ひとしきり本を読み終えると


あたりは茜に染まっていた


今まで暗かった場所に


赤き太陽の光のかけらが


差し込んでいて

夜の訪れを密かに告げている。



図書館の中で

走り回っていた子供たちが

いつのまにか姿を消している


街のスピーカーから

ふるさとの音色が流れてくる



もうそんな時間か


理論に頭をめぐらせていると


あっという間に時間が過ぎる


何冊か歯抜けになった本棚に



一冊一冊本をもどしていく


今日もめがねの綺麗な女の人が

図書館から去りつつある僕を

見つめている


いつも僕が最後の一人だから


そうなるんだろう。


ぼくがここから抜け出して


数十メートル離れると


閉館の準備を始めるのが見える


それを後ろ目に見つつ

図書館を後にする

ぼくはやはりここを通って帰るんだ

そう



事故現場


少し離れた場所に車を止めて

近づいてくる人影がある



手には

純白の百合の花束が



あぁ、ありがたいな。


あなたもここに花を手向けてくれるのか



と少しはなれたところから見ていると


後ろから何人かが


早足にその現場のほうに向かっていく


先ほどの車の前後に

さらにその人の後方には

5人近くで壁を作っている


なんだ?



にいさんちょっといいか?


あんたこの紙に思い当たることがあるだろう

男はなにやら紙を見せている


少したじろぐと

駆け出した

いっせいに男たちが飛び掛って

花束を手向けた男を捕まえて


そのままさっていった。



こっちにさっき声をかけていた男が

気づくとこっちに近づいてきた



あぁ

またか

あんたこの事故で無くなった母娘の父親だろう?


よかったな、たった今犯人捕まったぞ。


あとは司法がちゃんと裁いてくれる

これで少しでも成仏してくれるといいな。


では
わたしはこれで。

そう

この男は刑事で


捕まった男はひき逃げ犯



僕の一番憎んでいる相手


それを見届けると


コンビニでいつものセットを買って

帰路に着いた

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