さて、と。

金手が小紅の家の中を見回す。
彼女が訪れる以前からだいぶ小物が増えた。
ずっと食料を保存できる小箱。
水と衣服を入れるだけで選択できる箪笥。
などなど、本当に色んなものが増えた。

ふふふ。今日の朝ごはんは何にしようかな。

楽し気にメニューを考える小紅に、金手が話しかける。

小紅ちゃん。今日の朝ごはんを食べ終わったら出ていくわね。

え、それはまた、急ですね…。

ごめんねー。でもこれ以上ここにいると私が小紅ちゃんを堕落させちゃいそうだから。

そんなことありませんよぅ。

でも色々便利グッズを作って上げちゃったし。
ここらが潮時だと思うのよね。
友人でいられるうちに。

友人でいられるうちに、ですか?

小紅ちゃんは良い子だからあんまりないと思うけど。
私をここに留める理由が取引とか、好意じゃなくなって便利さを手元に置いていきたいってなったら悲しいじゃない。

私はそんな風になりません!

そうかもね。こんなこといって、本当のところ私がまた旅に出たいだけかもしれないわね。

じゃあ最初からそう言ってくださいよ。
なんで私の人間性を疑ってますーみたいなことをわざわざいうんですか。
傷つきました。

ごめんねぇ、素直に言ったらなんかあっさり忘れ去られそうで。

忘れられませんよ。
金手さんみたいなうさん臭くて、変わってて、優しい人のことは。

胡散臭いのと変わってるのはいう必要ないじゃない。
もー、仕返しね?

はい、お返しです。

二人、顔を合わせてからからと笑いあう。
そして笑いが収まると金手から口を開く。

それじゃあ、気ままな旅だからどうなるかわからないけど何年か後に会いましょう。

年単位であいちゃうんですか。

てきとーにぶらぶらするからねー。

じゃあ、それまでに今泊めてる部屋のベッド。
もう少しふかふかなのに変えておきますね。

うん。お願いね。それじゃ…。

一区切り、空気を吸って金手が続ける。

ご飯食べたら行ってきます。

はい、行ってらっしゃい金手さん。

こうして一つの小さな出会いが終わって行った。
金手は本当になんでも作れたのか。
そんな謎も解けぬまま少女と女性の人生はわずかに交差して、わかれて。
またそのうち出会うだろう。

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