あなたは必要な人です
あなたは必要な人です
柳之助さま、
最近の研究の進み具合はどうですか?
なんでそれを
お前に言うんだ?
あまり進んでいないのでは
ありませんか?
…………。
だから会いたくなかったんだ。
今までどうにもできなかったものが、たかだか8年生きてるだけのボクに、なんとかできるって思う方がおかしいんじゃないか?
そんなことはございません。
柳之助さまは、我らアンドロイドが誠心誠意を込めて作り上げた最高の頭脳をお持ちでいられます。
そこは作り上げたじゃなくて
教育しただろ。
申し訳ありません。
ボクはお前らに
作られたわけじゃない。
カナンが食事を持ってきた。
ハンバーグだ。
地味に嬉しい。
坊ちゃんをお作りになったのは
旦那様と奥様です。
…………。
お前、もうちょっと
言い方ってものがあるだろう?
いけませんか?
それだとボクが工作で
作られたみたいじゃないか。
違いますよ。
坊ちゃんはちゃんと旦那さまと奥様が……
言わなくていい。
?
そうですか。
まったく、8歳のガキに
何を言おうとしているんだ……。
ボクはハンバーグを食べた。
うまいっ
魚や野菜と違って、
ハンバーグはいい。
お野菜も
食べてください。
サラダが出てきた。
…………。
そっと遠ざけた。
坊ちゃん、好き嫌いは
ダメですよ
後で食べる。
お腹がいっぱいになったから
いらないとか言うつもりですか?
…………。
そのつもりだった。
カナンは学習能力が高い。
ボクが言ったことを覚えていて、そこからボクの行動を割り出す。
データが多くなりすぎていて、ちょっとゆっくりなのが難点と言えば難点だ。
それに比べて……
柳之助さま、
環境問題を解決してください。
マギーは旧式のアンドロイドだ。
外見は昔の人間が好きそうな女性型で、出来てから四百年は経っている。
ちなみにカナンはボクの父親の父親、つまり祖父が若いころに作ったらしく、出来て百年。
カナンから話は聞くが、父も祖父も会ったことはない。
食事の時くらい
その話はするな
マギーは同じことを毎日のように言う。
ボクもほぼ毎日同じことを言っているのに、マギーはそれを変えることはしない。
せっかく大好きな
ハンバーグなのに
ですが柳之助さま。早くなんとかしないと、人類は滅んでしまいます。
ボクの配偶者も見つからないかもしれないのに、いまさら環境を整えてもしかたがないだろう?
もし、見つかった時に、今のままならきっと後悔なさいます。
しないと思うよ……。
だってもう、
人間が見つからないんだから……。
…………。
ハンバーグを口に放り込み、席を立つ。
ごちそうさま。
坊ちゃん
サラダは……
いらない。
健康に気を付けても、
しょうがないよ。
坊ちゃん!
あなたは
私たちにとっても
最後の希望なのですよ……。
勝手に言ってろ。
ボクがそうしてくれと頼んだわけじゃない。
ボクは二人を置いて、リビングを出た。