今更になってこのメンツなの不安になってきたな…

銀執事

今更も何も最初から不安だらけですけどね

紅夜

ゴチャゴチャ言ってないで早く行くぞ

神社から出て、三人は研究所の方へと向かっていたがその時

ズドンッ

紅夜

えっ

銀執事

お、おい!?紅夜!?

紅夜!!!

研究所へ向かう途中、先頭をきって歩いていた紅夜は突然落とし穴らしき所に落ちた

銀執事

え、ええ…えええぇぇ…

紅夜…お前はいいやつだったよ

銀執事

いや何縁起でもないこと言ってるんですか!!
実の弟でしょ!?

ははは、冗談だって。
さっき紅夜が落ちた音したし浅い落とし穴か何かだろ。
おーい紅夜ー

銀執事

……
返事がありませんけど…

…紅夜、お前は本当にいいやつだったよ

銀執事

おいこら!!!

いやこればかりは冗談通じないな。
中も暗くてよくわかんねえし行ってみるか

銀執事

結構この穴深かったりするんですかね…?
自分高い所はちょっと…

紅夜が落ちた音が聞こえたくらいだしそこまで深くはないだろ。
まあ問題は高さじゃなくて中に何があるかだけどな

銀執事

落ちたらマムシが大量にいたりとか針山があったりとかしたらシャレになりませんよ

うっ…紅夜から返事もないしそう考えると怖いな

銀執事

…どうします?

どうするもこうするも、ここでじっとしてても何も始まらないし、俺たちも行くか

銀執事

そうですね、紅夜の安否が気になりますし自分たちも後を追いましょう

銀、懐中電灯貸してくれないか

銀執事


はい、わかりました

この中が安全とは限らないからまず俺が行く。
安全そうなら声をかけるから俺が反応するまでそこで待機しててくれ

銀執事

え、そんな危険な…!手だって怪我してるのに… 
自分が行きますよ

ありがとう。でも大丈夫だ。
懐中電灯持つくらいならどうってことない

銀執事

…わかりました。
下に降りたらすぐに声をかけてくださいね

ああ。
それじゃあ行ってくるわ

銀執事

はい。気をつけて

そう言うと、紅夜の兄は紅夜の落ちた穴へ滑り落ちるように入っていった

銀執事

…大丈夫かなあ

紅夜の兄が穴に入ってから数分経過したが、声はおろか、物音ひとつ聞こえなかった

銀執事

あれからどれくらい経った…?
5分は経ったような…
ちょっと遅すぎじゃないか?

気になった銀は穴を覗き込むが、特に明かりも見えず物音も何一つ聞こえなかった

銀執事

何か嫌な予感がする…
どうしよう。
声をかけるまで降りてくるなって言われたけど流石に心配になるな…

そう考えている間にも時間は経ち、紅夜の兄から声もかかることはなかった

銀執事

これは行くしかないだろ…

銀は少し躊躇しながらも、落とし穴に足を踏み入れ、そのまま降りていった

ドスンッ

銀執事

あいたたたた…
思ったより高かった…

銀!!

銀執事

あれ?紅夜のお兄さん!
無事だったんですか!

それはこっちの台詞だ!
俺が降りてすぐに声かけて何度も叫んだのに返事がなくて銀の身に何かあったのかと思ったわ

銀執事

え?
声なんて全く聞こえなかったですよ…?
それで心配して降り…落ちてきたんです

なんだって!?
声が聞こえないほど遠い距離じゃないと思うんだけど

銀執事

そうですよね。
防音か何かあるのかな…

まあこの世界ではこんなことくらい小さい謎だな。
そんなことよりまずは紅夜の行方を探さないと…

銀執事

確かに。
その様子だとお兄さんが降りてきた時にはもう紅夜の姿はなかったみたいですね

ああ。
多分この通路の先に行ったんじゃないかと思う…

銀執事

通路?

よく周りを見渡してみると、そこは通路の途中の道であった

後ろは土砂崩れのせいで行き止まりなんだ。
だからこの先の通路しか行き場がないんじゃないかと思って

銀執事

こんな所があったなんて…
でもそれなら話は早い、行きましょう!

だな

少し通路を歩いていると、途中二手に道が分かれていた

銀執事

まさかの展開

うげっ!

銀執事

どっちに行きます?

うーん…俺なら左…と言いたい所だが紅夜は捻くれてるからな。
多分俺と逆の右に行くだろう。
てことで右かな

銀執事

あ、そんな適当に決めちゃうんですね。
まあいいですけども

行ってみて行き止まりとかだったらまたこの道を戻って左の通路に行けばいいしな

銀執事

ですね。
じゃあまず右の通路から行きましょうか

そんなこんなで銀と紅夜の兄の二人は、右の通路に向かって歩いていった

そして少し進むと、とても長い螺旋状の階段がある場所へ出た

銀執事

え、階段?

な、なげえ…あんまり汚れてないところを見るとそんなに人が利用していなかったということか?

銀執事

なんでこんな所に…

わからない…だが、キメラの研究所関係に違いないのは確かだと思う

銀執事

じゃあこの場所も化け物が出てきてもおかしくないということか…

紅夜が刀持ってるしまずいな。
一刻も早く紅夜を探して合流しないと

銀執事

じゃないと自分たち戦う武器なんて持ち合わせていませんしね

とりあえず、ここまで来たしこの長い螺旋状の階段を登るとするか

銀執事

階段登ってる最中に化け物から襲われないよう祈りながら登りますか

階段登ってる途中で出てきた時は飛び降りるくらいの勢いで逃げなきゃな。

銀執事

この階段手すりないのか…足の踏み場は広いのに手すりや柵がないってだけで少し怖いですね

そうか?
俺は全然平気だが…

銀執事

あ、自分高所恐怖症なので

成る程ね。
階段登ってる最中に脅かしたらパニクって落ちそうだから今回は我慢するよ

銀執事

や、やめてくださいよ!!!

そんな雑談をしながら長い螺旋状の階段を登っていくと、階段の中間辺りで休憩できそうな空間がぽつんとあった


そこには長いベンチが一脚あった

ん?休憩するとこ?

銀執事

結構この階段長いですしね

どうする?少し休んでいくか?

銀執事

ちょっと足が痛くなってきましたし少しだけ休憩しましょうか

二人はその休憩所スペースのある場所まで階段を登り、長いベンチにゆっくりと腰掛けた

この階段の先、どこに繋がってるのかねえ

銀執事

案外自分たちがいた普通の世界に繋がってたりとかしてたりして…

ははは。
そんな都合のいい話だったらこの上ない幸せだわ

銀執事

…何?

ポンッ

銀執事

ああ、よかった

…何だよ突然人の肩に手を乗せたりなんかして

銀執事

い、いやその…ちょっと…

わかった。
俺のこと霊か何かと思ってただろ?

銀執事

!!!そ、そんなこと…!

いいっていいって。
そりゃ2年間も行方不明でこんな所いたら誰だってそう思うさ

銀執事

う、疑ってしまってすみません…
でもどう見てもちゃんとした人ですし触れるので安心しました

この世界に来ると何に対しても疑心暗鬼になっちまうもんな。
仕方ないさ

銀執事

はい…もういろいろな事に対して素直に受け入れがたい心境です

俺も同じ気持ちだからわかるよ

銀執事

兎にも角にも早く元いた世界に帰りたいです

早いとこ紅夜と合流してあのキメラの化け物ぶっ倒して元いた世界に帰ろうぜ

銀執事

はい!!
ゆっくりしてる暇なんてないですね、早く紅夜を探してこの世界からおさらばしなくては!

今紅夜はどこにいるのやら…


紅夜

あいたたた…ここはどこだ…?
おーい、銀ー兄さんー!!


…あれ?返事がないな

紅夜は落とした懐中電灯を手に取り、周りを見渡した

紅夜

後ろは行き止まりか…ということはこのまま先に進む意外に道はないみたいだな。
上に登ろうにも無理そうだし…
まあ進めばいつか出られるだろ

そのまま先にしばらく進むと、途中道が二手に分かれていた

紅夜

道が分かれてる…
とりあえず左の方に行くか

左の道に進んでいくと突き当たりに古く寂れた扉があり、手で軽く押すと簡単に開くことができた

扉を開くとそこは5畳ほどの広さで、
真ん中に机と椅子、そして本棚がある小さな部屋であった

紅夜

なんだここは…?
人が住んでいたには生活感のない部屋だし…会議か何かに使用してたんだろうか?

紅夜は部屋に入り、辺りを調べ始めた

机と椅子の上には特に何もなく、本棚にある生物や科学の本を一つひとつ手に取り目を通した

紅夜

普通の本ばかりだな…これも、これも…

…ん?なんだこれは?本というよりノートか何かか?

紅夜は本棚の下の方にあった使い古されたノートらしきものを手に取った


ノートを開くとそこには図のようなものや殴り書きされたような文字が乱雑に並んでいた

紅夜

…成る程。
この地下を利用していたのはこの研究所の黒幕か。しかも4人。
そして4班全てに黒幕の奴ら1人ずつ紛れそれぞれ班を監視し、定期的にここの部屋で報告してたというところか…

そのノートには定期的に研究の成果や研究員について詳しく記載されており、それが研究所の人たちが書いたものであると安易に予想をすることができた

紅夜

知れば知るほどここの研究所は狂ってるようにしか思えないな。
しかもこの部屋の壁、賞状が沢山飾られてるし謎だ

そう言って壁に掛けられた賞状に目を向けると、ノーベル化学賞からはじまり、その他にも技術開発賞などのさまざまなものがあった

紅夜

…!
なんでこんな場所にこんなものが…?
しかもこのノーベル化学賞の人なんて日本じゃすごく有名な人じゃないか…!
も、もしかして…!?

手元に持っていたノートをおもむろに開け、ページをめくると、そこには賞を取った人の名前が記載されていたことに気がつく

紅夜

まさか、あの有名な化学者がこの研究所に携わってたなんて…
しかも黒幕ときたか。

でも何でこんなことを?

紅夜

…まあ考えていても仕方が無い。
ここには特にこの世界から出るための手がかりや道具もなさそうだし一旦戻ってもう一つの道に行くか

紅夜は手に持っていたノートを本棚に戻し、部屋から出てもう片方の道へ向かった



しばらく進むと、大きいらせん状の階段がある場所へと出た

紅夜

こんな所に階段…?しかも新しそうだな…
登っても大丈夫そうだな。
早く兄さんと銀と合流しなくちゃいけないし急ぐか


てなことがあってさ!
その時紅夜はなんて言ったと思う?

銀執事

「お前の腎臓抜き取ってやろうか」
とかですか?

惜しい!正解は
「お前の十二指腸と咽頭くっつけてやろうか」
でした!

銀執事

全然惜しくないし思ってたより怖い!!!

他にも紅夜の面白いエピソードがあってな…

紅夜

あ、ご苦労様でーす

銀執事

ハッ!

あ…紅夜…
ち、違うんだこれには訳が

紅夜

お前の十二指腸と咽頭くっつけてやろうか?

すいませんでした!!!
でもこれは全て銀が言ってたことです!!!
銀が悪いんです!!!

銀執事

えええええええええ

紅夜

ずいぶんと俺をネタにして楽しんでたみたいじゃねえか。
どの道お前ら二人ともまとめてシバくわ

ご、ごめんって!
元の世界に帰れたら猫カフェ奢るから!!

紅夜

いいよ

銀執事

いいんだ…

紅夜

てかあんたらこんなとこで何やってたんだ?

ああ、お前が落ちてから少しして俺ら二人も来たんだよ。
紅夜が後から来たってことはあの分岐点で左の道に行ったみたいだな

紅夜

ああ。
左の方には小さい部屋があって机や椅子、本棚があっただけで特に変わったものはなかったぞ

銀執事

なんで部屋が?

こんな所にあるくらいだから研究所の奴らの何かだろ

紅夜

さすが兄さん。
まあそんなところ

銀執事

ここの研究所いろいろ徹底してるなあ…

まあ違法のことしてたしFBIも動いてたみたいだしな

紅夜

やってることは日本国内だけじゃなく海外にまで危険が及ぶことしてたからな…

銀執事

そんな危険な場所に自分たちがいると思うと改めて命の危機に晒されてるんだなって感じたわ

それより、これからどうする?

紅夜

そうだな。
無事に合流できたことだしこのまま階段登ってくか?

銀執事

この階段の先に何があるのかわかんないけどここしか道がないしね

この先行き止まりとかだったら生き埋めになりそうだな

紅夜

縁起でもない

銀執事

とりあえず行ってみないことには何もわからないし行ってみよっか

ここでずっといても何も始まらないしな

銀と紅夜の兄はベンチから腰をあげると、銀の鞄から何かが落ちた

銀執事

あっカメラが

紅夜

そういやカメラとか持ってきてたな。
大丈夫か?

銀執事

なんとかレンズは割れてないし、電源も入るし…無事みたいだ。
よかったー1か月分のバイト代が消えるところだった

一眼レフか。
写真好きなの?

銀執事

ただの趣味なんですけどね。

…あ!折角だし紅夜とお兄さんの写真撮ってあげますよ

ほんとか!綺麗に撮ってくれよ~!

紅夜

いや俺は写真なんて…

ほらほら、遠慮するなって!!

紅夜

えっ!?あ、ちょっ…

銀執事

撮りますよ~

おう!

紅夜

はあ…

パシャッ

銀執事

暗いけどちゃんと撮れたよ

ちょっと紅夜笑えよ~

紅夜

こんな状況なのに笑えるはずねえだろ

銀執事

今度は元の世界に帰ってきちんと明るい所で改めて…

そうだな!その時は銀も一緒に撮ろう

銀執事

はい

紅夜

こんな時にでものんきな二人だな

こんな時だからこそ笑わないと

銀執事

ほんとこの兄弟似てないなあ…

紅夜

うるせえ。
ほら、さっさと行くぞ

あ、まて紅夜!先に行くなよ!

銀執事

待って二人とも置いてかないで!

先に階段を登る紅夜に続き、紅夜の兄と銀が後ろをついていくと、その先には木の扉があった

紅夜

鍵もついてないみたいだな

開きそうか?

銀執事

開かないとしても紅夜の馬鹿力があれば余裕だと思う

紅夜

これなら銀でも開けられそうな扉だ

紅夜はそう言いながら目の前にある木の扉に手を当て力を入れると、簡単に開くことができた

ここは…!

8話
=終了=

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