鈴石茜

こんにちは……

伊納アスナ

あ、生徒会長殿、文化祭のパンフレットできましたよ!

佐島亮

美術部が作ってくれたチラシも無事届きました

鈴石茜

あ……す、すごい……

伊納アスナ

バンドパフォーマンスのリストアップも終わりましたし、食品系のクラスの検便も全て集めたことが確認されました

佐島亮

各クラスへの資金も割り振りましたし、あとは領収書と照らし合わせていくだけですね

鈴石茜

……へえ……じゃあ、あとやることは……

伊納アスナ

特にはないです。
しいて言えば、活動風景の写真撮影ですねっ

佐島亮

それなら、東海先輩が既に行きました

伊納アスナ

なるほど……

鈴石茜

…………

おかしい。

私の役割がない。
というか……

鈴石茜

なんでみんな突然そんなやる気なの!?

伊納アスナ

いやあ、もう生徒会活動も終盤ですし、今まで生徒会長殿に負担をかけていた分、本気を出そうかな、と

佐島亮

文化祭を乗り切れば特に山場もありませんし……楽勝です

鈴石茜

あんなにやる気がなさげだったのに……

伊納アスナ

その期間はもうおしまいですっ

鈴石茜

それならもっと早くにやる気を出してもらってもよかったんだけど……

何かが、妙だ。

鈴石茜

どうなってるんだろう……

私には、分からないよ……

佐島亮

鈴石先輩

鈴石茜

え?

佐島亮

ここは僕たちがなんとかするんで、鈴石先輩は受験勉強をしていいんですよ?

鈴石茜

でも……

伊納アスナ

他の受験生は多目的教室や図書室を開放してもらって学習会なるものをやっているようではないですか

鈴石茜

あー……でもあれは、単なる自習タイムだし

鈴石茜

私は、家で勉強しているから……

鈴石茜

それに、私が駄目なら竜弥はどうなるの?

佐島亮

東海先輩は、ちゃんとサボりつつやってるんで

伊納アスナ

それなのに生徒会長殿はこっちに手を抜くことを考えていません

鈴石茜

だって、やるって決めたことだし

伊納アスナ

責任感が強いのはいいことですが、もっとアスナたちを頼ってもらって構わないんですよ

佐島亮

そうですよ。どうせ来年は僕たちが生徒会長や副会長になったりするんでしょうから

な、なんか……

鈴石茜

優しい……だと!?

伊納アスナ

どうですか? アスナたちの提案

佐島亮

因みに拒否権はありません

鈴石茜

いやいや、そんなことを言われても

佐島亮

……僕たちのことが信用できませんか?

鈴石茜

そんなことは……

鈴石茜

ないけど……

なんというか……

鈴石茜

寂しい、じゃん

佐島亮

え?

鈴石茜

私は今まで生徒会こそが自分の居場所だって思っていた……

鈴石茜

だから、そこを追い出されたら私はどうすればいいのか……

佐島亮

別に追い出したりはしてないじゃないですか

鈴石茜

でも……

ここに来ないと佐島くんに会えなくなるって思うと……やっぱり寂しいし。

佐島亮

鈴石先輩

鈴石茜

……何?

佐島亮

あのですね……

鈴石茜

……!?

佐島くんに、引き寄せられた……!?

佐島亮

僕はちゃんと考えているんで

鈴石茜

え!?

佐島亮

だから鈴石先輩は、勉強でもして待っていてください

佐島亮

必ず、答えは出しますから

鈴石茜

で、でも……

佐島亮

鈴石先輩は僕のこと、信用してないんですか~?

鈴石茜

信用してるよ!?

佐島亮

じゃ、任してくださっても大丈夫ですね

鈴石茜

……しょうがないなあ

何だったんだろう、今の……

鈴石茜

今の、言葉……

伊納アスナ

じー

鈴石茜

あ、アスナちゃん?

伊納アスナ

一体、こそこそと何のお話を?

佐島亮

ああ、鈴石先輩がちゃんと勉強していれば雫ちゃんのフィギュア(制服の上から水を被って下が透けているバージョン)をプレゼントしてもいいかなーっと

伊納アスナ

あー

伊納アスナ

また、マニアックな趣味をお持ちで……

鈴石茜

どういう誤魔化し方ー!?

鈴石茜

でも、乗るしかないか

鈴石茜

濡れた二次元の制服女子には大きな夢が詰まっているんだよ!!

鈴石茜

露骨に下着やスク水で見せるより、ハプニングの結果見えちゃった、というその偶然性が大事なの

鈴石茜

その辺を行くとパンチラもかなりレベルが高いんだけど、やっぱり水を被るっていう背徳的な要素が加わることで……

佐島亮

……変態、ですね

鈴石茜

酷い!!

……でも、かなりノリノリで語ってしまった。

鈴石茜

佐島くん、恐るべし。

佐島亮

じゃ、今日のところはお開きにしましょう

鈴石茜

……分かった

佐島亮

ちゃんと、勉強してくださいね

鈴石茜

はーい

まあ、ここまで言われてしまえばしょうがない。

鈴石茜

受験生らしく、勉強するか……

佐島亮

…………

伊納アスナ

…………

一週間前

教師

お前たち、ちょっといいか?

佐島亮

なんですか? 鈴石先輩はまだHL中でいませんよ?

教師

だからこそ、今言いたいんだ

伊納アスナ

何をですか?

伊納アスナ

まさか、生徒会長殿の悪口を……?

教師

違う

教師

最近、鈴石の成績が落ちていると、担任から相談があった

佐島亮

え……

教師

ま、落ちているというか周りが勉強して成績が伸びていく中、未だに停滞している……といった方が正しいか

伊納アスナ

それって……マズいことですか?

教師

ああ、このままだとあいつは志望校に合格できない

佐島亮

え……でも鈴石先輩はそんな様子全く見せてませんでしたよ……?

教師

あいつにはあいつのプライドがあるからな……

教師

あと、あいつの中では勉強と生徒会が別物なんだ

教師

あいつの生徒会好きは相変わらずだな……学問に支障をきたしてでも生徒会を続けようとする

佐島亮

…………

教師

そこで、お前たちにお願いがある

伊納アスナ

なんですか?

教師

鈴石を、学習会へ参加させてくれ

伊納アスナ

学習会……?

教師

うちの学校では三年生向けに図書館や多目的室を開放して学習会というものを行っている

教師

まあぶっちゃけ、単なる自習会だが

佐島亮

……鈴石先輩はそれにも行ってないんですね

伊納アスナ

まあ、ずーっとここにいますからね

教師

だからお前たちは生徒会役員として責任を持って、あいつに受験勉強をさせろ

教師

生徒会活動をやっていた所為で受験に落ちたとなれば学校の面子も丸つぶれだ

佐島亮

……利己的ですね

教師

ま、俺からはそれだけだ

佐島亮

…………馬鹿なんですかね

伊納アスナ

あの先生が、ですか? まあ、言い方はひどいですがそれでも……

佐島亮

鈴石先輩は馬鹿です

伊納アスナ

え……?

佐島亮

『約束』を破るなんて……馬鹿です

伊納アスナ

…………?

佐島亮

言ってたじゃないですか……

頼ってもいい……?

佐島亮

……って。

続く。

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