私の人生は、世界で一番幸せ
だと言ってもいい。

愛に満ちた家族。有り余るお金。
友人のにも恵まれた。
ずば抜けた知能に、優れた身体能力。

容姿だって、美人を決める世界的な
コンテストで優勝したくらいだ。

この世界で私の望みは何でも叶う。

だけど、一つだけ自由に
ならないものがある。

私はそれだけが不満なのだ。

大きくて立派な宮殿。
今の私はここに住んでいる。

使用人の数は五人。
だけど皆とても優秀で、
宮殿の真ん中はいつも
清潔に保たれている。

今日もいい天気ね

はい、奥様。洗濯物が良く乾きそうですわ

あら、それは何よりね。いつもよく働いてくれて助かっているわ

滅相もありませんわ。わたくしもここで働かせてもらえて光栄ですもの

ほら。見てごらんなさい。
私の使用人はこんなに
いい人たちなのだ。

あらやだ、ごめんなさいね。
ところで、何か楽しいことは無いかしら?

奥様。また昨夜夜更かしをなさいましたね?
お体に障るといけないので、今はゆっくりお休みになって下さい

……いやよ

またそんなわがままをお言いになって。丁度今日はいい天気ですし、テラスで日光浴でもしてお昼寝して下さいまし

むー

ぶすくれても駄目ですよ。ほら、メイコ。奥様をご案内して

お任せください。さあ、奥様、こちらでございます

分かったわ。仕方がないわねえ……

少し乗り気ではなかったけれど、
ここまで言われてはと
私は彼女についていく。

あら、旦那様にお坊ちゃま。こんにちは、今日はいい天気ですね

前を見れば、私の自慢の夫と
可愛い息子が二人で歩いていた。

おそらく、これから元気に外で
スポーツでもするのだろう。

やあメイコ、それにクレアも。今からお昼寝かい?

そうなのよ。もう嫌になっちゃうわ

でもお母さまいつも寝ないから。しっかり寝ないと僕心配だよ

あら、ありがとうユース。今日はしっかり休むから安心して

では、旦那様にお坊ちゃま、失礼します

そこで最愛の家族と別れ、
私たちはテラスへと歩いて行った。

では奥様、お休みなさいませ

テラスに付いた私は、
メイコの勧めに従って
そのまま眠りに付いた。

そして私は目を開いた。

さっきとは打って変わって
平凡な寝室。

私はいつも、眠りにつくと
この夢を見るのだ。

またこの夢……何回目かしら

目を開くが体は横たわったまま。
何だか頭が重い気がする。

隣には不細工な男と、
可愛くもない男の子。
以前みたこの夢では、
この二人は私の夫と息子
だと言ってのけた。

その時はあまりの恐ろしさに、
身震いしたほどだ。

お母さん、まだ目を覚まさないなあ

いつ戻って来るんだろうね

一体いつまでこんな夢を
見なきゃいけないんだろう。

もう気付いてるだろうけど、
一つだけ自由にならない
私の不満は、夢なのだ。

夢だけは私の思い通りにならない。
この前鏡に映った私の顔を見た時、
本当に死にたいとさえ思った。

だから私は、この夢を見た時は、
いつも次の理想を思い浮かべ、
意識を闇に沈めるのだ。

今度はお花端でお散歩でもしたいわ

そう願いながら、私の意識は
次第に闇に溶けていく。

ん~、いい気持ち

夢から覚めると、
そこは既にお花畑。

現実は何でも思い通りに
いくからとっても好きだ。

それにしてもあの夢、どうにかならないのかしら

あんな夢は見たくない。
この現実の様に、夢も
思い通りにいけばいいのに。

! そうよ! 望み通りの夢を見れる装置を作ればいいのよ! この世界の私なら何でもできるわ

なんて単純なことだったんだろう。
そうすればもうあんな夢に
うなされなくても済むのに。

そうと決まれば、早速計画を練らないと。まずは名前の。そうね、夢の様な夢で『Dream×Dream』にしましょう

その後細かな設計などを考えていた
私は、気付かないうちに
深い眠りに落ちて行った。

またこの夢……結局装置を作る前にねちゃったのね

目が覚めるとそこは何度と見た寝室。
少し離れたところで、
例の二人が話し合っていた。

和美は大丈夫なんでしょうか

お母さんの頭に付いた変なのは、どうやったらとれるの?

そんな二人の疑問に、
知らない声が答えた。

「もう残された手段は一つですよ」

今回の夢には私の知らない
誰かも登場しているようだ。

それにしても、やっぱり頭が重いわね

次は宇宙旅行にでも
行ってみたい。そうすれば
こんな重みなど何ともない程の
浮遊感が得られるだろう。

「奥さんの命の保証までは
できませんがーー」

見ると立派な胸を持った
女の子が喋っていた。
だけど関係ない。
現実の私の方が何倍も綺麗だ。

そんな事を思いながら
現実の世界に戻って
行った私は、その後に続く
彼女の声は聞けなかった。

「ーーこの現実へ呼び戻しましょう。
特別製のこのハンマーで。
奥さんが自ら作った
『Dream×Dream』をぶち壊して」

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