小紅の仕事が終わって日の入りの頃。
彼女は外から帰ってきた金手にここ数日で気になっていたことを口にした。

そういえば金手さんって昼間はなにをしてるんでか?
もしかして何でも作れる能力で常に私みたいな独り身の女の子のところにいりびたってぐうたらですか?

どうなんですか、というように不可思議な金手の生態をさぐる小紅。
そんなぶしつけともいえる質問にも金手は平然と答える。

私の普段の仕事?道端でちょっと商売をね。

商売ですか?お店を出す権利とかとってるんですか?

んー。商売というより手品に近いのかしらねー。

なんだか珍しくもったいぶりますね。

小紅の問いにどこか歯切れ悪そうに、金手は答えた。

それがねぇ。違法じゃないけど正業でもないというか。
まぁまともなお仕事じゃないっていうかね。

悪い事ですか!?

悪い、ことなのかしらねー。一応。

悪い事なんてやめてくださいよ…足がついて捕まる金手さんなんて見たくありません。

ああ、いやね。そこまで深刻になることでもなくて…。
路地とかよく子供が遊んでるでしょう。

金手の言葉に、小紅も心当たりがあるのか小さくうなずく。
怪しい稼業という流れに表情を曇らせていた顔も、ひとまず平静に戻した。

魔法の袋から金平糖一掴み三銭みたいな仕事をしてるのよー。
ぶらぶら歩いて街中でね。

へ。悪い事ですか?それ。

金平糖はかなり普及していて駄菓子屋でも一袋十二個入りが二銭も払えば手に入る国だ。
そこまであくどい商売とは思えない。
なので悪い事やめてください!といった手前の小紅はかなり恥ずかしい事をいってしまったと顔を赤くする。

んー悪いことったら悪い事なのよ?
街での商業権をとってるわけでもないし、駄菓子屋さんのお客さんもとってるわけだしー。

あ、あー。もしかして税とかも…。

そこらへんはギンギンのブラックゾーンね。
お菓子売りは届け出してないから収益から税だしてないし。

う、うわぁ。悪くなさそうな事からヤバイ事実を聞いてしまいましたよ…。

そんなわけだから子供から小銭を集めるしょっぱいお仕事してるわけ。
失望した?

んんー。悪い人ではないのは解ってるけど法に照らすと難しいですね…。
不思議と失望はしてないんですが。

眉間にしわを寄せる小紅に金手はころころ笑いながら言った。

まぁ夢がある感じだものねー。
街で出会った不思議な商人さんからお小遣いで一掴みのお菓子を買うなんて。
おとぎ話にでてきそうじゃない?

そうですね。
法律的には悪いことなんだなーって解っても。
なんだか素敵です。

現実とおとぎ話の哀しい落差に擦れてない小紅ちゃん、可愛いわよ。

まだ十代ですので!乙女ですので!

ふふふ、そうねー。小紅ちゃんはまだまだ夢見る乙女でいいお年頃ね。

その後はなんだか雰囲気も緩んで、今日の寝泊りの代価に金手が釜飯を作り、特別につけたデザートの練り団子の漉し餡包みを食べて楽しく語らったのでした。

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