そういえばですね。
少しお聞きしたいことが。

日のうちの取引のきっかけである小紅の作った食事を済ませた後、彼女は金手に問いかけた。

何かしら?

好奇心で聞くんですけど、何でも作れるってことは太陽に届く塔とか作れたりもするんですか?

できる、できるわー。
目立ちすぎるから今すぐここでってわけにはいかないけど。

ふふ、そんなのも作れるんですねー。

雑談、という感じでどうも小紅は本気で金手がそれを作れるかというのは問題にしていない様子。
折角時間を共有しているのだから、言葉を交わそうという俗にいう無駄口をたたいているのだ。

まぁ、本当に太陽と地上を繋ぐ塔を作って太陽の炎が地上まで降りてきたら小紅ちゃんの責任だけどね。

あははは!ひどいですよー!
そんなこと言われたらお願いできませんー。

うんうん。
小紅ちゃんが冷静でお姉さんは嬉しいよ。
冷静に考えてそんなものが在ったら困るものをお願いされたら、ねぇ。

ふぅっとため息をついた金手の様子に、何かを感じ取ったのか小紅がさらに話を進める。

困るようなものをお願いされたこと、あるんですか?

そうね。
雲を断ち大地を割る無双の剣をつくってくれっていわれたことなら。

…単なる名刀ってことですよね?

私がお望みどおりに作ると本当に雲が裂け地が割れるから鋼も簡単に切れるくらいにしましょうって必死に言い聞かせてねぇ。
あの時は疲れたわ。

ふふ、それは大変でしたね。

何事もほどほどが一番よー。
不老不死の薬とか言われたときも永遠に働き続けなきゃお腹も減るけど死ねないし不死でも病気には掛かるんじゃない?
一生付き合う病気にかかったらどうするの?って説き伏せたわ。

そういうことなら美肌のお薬くらいがいいですね!

そうそう。そのくらいなら最近お肌綺麗ですねー、ってくらいで怪しまれることもないのよ。
不老なんて一か所に留まれないわよー。
不老長寿に憧れるいやーなお金持ちの実験材料行きになっちゃうものね。

ほどほどって、大事ですねぇ…。

そうねぇ。
人間には…誰それが、というくくりではなく人間という生き物が幸せを感じられる範囲には限界があるの。
それを超えると逆に不幸になっちゃうのよ。

そういって話を切り上げようとした金手に、小紅は少し様子を窺うように聞いた。

金手さんは、年を取れるんですよね?

あったりまえじゃない。
今年で…よ。

予想以上に微妙な年頃だった!
綺麗だけどいきおk

小紅が金手の歳を聞いてそんな思考を走らせようとした刹那。

何かいいたいこと、ありそうね?

な、なんでもないです…。

まったく。ほんとうにゆかいなひとたちだ。

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