病院に到着すると、出迎えてくれた職員の案内で、俺は親の元へと通された。
病院に到着すると、出迎えてくれた職員の案内で、俺は親の元へと通された。
…
執刀した医師によると、両親を乗せた車は前後を走っていたトラックに挟まれ、事故が発生したその瞬間に両親は「圧死」した可能性が高いとのことだった。
それでも、顔が全く傷ついていない状態でこの場に両親の遺体があるのは、奇跡とも呼べる状況だろう。
親父…それに、母さん…
好き勝手やって、全然親孝行できなかった…すまない…
麗明様!!
こいつは副院長。
両親の懐刀という奴で、人事権をはじめとした多くの権限を持っていると聞いている。
俺をここまで呼び寄せたのも彼だ。
副院長…
麗明様…お話があるのですが、ここではちょっと…
それじゃ院長室へ行こう。
分かりました。
それで…話って何だ!?
実は、生前の院長並びに理事長より
「もし私たちの身に不測の事態が発生した際は、速やかに…
理事長の座に麗明を据えること」
という遺言を預かっています。
副院長が茶封筒を俺に渡してくる。
「緘」(かん)の印でしっかりと封印された封筒の表には「○○公証役場」と印刷されている。
俺は封印された封筒を、生前院長が使っていたデスクに無造作に置かれていたペーパーナイフで解くと、中に入っていた1枚の書類を取り出した。
その書類には「公正証書遺言」と記され、俺に病院経営の全権を任せることや、財産などの全てを俺に相続させる旨が記載され、親父、証人・公証人のサインと印が押されていた。
…確かに、副院長の言っていることに間違いはないようだな…
はい。私も、この病院の理事の1人ですが、全理事がこのことを承知し、認めています。
麗明様。院長、そして理事長の遺言に従い、本院の新しい理事長にご就任下さい!
…
どうやら、年貢の納め時のようだ…
とは言え…副院長、生まれ育った場所とはいえ、俺はこの病院のことをまるで知らない。
親父や母さんのために働いたように、俺にも力を貸してくれないか?
もとよりそのつもりです。
生前の院長・理事長にお仕えしたように、今後は麗明様にお仕えいたしましょう。
それから、今後は、私のことは名前でお呼び下さい。
分かったよ。拓海。
ありがとうございます。
こうして、俺は早乙女病院の運営元である医療法人の理事長に就任すべく、拓海と共に準備を開始したのだった。
episode2 に続く