を失った俺が目覚めると……八月三十日の朝になっている。この繰り返しだよ。

橘 ハヤト

他のみんなも、そうなのでしょうか

神田 カナト

いや、今のところは君と俺だけだろう。誰も違和感を抱いていないだろ

橘 ハヤト

………

神田 カナト

この話は他言無用だ。頭がおかしくなったと思われるだけだからな。気分の良いものではない。

橘 ハヤト

……経験したのですね

神田 カナト

ああ、全部話したら。橘くんも含めた全員に奇人扱いされてさ……最後には君たち全員に殺されたよ。正確にはホテルごと燃やされたね。

橘 ハヤト

……ごめんなさい

神田 カナト

今の君が謝る必要はないさ。その時の君たちは何かに洗脳されたかのように、口々に「殺せ殺せ」って言いながら俺を殺した。
もしかすると、宿泊客の誰かが黒幕かもしれない。そう思って、玄関を開かないようにしたのだよ。そうすれば逃げることは出来ない。
窓が固定されているのは、事故防止の為に以前からやっている。
誰も逃げられない、入れないようになっている。だけど……

橘 ハヤト

結局、今回も亡くなってしまったのですね。

神田 カナト

おっと、三木が来たようだ

三木 キミ

おい、神田! そろそろ橘を解放してくれないか? 授業が出来ないだろ

神田 カナト

そうだな。男の話に付き合ってくれて感謝だ

橘 ハヤト

いえ

三木 キミ

ずっと、叫んでいたのに気づかなかったのか

神田 カナト

防音システムがしっかりしているからな

三木 キミ

お前の部屋って襖かと思ったら鉄製だし。びっくりしたぞ。

神田 カナト

ちなみにオートロック。開けるときは指紋認証と顔認証、声認証の三段階を経て開くようになっている。

滝 ナガレ

ハヤト、あのオーナーと何を話していたんだよ

橘 ハヤト

ミステリー小説の話

笹 ササミ

てっきり、男と男で絡み合っていたのかと

橘 ハヤト

するかよ。
ちょっと部屋に戻るね

橘 ハヤト

あれ、僕の教科書。
こんなラクガキあったか

橘 ハヤト

神田 カナト

そういえば、彼にもあのメッセージは届いていたのでしょうかね……

橘 ハヤト

……………

“選択肢を間違えるな”


“正しい道を歩けば、夜は明ける”

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