慧人


揃って登校とは仲良してますねー、混ぜてくださいよ

桜花

けいちゃん絶対許さない

慧人

ダレカタスケテ

殺気の溢れる桜花の視線を真正面から受ける慧人
心当たりが多くあり、今回はどの地雷が爆発したのか見当もつかないといった様子であった

雫はそんな二人を眺めながら「今日も平和だなー」とぼやく

桜花

当分けいちゃんとは口を利きたくありません

慧人

そこを何とか…お情けを!

桜花

聞こえませんし、知りません!!

ずんずんと速足で歩く桜花
そのせいか、周りへの注意力も欠落していた

だからこそ、赤信号に変わったことすら気づいていないのであった

あ、ちょっ
桜花危ない!!!

雫が言い終わる前に、ぶわっと隣を駆け抜ける人影
かき乱される髪と狭くなる視界。一瞬のことである、何が起こったのかも分からない程

…一人を除いては

桜花

へ?

突然腕を後ろに引かれバランスが崩れる
蒼空がもっと遠くに広がり、尻もちを搗くような体制で落ちていく
これはきっと痛いやつだ…そう思い瞼を強く閉じる

…刹那

桜花

いた…く、ない?

慧人

はー
間に合ってよかった

丁度、慧人の体にすっぽり嵌るような形
どうやら間一髪のところで慧人が受け止めてくれたらしい

いわゆるお姫様抱っこという形ではあった

桜花

けい…ちゃん?

慧人

…へんな心配させるな、ばか桜花

桜花

はい…

「返す言葉も御座いません」
そのような意味を含めながら、桜花は慧人に言葉を返す

慧人

ま、目立った外傷はなさそうだな

桜花大丈夫ー?

それにしても慧人君、今のはかっこよかったね!あれはなかなかできないよ

そう茶化しながらバシバシと慧人の肩を叩く雫
慧人も「たまたまですよ」と言葉を濁しながら返すのであった

桜花

けいちゃん…
そろそろ降ろしてもらえませんか?

慧人

やだ

いい笑顔で言葉を返す慧人は実の楽しそうだった
そのままの状態で学校まで向かう…桜花にとっては罰ゲームでしかない状況だ

あはは
慧人君とっても楽しそう!
それにしても人を運ぶのってきつくないの?

慧人

いやー
いい筋トレになりますよ

桜花

早く降ろしてください!!!

腕の中でじたばた暴れる彼女
しかし、力の差もあってか全然降りれそうになかった

…征服するってこんな気持ちなのだろうか、なら自分は侵略者に向いているのかもしれないと慧人は思うのであった

慧人

じゃあ、先輩。また部活で!
一応こいつを保健室に連れてい来ます

うんうんそれがいいと思う
慧人君よろしくね

桜花

屈辱です

慧人

それは結構なことで
…足、ねん挫しただろ。大丈夫か?

桜花

へ…気づいてたのですか
だからこんな無茶を?

慧人

無茶って言うな!
その、足ひねった原因は俺なんだし。これくらいは当然というか…

桜花

そんな…
こちらこそありがとうございます

この笑顔が見れたらそれだけで満たされてしまう
自分はつくづく単純な男なのだ

ここにもまた、綿菓子の甘さに魅了された者がいるのであった

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