今朝はいつもと違うことがたくさん起きて、
私は戸惑っている。

今日に限って『なぜ?』ということばかり。



例えば、間部翔くんが
一緒に学校へ行こうって誘いに来た。

彼は私の幼馴染で、今はクラスも同じ。
小学校に入る前からの付き合いだ。

でも中学に入ってからは、
一度もうちに来たことがなかったと思う。



学校とか外で会った時とかは
話をするけど、
それ以外の交流はなかった。

メールやSNSでのやり取りだって
滅多にしないし……。



ほかにいつもと違うことといえば歩道橋。

なぜか階段の前にロープが張られていて
通れなかったし、
翔くんが必死になって通るのを止めた。


だからこうして信号を使って
道路を渡ってきたんだけど……。
 
 

間部 翔

っ……。

落合 美琴

翔くん、大丈夫?
すごく顔色悪いし、
汗もびっしょりだよ?

間部 翔

は……はは……。
だ、大丈夫に決まってるだろ……。

落合 美琴

無理しない方がいいよ?

間部 翔

この程度で無理なもんかよ。
ミコに比べれば……。

落合 美琴

っ!?

間部 翔

ミコこそ……
無理してるくせに……。

落合 美琴

な、何の話かなっ?
言ってる意味が
分からないんだけど?

間部 翔

っ!

落合 美琴

翔くんっ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
翔くんは足下がふらつき、倒れそうになった。

でも咄嗟に踏ん張った上、
私が彼の腕を掴んだことでそれは回避する。



本当に翔くん、どうしちゃったの?
どんどん体調が悪くなっていくみたい。
 
 

間部 翔

はは……サンキュな……。

落合 美琴

今日は学校、休んだら?

間部 翔

それだけは絶対にダメだ!

落合 美琴

っ!?

 
 
翔くんは強い口調で即答した。

その意志の込められた瞳には、
何か執念みたいなものが感じられる。
 
 

間部 翔

俺は何としてでも――

落合 美琴

でも翔くんの体が心配だよ。

間部 翔

バカ……。
俺のことより自分のことを
心配しろよ。

落合 美琴

…………。

 
 
まるで翔くんは、
私が自分の命を絶とうと決意していることに
気付いているかのようだった。


私の心の中が見えるはずないのに……。




その後、こまめに休みを挟みながら、
翔くんのペースに合わせて
ゆっくりと私は歩いていった。

ここから先は中学校まで長い坂道が続き、
そこをひたすら登っていく。


この辺りまで来ると、
同じ中学に通う生徒の姿も
多く見られるようになる。
 
 

おはよう、間部くんっ♪
……それと落合さん。

 
 
後ろから誰かに声をかけられた。
私たちは立ち止まって振り向いてみる。


するとそこには同じクラスの
女子3人がいて、
ニコニコしながらこちらへ歩み寄ってきた。

どうやら挨拶をしてきたのは上野さんみたい。
 
 

上野 里多

…………。

的場 麗奈

おっは~!

狭山 あゆ

ふたりとも、おはよっ!

間部 翔

……おはよう。

落合 美琴

お、おはよう……。

 
 
上野里多、的場麗奈、狭山あゆ――


この3人組はいつも連んでいて、
私に対して酷い仕打ちをする
主要メンバーと言っていい。

彼女たちは周りにバレにくい
陰湿な嫌がらせをやってくる狡猾さもある。



でもたまに表立って
私に何かをしてくることがあっても、
クラスの男子のほとんどは見て見ぬ振り。

ほかの女子は自分がターゲットになるのが
怖いからなのか、
見て見ぬ振りをしたり
たまに一緒になって色々としたりする。



翔くんみたいに間に入ってくれる
クラスメイトはほかにいないし、
いつも翔くんがそばにいるわけでもない。
  
 
 
 
 

 
 
 
 
 
だから私は……
我慢するしかなかったんだ。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私は何も悪いことしてないのに……
なんでこんな目に遭わないといけないの?

教えてよ、神様……。
 
 

上野 里多

2人で登校なんて珍しいね。

間部 翔

わ……悪いかよ……。

上野 里多

あれ?
間部くん、体調が悪そうだね?

的場 麗奈

ほんとだ。顔色悪いし。

狭山 あゆ

そっか、それで落合さんが
一緒なんだね?

落合 美琴

あ……うん……。
そうなんだよ……。

 
 
本当は違うんだけど、
そういうことにしておいた。
その方が波風が立たないと思ったから。



前々から薄々感じていたんだけど、
上野さんは翔くんに対して
好意を持っているみたい。


だからもし翔くんが一緒に登校しようって
私の家まで誘いに来たなんて話をしたら
確実に妬まれちゃうもん。

そうなったら、
あとで何をされるか分からないし……。
 
 

間部 翔

ところで上野、的場、狭山。
俺たちと一緒に
学校へ行かないか?

上野 里多

っ!?

 
 
不意に翔くんは上野さんたちを誘った。


ハッキリ言って翔くんは本音では
彼女たちを快く思っていない。

その話は今までに何度も聞いているし、
避けているような態度も見せている。



だからこの行動に私はビックリしたし、
上野さんたちも大きく息を呑んで
当惑しているようだった。
 
 

間部 翔

頼むよ、上野……。

上野 里多

そ、そんな急に言われても……。

的場 麗奈

いいんじゃない?
間部くん、体調悪そうだし、
落合さんだけだと不安っしょ。

狭山 あゆ

むしろ落合さんは
先に行ってもいいって感じ。

 
 
的場さんと狭山さんは
なんとか私を排除する流れに
持っていこうとしているようだった。



……そうだよね、
私は邪魔者でしかないもん。



それにひとりになれるのは
私にとっても好都合。
ここから歩道橋へ引き返して……。


私は泣きたくなるのを必死に堪え、
笑顔で翔くんへ声をかける。
 
 

落合 美琴

それならこの場は
上野さんたちに任せて、
私は先に行くね?

間部 翔

ダメだ、ミコも一緒にいてくれ!
ここにいるメンバーが
揃っていることが大切なんだ!

落合 美琴

翔くん……。

間部 翔

上野、みんな一緒でいいだろ?

上野 里多

しょ、しょうがないなぁ。
それでいいよ……。

間部 翔

ありがとな……。

 
 
翔くんはなぜかすごくホッとしたような
顔をしていた。


やっぱり今日の翔くんは色々とおかしい。
言動がことごとくいつもと違う。
何があったんだろう?





こうして私たち5人は一緒に登校した。

そして中学校へ到着すると昇降口で
上靴に履き替え、
教室へ移動したのだった。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

4回目(1) 大きな違和感

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