彼の強さは、圧倒的だった。
子供内でも強かった私どころか、自国の武官をまとめてやっつけてしまった。

大の大人がポカンと口を開けているその中心で、彼は頬をかいていた。

その日の夜に私は初めてこっそり彼の泊まる宿に忍び込み、剣の稽古をつけてもらった。

今思えば、私がここまで剣を極められたのは彼のおかげだったのかもしれない。

ソール・グルナディエ

さて、私もそろそろポイントと接触するか……

ソール・グルナディエ

十四郎のお膝元だ。私も本気で取り組まねば

あ……あの………

ソール・グルナディエ

ん?

ど、どうか……お恵みを…………

ソール・グルナディエ

物乞い……十国にもいるとはな。ここもあまり経済的に芳しくないのだろうか……

どうか……どうかお恵みを……

ソール・グルナディエ

とはいえ、さすがに見て見ぬ振りもできないな。幾ばくかの金なら渡してもいいだろう……

ソール・グルナディエ

…………ん?

リット

…………

ソール・グルナディエ

………タイミング悪いな

マジー・プリエール

先生、すぐそばに反応があります

ソール・グルナディエ

タイミング良いな!!

マジー・プリエール

え?

ソール・グルナディエ

……なんでもない

ソール・グルナディエ

こっちも確認した。そっちも頼むぞ

マジー・プリエール

了解っす

ソール・グルナディエ

……そこのフードの青年よ。少しいいか

リット

っ!?

ソール・グルナディエ

これからは、もう少し上手く魔力を隠すことだな

リット

チイッ!!

ソール・グルナディエ

転送魔法か!逃がさん!!

リット

ヤベッ大分逸れちゃったな

リット

焦ってたとはいえ、慣れない転送魔法なんて使うんじゃなかったな~

リット

てか、さっきの人ソール・グルナディエ様じゃね?あのエタ国との戦争を1人で終わらせたとか言う化け物――

我が第一魔法源を解放せよ!魔剣・クロワ・アルシュ!!

リット

へっ?

ソール・グルナディエ

おおおおぉぉぉっ!!

榊 十四郎

はあああぁぁぁっ!!

リット

えっ!?ちょっと!?

ソール・グルナディエ

何っ!?

榊 十四郎

お前は!?

リット

……あれ?2人はお知り合いで?

榊 十四郎

ソール……なのか?

ソール・グルナディエ

あぁ……

ソール・グルナディエ

久しぶりだな……十四郎

榊 十四郎

あぁ……久しぶりだな、ソール

ソール・グルナディエ

ちょっ、急に抱きつくな!!

榊 十四郎

ずっと会いたかったのだぞ……手紙も出せずにすまなかった

ソール・グルナディエ

分かったから一旦離れろ!!

リット

…………2人はそういうご関係で?

榊 十四郎

そのとおりだ

ソール・グルナディエ

違う!!

リット

なんか、とりあえず逃げても大丈夫そうな雰囲気だな……今のうちに転送魔法で遠くに飛ぶか……

ソール・グルナディエ

私が何故貴様の逃げ道が読めたか分かるか

リット

へっ?

ソール・グルナディエ

簡単なことだ。転送魔法は魔力の残滓ごと自らを別の場所に転送する魔法だ。だが、貴様の転送魔法は非常にお粗末だ。魔力の残滓が糸を引いていたからな

榊 十四郎

俺も似た理由だ。この付近で異様な気配を感じたからな

リット

よく考えると、今ディスナティと十国最強の将軍に囲まれてるんだよな俺……

リット

逃げられるわけもないか……

ソール・グルナディエ

さて、こいつの処遇だが

ソール・グルナディエ

こいつはディスナティの人間だ。私が責任をもって処分しようと思うのだが

榊 十四郎

待てソール。ここは十国の領地だ。その男の身柄はこちらに預からせてもらう

ソール・グルナディエ

…………仕方ないか

リット

ソール様!投げるの早すぎませんか!?

ソール・グルナディエ

当たり前だろう。ここはディスナティではないのだ

榊 十四郎

その代わりと言ってはなんだが、ソールは一緒に城まで来てほしい。俺の親友だからな、丁重にもてなしたい

ソール・グルナディエ

ああ。丁度別件で城に誘われていたんだ。是非行きた――――

榊 十四郎

そこで、さっきの続きをしよう

ソール・グルナディエ

しないから!!

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