朝食や準備を終えた私は
翔くんと一緒に学校へ向かって歩き出した。

そして早速、疑問をぶつけてみる。
 
 

落合 美琴

ねぇ、翔くん。
今日はどうしたの?

間部 翔

え、えっと……その……
た、たまには一緒に
学校へ行こうと思ってさ。

落合 美琴

そう……なんだ……。

 
 
――なんか翔くんは歯切れが悪い。

絶対に何かを隠してる。
昔から翔くんは隠しごとをする時、
頬がかすかにヒクヒクするクセがある。


まさに今の翔くんにはそれが出てる。
 
 

落合 美琴

本当にそれだけなの?

間部 翔

やっぱ、ミコに
隠しごとはできないか……。

落合 美琴

ほら、私の思った通りだ……。

間部 翔

じ、実はさ、
今日ってミコの誕生日だろ?
何かほしいものないかなぁって
聞こうと思ってさ。

落合 美琴

っ!?

 
 

落合 美琴

覚えててくれたんだ?
5月9日が私の誕生日だって。

 
 
すごく意外だった。
だってここ数年は誕生日に翔くんから
何もアクションがなかったから。



正直……ちょっと嬉しい……。



私が視線を向けると
翔くんは苦笑しながら照れている。
 
 

間部 翔

ま、まぁ、色々あって
思い出したっていうか……。

落合 美琴

色々?

間部 翔

そ、そんなことより
ほしいものはないか?
近いうちに用意するよ。

 
 
近いうちに……か……。
受け取る時なんて来るのかな?


それにもう、ほしいものなんてない。
受け取ったところで、
すぐに不要になっちゃうと思うし。



だってあの世には物を持っていけないもん。

持っていけるとしたら、
三途の川の渡し賃くらいかな……?
 
 

落合 美琴

……ありがと。
でも気持ちだけで充分だよ。

間部 翔

そうはいかないって。
んじゃ、
俺が勝手にプレゼントを用意する。
受け取ってくれるよな?

落合 美琴

も、もちろん……。

 
 
思わず同意してしまった。

その時の私は目が泳いでいたと思う。
咄嗟に視線を逸らしたから、
翔くんには気付かれてないはずだけど。



目を見て返事なんてできないよ……。

プレゼントを受け取れるまで
私の心が耐えられるか分からないもん。



――ううん、きっと無理。

もう私は限界。
翔くん、
嘘をつくことになっちゃってゴメンね……。
 
 

間部 翔

絶対の約束だからな?

落合 美琴

う……うん……。
でも変なものはやめてよ?

間部 翔

渡せないなんて……
俺は絶対に嫌なんだからな?

落合 美琴

だ、大丈夫だよ。
翔くんからのプレゼントだもん、
受け取るよ……。

間部 翔

……ならいいけど。

 
 
翔くんはすごくホッとした顔をしていた。

でもそこまで息をつくなんて、
どうしてなんだろう?


それに念入りに私に約束させるなんて、
まるで私がそれを守らないとでも
疑っているみたい……。

実際……そうなるかもだけど……。
 
 

落合 美琴

あれ?

間部 翔

…………。

 
 
その時、私は翔くんの横顔を見ていて
あることに気が付いた。


すごく顔色が悪くて辛そう。
しかもちょっと呼吸も乱れているみたい。
激しい運動をしたワケでもないのに。

よく見ると額に汗もかいてる。
 
 

落合 美琴

ねぇ、翔くん。
少し顔色が悪いよ?
体調でも悪いの?

間部 翔

えっ? き、気のせいだろ?
俺はいつも通りじゃん。

落合 美琴

そうかな?

間部 翔

ミコこそ、顔色が良くないぞ?

落合 美琴

そ、そんなことないよっ!
私はいつも通り元気だよっ!!

 
 
私は笑って誤魔化した。

そしてこれ以上、
変に勘ぐられないよう
この話題には触れないことにした。



だって深く追求されたら……
私の決意がバレちゃいそうだもん……。
 
 

 
 
 
次回へ続く……。
 

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