鈴石茜

はい、体育祭も無事終わりまして、次は文化祭に向けての準備を行いたいと思います

伊納アスナ

おお! 学校行事で最も盛り上がるとされる文化祭ですね!

鈴石茜

うん、そして生徒会役員が一番疲労する行事ね……

佐島亮

じゃあ僕、逃げていいですかね

鈴石茜

会計が逃げてどうするの!?

佐島亮

秋アニメも、これからがいいところなんですよ

鈴石茜

まあ、確かに……

鈴石茜

って、そうじゃない!

佐島くんに告白して、保留にされて数日たった

私たちの仲は……依然と全く変わらない。
変わらないからこそ……

鈴石茜

佐島くんの考えていることが全然分からない

気持ちを言ったら楽になるとか、そういうことはなかったみたい

鈴石茜

っていうか、ほんといつも通りなんだよなあ

佐島亮

ええっと、確か各クラスには生徒会から1万まで、経費として与えられるんですよね

鈴石茜

そうそう。だから、領収書の管理をちゃんとしなきゃいけないよ。

佐島亮

なんかめちゃくちゃ大役じゃないですか

鈴石茜

頑張れ~

佐島亮

えー……僕、暫くレアキャラになる予定だったんですけどー

鈴石茜

レアキャラ?

佐島亮

暫く姿を現さず、出会ったらラッキー、くらいのレアキャラです

鈴石茜

冗談もほどほどにねー

佐島亮

酷いですね。割と本気ですよ

鈴石茜

他に本気を出すところがあるだろう

やっぱり、すがすがしい程にいつも通りの会話だなあ……

佐島くんにとって、私は意識するのにも値しない人間なのかな

伊納アスナ

書記のアスナはどうすれば?

鈴石茜

あ、じゃあ各クラスの出し物の希望をまとめていって

鈴石茜

内容によっては容赦なく没にするからね

伊納アスナ

め、面倒くさそうです

鈴石茜

仕方ないでしょ、毎年やっていることなんだから

東海竜弥

……俺は

鈴石茜

ああ、竜弥は……

東海竜弥

寝る係?

鈴石茜

そんなわけあるか!!

鈴石茜

そうだ、保存用に各クラスの作業経過を撮影していってほしいんだけど

伊納アスナ

あ、それアスナもやりたいです

鈴石茜

え? いつになくやる気……

伊納アスナ

力仕事を分担して行う男の子たちの絡みが見られるじゃないですかぁ

鈴石茜

……そうですねー

鈴石茜

はぁ

佐島亮

……お疲れですか?

鈴石茜

お蔭さまで、割と

伊納アスナ

まあ、体育祭の記録も生徒会長殿がほぼ一人でやっていたものでしたからねー

鈴石茜

アスナちゃんは放送部の片づけの手伝いをしていたし、竜弥は普段太陽の元に出ないからバテていたし、佐島くんも……軽く熱中症になっていたから無理はさせられなかったし

鈴石茜

ていうか、今佐島くんと一緒に作業するとか絶対に無理だし

佐島亮

しかし、そんな鈴石先輩は

鈴石茜

ん?

佐島亮

受験勉強の方は、進んでいますか?

鈴石茜

聞くな!

佐島亮

結構重要な問題ですよ

鈴石茜

そう言われてもねえ……まあ、手をつけていないことはないし、なんとかなると思うんだけど

伊納アスナ

受験勉強を存分にできないのは大変なことだとアスナも思います

伊納アスナ

なんといっても、人生に一度っきりの大学受験ですからね

鈴石茜

そう……だよね

伊納アスナ

まあ、浪人という手もありますけど

鈴石茜

それは、ちょっと無理

佐島亮

そうなんですか?

鈴石茜

親が体裁を気にして浪人は許してくれないんだよねー

佐島亮

そういうものなんですか

鈴石茜

うん……ただでさえデザイン系を目指しているから最近は衝突も多くてね

伊納アスナ

じゃあやっぱりお疲れですよね

鈴石茜

まあ、ね

鈴石茜

佐島くんのこともあるし……ね

鈴石茜

佐島くんは……今何を考えているのだろう

胸が、強く締め付けられる感覚がする

鈴石茜

じゃあとりあえず各クラスの出し物の希望を見ていくよ!

伊納アスナ

えーっと、『ロシアンルーレット式たこ焼き屋』『和風喫茶』『お化け屋敷』

鈴石茜

まあ、この辺は容認だね。タコ焼き器が意外に高いけど……持っている人のを使うか、1万以内で頑張るか……

佐島亮

その辺はクラスがなんとかするでしょう

鈴石茜

そうだね……次は『メイド喫茶』『西洋のもの展示会』

東海竜弥

……ありがち

鈴石茜

いや、展示会はやるクラスは毎年ある。ただ西洋のものってのは気になるな

鈴石茜

問題はお金だけどね

佐島亮

何をするにしても、やっぱ大事ですからね、お金

佐島亮

最近グッズに貢ぎ過ぎてやばいです

鈴石茜

分かる! 私もアクキー、ラバストからOPやEDのCDまで網羅しそうで

佐島亮

うわあ、オタク引きますねえ

鈴石茜

そ、そう言う佐島くんはどうなの?

佐島亮

ブルーレイboxで全ての金が飛んでいきました! 

佐島亮

でも、楽しいからいいんです。僕は今、とっても幸せです。勝ち組です

鈴石茜

私も……

鈴石茜

勝ち組だといいたいところだけど……

佐島くんのことで手いっぱいで実はアニメも全然見れていない……

鈴石茜

と、とりあえず続き見るよ!

伊納アスナ

ふむふむ……『キャバクラ喫茶』

鈴石茜

はい、没!

伊納アスナ

キャバ嬢風にお客様をお迎えする喫茶店ですよ? 楽しいそうじゃないですか?

鈴石茜

いやいや、なんでも喫茶って言えばいいわけじゃないからね

鈴石茜

高校生なんだから健全さを目指そう

伊納アスナ

そうしたら、メイド喫茶も不健全だと思うんですけど

佐島亮

何故ですか?

伊納アスナ

もう、メイドという響きからいけない匂いがぷんぷんしてきません?

佐島亮

えー、そうですか?

鈴石茜

メイドは消す訳にはいかない!

鈴石茜

メイドがいかに萌える存在であるか、全生徒に知らしめなければ!

佐島亮

生徒会長の個人的趣味によりメイド喫茶は容認されました~

伊納アスナ

なら、『執事喫茶』もほしいですね

伊納アスナ

執事同士が給仕中にわいわいやっているのをみただけでお腹がいっぱいになります!

東海竜弥

乙ゲーみたいで、好き

鈴石茜

まあ……悪いとは言わないけど、それを提案しているクラスがないからね

伊納アスナ

むー

鈴石茜

そうだ、アスナちゃんたちのクラスは何にしたの?

伊納アスナ

クレープ屋ですっ

鈴石茜

なるほど……じゃあちゃんと代表者の検便を提出してね

伊納アスナ

分かってます

佐島亮

食べ物系は検便があるから面倒ですよね

鈴石茜

佐島くんのクラスは何にしたの?

佐島亮

イルミネーションです

鈴石茜

イルミネーション?

佐島亮

部屋を真っ暗にして、ランプとかステンドグラスとか使って綺麗な空間を作ろうかと

鈴石茜

へえ……新しいね

鈴石茜

発案者の発想力がすごい

佐島亮

お褒めに預かり光栄です

鈴石茜

発案者、佐島くんなの!?

佐島亮

はい

伊納アスナ

佐島殿が……こんな乙女チックな発想をするとは……

佐島亮

あー、なんか夏に花火見に行ったじゃないですか

鈴石茜

うん

佐島亮

その映像がふと、浮かんできて

佐島亮

誰も案を出さないので発案してみたら通ってしまいました

佐島亮

驚きです

鈴石茜

花火からイルミネーションに向かう発想力を見習いたい

佐島亮

鈴石先輩のクラスは……

佐島亮

ああ、三年生のクラスは出し物はないんでしたね

鈴石茜

流石にこの時期に学祭準備とか言ってられないからねえ

鈴石茜

だからみんなよりは、生徒会の仕事も進められると思う

佐島亮

…………

伊納アスナ

…………

佐島亮

鈴石先輩、ここは僕たち二年生に任せてみませんか?

鈴石茜

え?

伊納アスナ

生徒会長殿の分まで精一杯働きますから

鈴石茜

ど、どうしたの? 急に

佐島亮

僕たちは、鈴石先輩に志望校受かってほしいんで

鈴石茜

ほ、ほんとどうしたの?
今までは何も……

佐島亮

何も言わないのは、もうおしまいです

鈴石茜

え……?

すれ違いの日々……

さらに、佐島くんの気持ちが分からなくなってきた

続く

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