霧咲 静香は依然として攻撃の手を緩めない。

 彼女は本来なら、自らが使う銃のデバイスに特化した銃術を主に使うのだが、不足の事態に備え、打撃の特訓も平行して行ってきた。

 それは今回のように、相手の隙を狙い、重い一撃を一発入れる。そうすることで、相手に反撃の隙を与えることなく、次のダメージを与え続けられるのだ。

 これは主に、銃術との相性が良くない相手に使う戦法だ。

霧裂 静香

 そろそろキツイのではないですか?

 静香は冷静にしかし、攻撃の手を緩めることなく話しかける。 

神裂 希

 ハハッ。そっちこそ、バテてきたんじゃないの?

 希は、静香の攻撃をなんとか受け流しながら答える。

霧裂 静香

 そうですか?

 あなたの顔を見る限り、余裕の表情には見えないですけど。

 笑顔、引きつってますよ?

 静香は依然として涼しい顔で希に打撃を与えている。

神裂 希

 でも、私の弱点よく分かわかりましたね。

 誰に聞いたの?

 希は打撃を受け止めながら静香に聞く。

霧裂 静香

 さあ? 

 そんなことより、これ以上やっても意味が無い気がします。

 降参したらどうですか?

 静香の一撃一撃が、少し強くなった。

神裂 希

 それは気が早いですよ。

 私はまだ本気を出していませんし。

 静香の攻撃を受け続けているせいか、いつしか、希の表情は真剣なものになっていた。

霧裂 静香

 そうですね。

 あなたの本気を出させるのが生徒会長の思惑なのかも知れませんね。

 静香が打撃の威力を更に強める。

神裂 希

 風宮会長かー、流石ですね。

 私と一試合しただけで弱点を見極めるとは。

 その言葉を機に、静香の攻撃をかわし、静香と距離をとる。

霧裂 静香

 今回も手加減ができますか?

 静香は再び拳を構え、魔力を溜める。

神裂 希

 分かりました。お望みのとおり、本気を出します。

 でも、霧咲さんもそろそろ本気で試合をしましょうよ。

 希は、デバイスを構え、体勢を立て直す。

霧裂 静香

 いいですよ。でも、練成中に攻撃をしようという安易な考えは私には効きませんよ?

 静香は魔力を溜めるの止め、デバイスを両手に持つ。

神裂 希

 お互い練成形態で勝負です。

 そう言って、希がデバイスに魔力を流す。

霧裂 静香

 練成!

神裂 希

 練成!

 静香と希は同時にデバイスの練成に入った。

 当然、希は練成を一瞬で完成させ、静香との距離を一気に詰める。

 

神裂 希

 はあっ!

 練成中のはずである静香のデバイスから、練成中はう撃てないはずの通常弾が希の足元に飛んできた。

神裂 希

 へえ、なかなかやりますね。

 
 希は、静香に切り掛かるのを止め、再び距離をとった。

霧裂 静香

 だから言いましたよね? 安易な企みだと。

 静香は希を冷たい視線で見つめ、片方の魔銃の銃口を希に向けて言った。

第三十三話:《歓迎試合~二色の魔銃2~》

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